ファクタリングとビジネスローン、資金調達手段にはどちらがおすすめ?両者のメリット・デメリットを比較
目次
企業の事業継続や拡大のためには資金が欠かせません。とはいえ、資金は潤沢にあるので資金繰りに悩むことはないという中小企業や個人事業主はそれほど多くありません。
資金を得るには、資金調達手段の確保が必要です。資金調達にはいくつかの方法がありますが、経営者の中には、ファクタリングかビジネスローンのどちらを利用するか悩んでいるという方がいらっしゃいます。
そこで、本記事では、ファクタリングとビジネスローンの特徴、メリット・デメリット、ファクタリングとリースのそれぞれについて利用できるシーンの具体例などを紹介します。
ファクタリングとはどのような資金調達手段?
ファクタリングは、資金調達を望む企業が所有している入金待ちの売掛金を、ファクタリング事業者に買取してもらい、企業はその買取代金を受け取ることで資金調達ができるというサービスです。
ファクタリングの特徴は以下の2点です。
● 売掛金の入金期日より前に現金化できる
● 申し込みから入金まで最短即日、もしくは数日
売掛金の回収は、2社間方式・3社間方式と呼ばれるファクタリングの契約形態により以下の2つの方法に分かれます。
● 2社間方式:企業や個人事業主が売掛金回収をおこない、それを後日ファクタリング事業者に支払う
● 3社間方式:ファクタリング事業者が売掛先から売掛金の回収をおこなう
ファクタリングで得た資金の用途は企業や個人事業主の自由です。人件費の支払いや、大型案件受注のための設備投資、新規案件ための材料購入など、企業や個人事業主の経営方針に沿って利用できます。
ファクタリングのメリット
ファクタリングのメリットには以下のものがあります。
● 申し込みから入金までのスピードが速い
● 負債にならない
● 担保・保証人を差し出す必要がない
● 信用情報機関に情報が載ることはない
● 開業直後の法人や個人事業主でも利用可能
申し込みから入金までのスピードが速い
ファクタリングは申し込みから入金までのスピードが速いというのがメリットです。
オンラインでファクタリングサービスを提供している事業者がたくさんあるので、オンラインファクタリングを利用すれば、最短即日で売掛債権を現金化できます。
銀行のビジネスローンは、審査にある程度日数がかかるので即日融資は難しいとされています。
ノンバンク系のビジネスローンは即日融資に対応しているところがいくつもあります。しかし、通常の銀行融資や公的融資と比較すると金利が高く設定されています。
ファクタリングとノンバンク系のビジネスローンはどちらも申し込みから入金までがスピーディーです。
ファクタリングはローンではないので、金利負担や返済義務がないという点が、ノンバンク系のビジネスローンよりも優れている点になります。
負債にならない
ファクタリングは、売掛債権という資産を現金化するものなので、負債にはなりません。したがって、融資やビジネスローンを利用した際に生じる返済義務や金利負担はありません。
会計上で負債が増えないだけでなく、ファクタリングで得た現金で残っている負債を返済すれば、賃借対照表のスリム化を図ることが可能です。
賃借対照表がスリム化できれば、経営上のリスクを減らすことができ、銀行からの評価も高くなるので、将来、金融機関に融資を依頼するときは、審査に通過しやすくなるでしょう。
担保・保証人を差し出す必要がない
ファクタリングは担保・保証人なしで申し込みできます。
なぜなら、ファクタリングの審査で対象となるのは売掛先の信用力、つまり売掛金の支払い能力だからです。
ファクタリングの審査では、申し込み企業と売掛先の間のこれまでの取引実績、売掛先の経営状況などを見て、売掛金がきちんと回収できるかどうか判断します。
したがって、申し込み企業が赤字経営や債務超過の状態でも、売掛先に信用力があれば売掛金回収が見込めるので審査通過できる可能性があります。
さらに、ファクタリングの契約は基本的に、償還請求権のないノンリコース契約なので、万が一売掛先が倒産し売掛金の回収が見込めないとしても、ファクタリング事業者は申し込み企業に弁済責任を追及することはありません。
こうした点から、ファクタリングは担保や保証人なしで利用できるわけです。
信用情報機関に情報が載ることはない
ビジネスローンやカードローンを利用した場合、銀行やノンバンクが登録している以下の信用情報機関に情報が残ります。
● KSC 全国銀行個人信用情報センター
● JICC 日本情報信用機構
● CIC 日本信用情報機構
しかし、ファクタリングを利用しても、こうした信用情報機関に何らかの情報が記録される、ファクタリング事業者が審査のときにそこから情報を閲覧するということはありません。
開業直後の法人や個人事業主でも利用可能
ファクタリングは開業直後の法人や個人事業主でも利用できるのがメリットです。
たとえば、あるファクタリング事業者は、初年度で決算や確定申告ができない企業や個人事業主向けに、「事業用銀行口座の入出金履歴が4ヶ月以上あればお申し込み可能」と説明しています。
銀行のビジネスローンの中には、融資条件として「事業開始後2年以上経過していること」「2期分の決算書・確定申告書の提出」といった項目を設けているものがあります。
こうした融資条件があれば、開業したての法人や個人事業主は利用できません。
資金繰りに悩んでいるが、開業したてでビジネスローンを利用できないという経営者はファクタリングをぜひご利用ください。
ファクタリングのデメリット
資金調達手段としてファクタリングかビジネスローンかで悩んでいるなら、ファクタリングのデメリットについても知っておくべきです。
ファクタリングのデメリットには以下のものがあります。
● 手数料がかかる
● 掛け目がある
● 3社間方式では売掛先に利用が知られる
手数料がかかる
ファクタリングには手数料が発生します。ファクタリング事業者や契約スタイルにより手数料には違いがありますが、相場は以下の通りです。
● 2社間方式:売掛金額の8%~18%
● 3社間方式:売掛金額の2%~9%
ファクタリングでは売掛債権の額面全額を現金化することはできません。買取金額から手数料を差し引いた分を受け取ることになります。
したがって、なるべくたくさん資金を調達したいなら、手数料の安いファクタリング事業者、契約スタイルを選んでください。
掛け目がある
ファクタリングには掛け目があります。これもデメリットのひとつです。
融資ではその安全性確保のために、担保(不動産・住宅・土地)の価値全額を融資するのではなく、「担保価値×担保掛け目(%)=担保評価額」として融資する金額の上限を決定します。
したがって、掛け目とは買取率のようなものです。
ファクタリング事業者は、売掛債権を買取する際に、売掛債権の額面全額ではなく、一定の比率の掛け目をかけて買取金額を計算します。
回収リスクが低いほど掛け目は高くなり、額面通りに近い金額での買取になります。
ファクタリングを利用すれば、売掛債権の額面から掛け目の分だけ金額が下がり、そこからさらに手数料が引かれるという点を覚えておいてください。
3社間方式では売掛先に利用が知られる
ファクタリングで3社間方式の契約を選んだ場合、売掛先にファクタリング利用の通知と承諾が必要になります。
結果としてファクタリング利用が売掛先に知られることになります。ファクタリングの利用が売掛先に知られるなら、それにより資金繰りに困っている、経営状態が悪いといった風評被害が起こるかもしれません。
そうした心配があるなら、売掛先への通知や承諾が必要ない2社間方式を選択できます。
ビジネスローンとはどのような資金調達手段?
ビジネスローンとは、事業資金専用のローン商品のことです。
利用できるのは、法人経営者および個人事業主のみで、事業経営していない個人は対象となりません。
ビジネスローンは銀行、ノンバンクと呼ばれる信販会社・クレジットカード会社、消費者金融などが取り扱っています。
ビジネスローンで借りたお金は事業に関連する用途であれば自由に使うことが可能です。
たとえば、新規事業の立ち上げ・設備投資・運転資金・取引先への支払いなどに利用できます。
融資基準や金利、融資限度額はサービスを提供している会社によって違うので、ビジネスローンを利用する際には複数社の融資条件を比較することをおすすめします。
ビジネスローンのメリット
ビジネスローンのメリットには以下のものがあります。
● 総量規制の対象外
● 銀行融資や公的融資よりも資金調達完了までのスピードが速い
● 担保・保証人を差し出す必要がない
総量規制の対象外
ビジネスローンは総量規制の対象外です。
総量規制とは、過度な借入れから利用者を守るために、年収などを基準に、その3分の1を超える貸付けは原則禁止するものです。
たとえば、年収300万円の方が貸金業者から借入れできる合計額は、最大で100万円となります。
総量規制の対象となるのは貸金業者、つまり消費者金融・事業者金融・クレジットカード会社といったいわゆるノンバンクで、銀行からの貸付については貸金業法による総量規制は適用されません。
ノンバンクもビジネスローンを提供しているので、総量規制が適用されるのではと心配する方もいらっしゃいますが、ノンバンクのビジネスローンは「例外貸付け 」に該当するので、総量規制を超える金額でも借入が可能です。
たとえば、大手消費者金融では、個人事業者に対する貸付、新たに事業を営む個人事業者に対する貸付については、事業計画・収支計画・資金計画を提出し、返済能力を超えないと認められる場合に「例外貸付け」になるとしています。
また、借入金額が100万円以下の場合は、事業計画などの提出の代わりに、事業や収支・資金繰りの状況が確認できる書面を提出することでも借入が可能です。
銀行融資や公的融資よりも資金調達完了までのスピードが速い
ビジネスローンは、銀行融資や日本政策金融公庫からの融資と比較すると、申し込みから資金調達完了までのスピードが速くなっています。
融資を希望する金額、申し込み企業の状況、審査を申し込む銀行などにより準備から資金調達完了までのスピードには違いが生じますが、一般的な期間は以下の通りです。
● 銀行融資(プロパー融資):1ヶ月
● 公的融資(日本政策金融公庫):1ヶ月
ビジネスローンの申し込みから資金調達完了までの速さは、最短で即日、遅くても1週間から10日程度です。
担保・保証人を差し出す必要がない
銀行や日本政策金融公庫からの融資を受ける場合は、基本的に担保・保証人を差し出す必要があります。
一方、ビジネスローンは原則として担保・保証人なしで申し込みができます。この点はファクタリングと同じです。
ビジネスローンのデメリット
ビジネスローンのデメリットには以下のものがあります。
● 金利が高い
● 融資限度額が低い
● 信用情報機関に情報が登録される
金利が高い
ビジネスローンは、銀行融資や公的融資と比較すると金利が高いのがデメリットです。
銀行融資の場合、金利は銀行により違いますが、相場は2%程度、日本政策金融公庫からの融資は0.3%~2%程度になります。
一方、ビジネスローンは、銀行系なら上限金利9%~15%、ノンバンク系の上限金利は15%~18%が相場です。
ビジネスローンは、銀行融資や公的融資よりも審査に通りやすく、資金調達完了までのスピードも速いですが、金利は高いという点に注意してください。
融資限度額が低い
ビジネスローンは、銀行融資や公的融資と比較すると借入可能額が低くなっています。
たとえば、銀行が提供している法人・個人事業主向けの融資制度では、融資限度額が5,000万円、1億円といったものがあります。
中小企業が利用できる日本政策金融公庫の一般貸付の融資限度額は、用途が運転資金で4,800万円、特定設備資金なら7,200万円です。
一方、ビジネスローンの利用可能額は、銀行系なら1,000万円、ノンバンク系なら数百万円が相場となっています。
信用情報機関に情報が登録される
ビジネスローンを利用すれば、その情報が信用情報機関に登録 されます。したがって、信用情報機関に登録している銀行やノンバンクは、その企業に貸付をするときに、その情報を閲覧し与信判断に利用することが可能です。
さらに、法人がビジネスローンを利用した場合は、決算書の借入金内訳に借入先を記載します。
こうした情報も、今後、銀行や日本政策金融公庫に新たな借入を申し込む際の審査に影響するでしょう。
たとえば、ビジネスローンの返済期間が残っているなら、高金利のビジネスローンの返済が負担になっているので、新たに借入をしても、さらに返済の負担が大きくなると判断される可能性があります。
このように、ビジネスローンの利用は将来の融資に影響を及ぼすことがあります。
ファクタリングをおすすめするケース
ファクタリングとビジネスローンの特徴、メリット・デメリットを比較すると、以下のケースではファクタリングをおすすめします。
● できるだけ早く資金調達を完了させたい
● ビジネスローンの審査は通過できない可能性が高い
ファクタリングの最大の特徴は、申し込みから資金調達完了までのスピードが速いという点でした。したがって出来るだけ早く現金が必要という中小企業や個人事業主にはおすすめの資金調達手段です。
さらに、ファクタリングの審査で重視されるのは売掛先の信用力なので、申し込み企業が赤字や債務超過の状態でビジネスローンの審査に通過できる可能性が低いという場合でも、ファクタリングの審査なら通過できる可能性があります。
ビジネスローンをおすすめするケース
以下の状況ならばファクタリングよりもビジネスローンで資金調達することをおすすめします。
● 売掛債権がない
● 売掛債権の額面以上の金額を資金調達したい
● 返済期間や返済方法を自由に選びたい
ファクタリングの利用は売掛債権の存在が前提条件です。したがって売掛債権がないならファクタリングは利用できません。
さらに、ファクタリングには掛け目や手数料があるので、売掛債権の金額をそのまま全額手にすることは不可能です。
したがって、売掛債権の金額以上を資金調達したいのであれば、ビジネスローンを含むファクタリング以外の方法を選ぶしかありません。
ファクタリングとビジネスローンについてのまとめ
この記事では、ファクタリングとビジネスローンについて、それぞれの特徴、メリット・デメリット、どのようなシーンでどちらを利用できるのかを紹介しました。
できるだけ早く現金が必要という場合は、ファクタリングがおすすめです。
一方、売掛債権の金額以上の資金が必要という場合は、ファクタリングは利用できないので、ビジネスローンを含めた他の資金調達手段を選択するしかありません。
自社の資金繰りの状況、今後の経営方針などを踏まえて、自社にふさわしい資金調達手段を選んでください。