ファクタリングと手形(手形割引)の違いは?特徴や利用をおすすめするケースについて解説!
目次
ファクタリングとは
ファクタリングとは、掛け取引において発生した売掛金を早期に現金化できるサービスです。
掛け取引において発生した売掛金は、回収するまでに30日~60日ほどの期間を要することが一般的です。
売掛金本来の支払期日まで待っていた場合、手元資金が不足し資金繰りが悪化してしまう可能性があります。
しかし、ファクタリングを利用して売掛金を早期に現金化することで、資金繰りの悪化を回避することができます。
また、ファクタリングは原則償還請求権なしの契約であるため、売掛金の貸し倒れリスクを回避する目的でも活用できます。
万が一、売掛先が経営悪化や倒産に陥り売掛金を回収できなくても、利用者に支払い義務が生じることがなく、ファクタリング会社が損失を受けることになるのです。
審査基準も融資やカードローンとは異なり、売掛先の信用力が重視されるため、信用情報や経営状況に問題を抱えている場合でも利用できます。
手形割引とは
手形割引とは、決済日前の受取手形を金融機関や手形割引業者に売却することで、早期に現金化できるサービスです。
受取手形は、商取引の決済方法として発行されるものです。
受取手形の支払いサイトは、売掛金よりも長期間になることが多く、一般的に商品・サービスの提供から3ヵ月~4ヵ月後に設定されます。
しかし、手形割引を利用することで、受取手形を1週間ほどで現金化することができます。
また、手形割引は貸金業法が適用されるため、金利の上限が20%と定められており、常識を超える高額な手数料を請求される心配がありません。
融資よりも審査に通過しやすく、利用者が信用情報や経営状況に問題を抱えている場合でも、利用できる可能性があります。
ファクタリングと手形割引の7つの違い
ファクタリングと手形割引には、主に以下の7つの違いがあります。
1.買取対象の違い
ファクタリングと手形割引の最大の違いは「買取対象」です。
ファクタリングでは「売掛金」を現金化するのに対し、手形割引では「受取手形」を現金化します。
売掛金は信用取引の掛け取引において発生するものであり、法的な拘束力が弱い傾向にあります。
そのため、売掛金の場合は売掛先の諸事情により未回収になる恐れが高いです。
一方、受取手形は支払期日に指定の金額を支払うことを約束した有価証券です。
発行する際に銀行の審査を行う必要があるため、売掛金よりも信用が高いといえます。
また、受取手形の不渡りを半年以内に2回出した場合、銀行との取引が停止されることから売掛金よりも支払いへの意識が強く、未回収リスクが低い傾向にあります。
2.審査基準の違い
ファクタリングと手形割引は、どちらも融資と比較して審査に通過しやすい資金調達方法です。
しかし、双方には審査基準に違いがあります。
ファクタリングでは、売掛先の信用力が重視されます。
利用者の信用情報や経営状況が審査に与える影響が少なく、債務超過や赤字決算に陥っている方でも利用可能です。
一方、手形割引は金融取引に該当するため、利用者と売掛先の両方の信用情報や経営状況が重視されます。
そのため、手形割引はファクタリングと比べて、審査通過が難しい傾向にあります。
ただし、銀行ではなく手形割引専門業者を利用する場合は、手形振出人の信用力が重視されるため、信用情報に問題を抱えている場合でも利用できる可能性があります。
3.貸金業法が適用されるかの違い
ファクタリングと手形割引では、「貸金業法が適用されるか」という点にも違いがあります。
貸金業法とは、金銭の貸し借りにおける貸金業者の規則を定めた法律です。
ファクタリングは貸金業者に該当しないため、貸金業法が適用されません。
利息制限法も適用されることがないため、ファクタリング会社は売掛金の未回収リスクに応じて、自由に手数料を設定することができます。
また、開業に際して貸金業登録を行う必要がないため、多くの民間企業がファクタリング業界に参入しています。
一方、手形割引は貸金業者に該当するため、貸金業法が適用されます。
利息制限法により金利の上限は20%と定められており、それ以上の金利を設定することは違法となります。
また、開業に際して貸金業登録を行う必要があるため、手形割引業者の信頼性は高いといえるでしょう。
4.現金化スピードの違い
ファクタリングと手形割引では、現金化スピードにも違いがあります。
ファクタリングの場合、2社間ファクタリングでは最短即日、3社間ファクタリングでは2日~1週間ほどで売掛金を現金化することが可能です。
現金化スピードが早いうえ、利用にかかる手間も少ないため、スムーズに資金調達することができます。
一方、手形割引の場合、銀行で1週間以上、手形割引業者であれば最短即日で受取手形を現金化することができます。
手形割引業者の場合は、ファクタリングと同じく利用にかかる手間が少ない傾向にあります。
しかし、銀行の場合は税務申告書や直近3期分の決算書など、さまざまな書類が必要となります。
5.手数料・金利の違い
ファクタリングを利用する際は手数料、手形割引を利用する際は割引料(金利)が必ず発生します。
ファクタリングの手数料相場は、2社間ファクタリングで10%~20%、3社間ファクタリングで1%~9%ほどです。
2社間ファクタリングでは、一度利用者に売掛金が入金されることから、持ち逃げや使い込みのリスクを考慮されるため、3社間ファクタリングよりも手数料が高い傾向にあります。
ただし、手数料の低いファクタリング会社やオンラインファクタリングの利用により、2社間ファクタリングでも低い手数料で利用できる場合があります。
一方手形割引の割引料(金利)の相場は、銀行の場合1%~5%、手形割引業者の場合5%~20%ほどです。
ファクタリングと手形割引の手数料・金利は、契約方式や利用する会社によって異なるため、一概には言えませんが、総合的に見ると手形割引の方が割安になるケースが多い傾向にあります。
6.売掛先への通知の有無
ファクタリングと手形割引には、売掛先への通知の有無にも違いがあります。
ファクタリングの場合、売掛先への通知の有無は契約方式によって異なります。
2社間ファクタリングは、利用者とファクタリング会社間の取引となるため、債権譲渡の事実を売掛先に通知する必要はありません。
しかし、3社間ファクタリングの場合は、売掛先が取引に参加するうえ、ファクタリングの利用に関して売掛先から承認を得る必要があります。
そのため、2社間ファクタリングでは売掛先への通知は必要なし、3社間ファクタリングでは売掛先への通知が必要となります。
一方手形割引は、利用者と手形割引業者(銀行を含む)のみで取引が完結するため、売掛先への通知が必要ありません。
売掛先に債権譲渡の事実を知られたくないのであれば、2社間ファクタリングか手形割引の利用をおすすめします。
7.償還請求権の有無
ファクタリングと手形割引には、償還請求権の有無にも違いがあります。
償還請求権とは、売掛先の倒産や経営悪化により売掛金(受取手形)が未回収になった場合に、売掛債権の元の保有者に弁済を求めることができる権利のことです。
ファクタリングは、原則償還請求権なしの契約であるため、売掛金が未回収になった場合でも、利用者に弁済義務が生じることはありません。
ファクタリングを利用することで確実に売掛金を回収できるため、資金調達だけでなく、貸し倒れリスクを回避する目的でも活用できます。
一方手形割引は、償還請求権ありの契約であるため、手形の振出人(取引先)が支払いを実行できなかった場合は、利用者に支払い義務が生じます。
手形振出人の支払い能力が低い場合は、償還請求権の行使により損失を受ける可能性があるため、注意が必要です。
ファクタリングの利用をおすすめする3つのケース
ファクタリングの利用は、主に以下の3つのケースでおすすめです。
1.スムーズに資金調達したいとき
ファクタリングは、スムーズに資金調達を行いたいときにおすすめです。
ファクタリングは、手形割引と比べて利用の手間が少なく、気軽に利用することができます。
必要書類は、基本的に本人確認書類、通帳のコピー、請求書など、自身で用意できるものばかりなので、市役所や法務局に書類を取りに行く必要がありません。
また、オンラインファクタリングの活用により、自宅やオフィスからでも利用することができます。
多忙な場合など、スムーズに資金調達を行いたいケースでは、ファクタリングの利用をおすすめします。
2.売掛金の貸し倒れを回避したいとき
ファクタリングは、売掛金の貸し倒れを回避したいときにおすすめです。
ファクタリングは、原則償還請求権なしの契約であるため、売掛金の未回収が発生した場合でも、利用者に支払い義務が生じることはありません。
利用者は、ファクタリング会社に売掛債権を譲渡した時点で、売掛金を確実に回収することができます。
売掛金の貸し倒れによる資金繰りの悪化や連鎖倒産を防ぐことができるため、企業にとっては大きなメリットだといえるでしょう。
3.自社の信用力が低いとき
ファクタリングは、自社の信用力が低いときにおすすめです。
ファクタリングの審査では売掛先の信用力が重視されるため、利用者の信用情報や経営状況が審査に与える影響はほとんどありません。
そのため、債務超過や赤字決算、税金滞納に陥っている方や、開業間もない信用力が低い方でも、問題なく利用することができます。
手形割引の場合は、手形が未回収になった際に利用者に支払い義務が生じるため、利用者と手形振出人の両方が審査対象となります。
自社の信用力が低いケースでは、手形割引を含めほかの資金調達方法を利用することは難しいため、ファクタリングの利用をおすすめします。
手形割引の利用をおすすめする2つのケース
手形割引の利用は、主に以下の2つのケースでおすすめです。
1.銀行融資の審査に落ちてしまったとき
手形割引は、銀行融資の審査に落ちてしまったときにおすすめです。
手形割引の審査は、融資やカードローンよりも緩く、銀行融資の審査に落ちてしまったケースでも、利用できる可能性があります。
特に手形割引専門業者に依頼した場合は、利用者ではなく手形振出人の信用力が重視されます。
銀行に依頼する場合は、利用者と手形振出人の両方の信用力が重視されますが、手形割引専門業者の場合は、手形振出人の信用力に問題がなければ利用可能です。
2.金利を抑えたいとき
手形割引は、金利を抑えたいときにおすすめです。
手形割引の金利は、銀行の場合1%~5%、手形割引専門業者の場合5%~20%ほどです。
ビジネスローンの金利は10%前後になるケースが多いため、手形割引の金利はほかの資金調達方法よりも低いといえるでしょう。
また、ファクタリングの手数料と比べても低くなるケースがほとんどです。
手形割引は償還請求権ありの契約であり、手形割引業者が損失を受ける確率が低いからです。
金利や手数料の影響を最低限に抑えたい場合は、手形割引の利用をおすすめします。
ファクタリングと手形(手形割引)の違いは?のまとめ
今回は、ファクタリングと手形割引の違い、およびそれぞれのサービスの特徴、利用をおすすめするケースについて解説させていただきました。
ファクタリングと手形割引は、どちらとも売掛債権を活用した資金調達方法です。
銀行融資と比べて審査通過率が高く、担保や保証人を設定する必要がないため、中小企業や個人事業主でも利用しやすいといえるでしょう。
ただし、ファクタリングと手形割引には、明らかな違いがあります。
違いを理解していなければ、償還請求権の行使より損失を受けるなど、重大な過失になる可能性があるため、注意が必要です。
ファクタリングと手形割引の概要や違いを理解し、ニーズに合ったものを利用するようにしましょう。