ファクタリング情報

医療ファクタリングとは何か?流れやメリット、デメリットなどを解説

目次

医療機関を経営している方には、医療ファクタリングがよくわからない場合があるでしょう。これは診療報酬や調剤報酬など、医療関連の債権を買い取ってもらい、早期の資金調達につなげる方法です。

医療ファクタリングの定義やしくみ、メリット、デメリットなどを学べば全体像がわかり、利用できるようになります。

医療関連の事業を経営していて、まだ債権の売却の経験がない方は、この記事で医療ファクタリングの概要を確かめてください。

医療ファクタリングとは何か?

医療ファクタリングとは診療や調剤、介護など医療報酬に関わる債権を買い取ってもらい、早期の資金調達につなげる方法です。医療機関と依頼先、報酬を支払う公的機関での3社間契約が原則です。医療ファクタリングの定義について、以下を詳しく見てください。

ファクタリングとは債権の売却

まずは一般的なファクタリングの定義を見ましょう。これは債権売却を通した、資金調達の手段です。ここでの債権とは「売掛債権」で、取引先へのサービス提供後、支払期日を設けて後払いを請求します。

つまり債権を根拠として、売掛金を求める形です。取引先が期日までに売掛金を払えば、契約履行になります。

事業者は債権をファクタリング会社に売り、手数料を差し引かれる形で現金を得られるのです。これにより計画的な資金調達ができます。

ファクタリングを利用すれば、売掛金の支払期日より早く資金を得られるでしょう。これにより必要な資金を調達したり、資金繰りを改善したりできます。ファクタリングとは債権売却を通した資金調達の手段で、さまざまな業界で使われているのです。

医療ファクタリングでは診療や調剤、介護などの報酬債権が対象になる

医療ファクタリングでは診療や調剤、介護などで発生した報酬の債権が対象です。医療機関は本来、国民健康保険団体連合会や社会保険診療基金などの公的機関に、診療報酬を請求します。

「レセプト報酬」とも呼ばれ、ここでの請求権が債権と呼ばれるのです。しかし報酬を請求してから実際に払われるまでは、一定期間を要します。支払期日より早い時期に資金が必要になっても、そのときまで支払われない可能性があるのです。

しかし医療ファクタリングを利用すれば、支払期日より前倒しで報酬を受け取れるでしょう。ファクタリング会社が先に医療機関へ一部金額を払ったあと、公的機関にそのぶんの支払いを求めるためです。

この支払いが終わればファクタリング会社は、医療機関に対し手数料を引いた残り金額を入金します。これにより医療機関も早期の資金調達ができ、投資や運転資金などをカバーできるのです。

医療業界でもファクタリングによって、早期の資金調達をすることがあります。

3社間での契約が一般的

医療ファクタリングは3社間での契約が一般的です。契約対象は医療機関とファクタリング会社、公的機関になります。

最初に医療機関がファクタリング会社に依頼をして、債権を売る形です。診療報酬の入金後、ファクタリング会社がその分を公的機関に請求します。

ここでのファクタリング会社は、医療機関と公的機関の間に立ち、取引をサポートします。支払期日より前の債務履行を成功させるためです。彼らのサポートにより、医療機関は資金繰りを改善できます。

医療ファクタリングの種類

医療ファクタリングには主に3種類があります。

・診療報酬ファクタリング
・調剤報酬ファクタリング
・介護報酬ファクタリング

いずれも医療の仕事に関する報酬債権が対象です。しかし診療や調剤などの複数の要素があり、それぞれに応じた債権をファクタリング会社に買い取ってもらいます。

たとえば診療報酬は、保険医療機関によるサービスや診療行為への評価として、公的医療保険から受け取れる報酬です。調剤報酬とは保険薬局が診療サービスをした対価として、公的機関に請求できます。

このように医療業界では、複数の種類のファクタリングがあります。事業内容に応じて、利用すべき種類を確かめてください。

診療報酬ファクタリング

診療報酬ファクタリングでは、診療報酬債権が対象です。医療機関の経営では診療報酬が欠かせませんが、早期に支払ってもらいたい場合は、ファクタリングが役に立ちます。診療報酬ファクタリングの詳細を以下で確かめてください。

診療報酬債権の買い取り

診療報酬ファクタリングとは、診療報酬の債権を売り、早期に資金を調達する方法です。診療報酬を公的機関に請求しても、実際に受け取るまでにはタイムラグがあります。それを少しでも縮めるために、医療ファクタリングが役に立つのです。

医療機関がすぐに資金を必要とした場合に、診療報酬債権の売却が選択肢になります。

診療報酬債権は、医療機関が公共団体に請求できる権利です。これをファクタリング会社に売れば、早期に現金化できます。資金繰りが厳しくて、支払期日まで待てないときも、前倒しで資金を受け取れるでしょう。

診療報酬ファクタリングは、医療機関の診療の対価を早期に受け取る方法です。資金繰りが厳しいと思ったときに、解決策として選べます。

医療機関の経営では診療報酬が重要

診療報酬は医療機関の経営で欠かせません。これは国民健康保険団体連合や社会保険診療報酬基金などへの請求額になります。医療機関が国に報酬を求めるのは、患者本人が診察のコストを一部しか負担しないためです。

患者は受診後、診察や治療などのコストのうち、1~3割だけを窓口で支払います。残りの7~9割は、医療機関から公的機関への請求です。

月末までの請求額を割り出し、翌月10日までにレセプトという診療報酬明細書を出せば、支払機関の審査を受けます。そこから報酬額が決まり、医療機関は残りの報酬を受け取れるのです。

医療機関は公的機関に報酬を請求しても、すぐに受け取れるわけではありません。報酬を受け取るまでに、一定の手続きと審査を要します。

取引先は公的機関なので倒産や不払いのリスクは少ない

診療報酬ファクタリングは、ほかの業界でのファクタリングよりリスクが少ないといえます。3社間での契約対象のひとつが、公的機関だからです。

公的機関は一般の企業とは違い、倒産や不払いの可能性が低いとされます。そのためファクタリング会社による医療機関への審査も通りやすいのです。

3社間ファクタリングでは取引先も契約対象なので、依頼を出した事業者の利用に対し資金繰りの悪化を疑うことがあります。以上から将来的な取引に影響が及ぶかもしれません。

しかし診療報酬ファクタリングに限らず、医療系の債権買取ではそのようなリスクが少ないといえます。支払いの請求先が公的機関だからです。診療報酬ファクタリングは、審査に通りやすく、貸し倒れリスクも低くて利用しやすいといえます。

調剤報酬ファクタリング

調剤報酬ファクタリングは、調剤報酬の債権の売却です。薬局が公的機関に請求する金額を、支払期日より前に調達できます。調剤事業を展開する方は、以下で詳細を確かめてください。

調剤報酬の債権の売却

調剤報酬ファクタリングとは調剤薬局から公的機関への債権を、ファクタリング会社に買い取ってもらうことです。医療機関にとっての診療報酬債権と同じく、調剤薬局には「調剤報酬債権」があります。早期の資金調達が必要になったら、ファクタリングで対応可能です。

医療業界では診療報酬だけでなく、調剤報酬の債権もファクタリング会社に売れます。医療関連の行為で得た報酬の債権は、基本的に売却可能だからです。これを生かして調剤薬局が、経営のために資金調達を早められます。

以上から調剤報酬ファクタリングは、調剤薬局が早期の資金調達をする手段です。

調剤報酬は調剤薬局が公共の保健機関に請求するもの

そもそも調剤報酬は、公共の保健機関に対して調剤薬局が請求します。調剤薬局の役割を兼ねたドラッグストアもあり、こちらが報酬を求めることもあるのです。

日本には健康保険制度があるため、処方を受けたお客さんの自己負担は原則3割です。残り7割は、調剤薬局がレセプトをもとに公的機関へ請求します。

一方で調剤薬局は高額な医薬品を扱うため、経費が大きくなりやすく、必要なときに資金を準備できないときがあるでしょう。

以上から調剤報酬ファクタリングは、調剤事業を手がける組織の味方です。資金力の大きくない機関にとっては、資金繰りを改善できることもあります。そのため調剤薬局にとっても、選択肢として欠かせません。

調剤報酬は調剤薬局が公的機関に求める報酬であり、資金の早期調達のために利用できます。

調剤報酬の売掛金回収を早められる

調剤報酬ファクタリングを利用すれば、売掛金回収を早められます。診療報酬と同じく、ローリスクで資金回収ができるのもポイントです。

本来の請求先である公的機関は、不払いや倒産のリスクが少ないといえます。そのためファクタリング会社も医療機関と公的機関の関係性を健全と判断して、審査を通すことがあります。

以上から調剤薬局はファクタリングを通し、公的機関からの支払いを早期に受け取れるでしょう。通常の取引では、調剤業務提供から報酬を受け取るまで約2カ月かかります。しかしファクタリングによって、2~5日ほどで現金化できるケースもあるのです。

このように調剤報酬ファクタリングは、調剤薬局が報酬を受け取るまでの期間を短縮できます。

介護報酬ファクタリング

介護報酬ファクタリングでは、介護報酬債権を買い取ってもらいます。この債権も公共の保健機関に請求するためのものです。資金の早期調達によって、突発的な出費にも対応できるでしょう。以下で詳細を確かめてください。

介護報酬債権の売却

介護報酬ファクタリングでは、介護に関する報酬の債権をファクタリング会社に売ります。

本来は介護事業者が公的機関に報酬を請求するのですが、この場合は入金まで約2カ月かかります。その間に資金調達が必要になっても、入金を受けられないことがあります。報酬の請求から入金までのタイムラグによって、資金調達に悩む介護事業者もいるでしょう。

しかしファクタリングで、そのような問題を解決できます。早期の資金調達により、介護事業者が必要とする支払いも済ませられるでしょう。資金の流れをスムーズにするために、ファクタリングがきっかけになります。

以上から介護業界でも、ファクタリングを使うケースがあります。これにより資金面の問題をクリアできるでしょう。

介護報酬も公共の保健機関に請求する

介護報酬は介護事業者が公共の保健機関に求めます。ここでは介護サービスだけでなく診療報酬、訪問看護の利用費などが対象です。

介護事業では、容体急変への対応も想定されるでしょう。このようにさまざまな要素で、関連事業者は公的機関に報酬を求めます。

介護サービスも、利用者の自己負担は1割~3割です。残りは介護事業者が公的機関に請求します。介護保険制度によって利用者の自己負担は少なく、介護事業者は報酬の受領で経営を成り立たせるのです。

介護業界でも、サービスの提供に合った報酬が大切です。そのため事業者は公的機関から報酬を受け取り、経営につなげています。

介護現場での突発的な出費にも対応できる

介護報酬ファクタリングによって、事業者は突発的な出費にも対応できます。公的機関からの入金は、本来なら一定期間待たなければいけません。

しかしファクタリングの活用によって、請求から支払いまでのタイムラグを縮められます。その結果、急な支出にも対応できるでしょう。

たとえば介護事業所には、さまざまな設備があります。オフィスだけでもパソコンや電話機、プリンター、空調などが必要です。

さらに使い捨ての衛生用品も定期的に補充しなければなりません。こうした道具の交換やメンテナンスには、月々まとまった費用がかかります。

以上に限らず介護現場では、さまざまな経費が想定されるのです。想定外の出費が起きたときは、ファクタリングをすべきか検討してください。

医療ファクタリングの流れ

医療ファクタリングの大まかな流れは以下のとおりです。

1 ファクタリング会社に依頼
2 ファクタリング会社に医療報酬の債権を売る
3 医療機関から取引先の公的機関に対し、債権売却を知らせる
4 ファクタリング会社と医療機関による契約締結
5 ファクタリング会社が医療機関に、債権額面の大部分を支払う
6 医療機関が公的機関にレセプトを送り、報酬請求をする
7 公的機関が確定報酬額をファクタリング会社に支払う
8 ファクタリング会社は債権額面のうち、支払い済みと手数料の分を差し引いた残りを医療機関へ支払う

5の段階でファクタリング会社が医療機関に支払う金額は、債権額面の約80%が相場とされますが、業者によって違う点に注意しましょう。

債権額面の一部の支払いにとどまるのは、レセプトが100%認められないケースがあるからです。公的機関の審査の結果、診療報酬額が想定以上に削減されることもあります。

そのためファクタリング会社は、契約段階で医療機関に支払う額を一定の割合にとどめるのです。公的機関から支払いが完了すれば、債権額面のうちまだ払っていない分を、手数料を差し引く形で支払います。

医療ファクタリングで必要な書類

医療ファクタリングでは、種類ごとに必要書類が異なります。加えて経営者の本人確認書類も準備しましょう。種類ごとに準備すべき書類を、以下でまとめました。

診療報酬ファクタリング

診療報酬ファクタリングでは、以下の書類を準備してください。

・医師免許証
・印鑑証明書
・診療報酬等決定通知書
・保険医療機関指定通知書
・2期分の決算書
・会社謄本(履歴事項全部証明書)
・納税証明書
・病院開設許可証

ファクタリング会社によっては、上記以外の書類を求めるかもしれません。しかし原則として、リストにあるものが揃っていれば問題ないでしょう。

ここでは医師免許証や保険医療機関指定通知書など、医療機関としての証明書がポイントです。ひとつでも不備があるとファクタリングの契約を結べないので、入念に準備してください。

調剤報酬ファクタリング

調剤報酬ファクタリングでは、以下の書類を準備してください。

・会社概要を記した資料
・診療(調剤)報酬等支払額決定通知書
・2期分の決算書
・会社謄本(履歴事項全部証明書)
・印鑑証明書
・納税証明書

調剤報酬ファクタリングでは、基本的に診療報酬ファクタリングと同様の書類を準備しなければなりません。調剤薬局としての証明のため、会社概要を記した資料や、診療(調剤)報酬等支払額決定通知書が必要です。

また決算書や会社謄本など、ほとんどのファクタリングで求められる証明も要します。ただし医師免許証が不要であるように、診療報酬ファクタリングよりは求められる資料が少ないでしょう。

調剤報酬ファクタリングでは、調剤薬局や事業者としての各種証明が必要です。

介護報酬ファクタリング

介護報酬ファクタリングでは、以下の書類が必要です。

・会社概要を記した資料
・印鑑証明書
・介護給付費等支払決定額通知書
・2期分の決算書
・会社謄本(履歴事項全部証明書)
・納税証明書
・介護事業の指定通知書

ここでは介護事業者としての証明が重要です。そのため介護給付費等支払決定額通知書や、関連事業の指定通知書など、介護事業に関する専門的な書類を準備してください。

また2期分の決算書や会社謄本など、事業者としての基本的な資料も大切です。こうした資料を要する点は、診療報酬ファクタリングと変わりません。

介護報酬ファクタリングでは介護事業者としての証明書類に加え、事業者としての収支を証明する資料などが必要です。

経営者の本人確認書類も用意しよう

医療ファクタリングでは、経営者による本人確認書類も必要です。以下のいずれかがあれば、経営者としての身分を証明できます。

・運転免許証
・健康保険証
・マイナンバーカード
・パスポート

ファクタリングは第三者保証を必要としない代わりに、本人確認書類の提出が必要です。他者の保証がない場合は、本人の身分が欠かせません。以上がないとファクタリング会社も、安心して契約を結べないからです。

医療ファクタリングに限らず、債権を買い取ってもらう場合は本人確認が重要です。

医療ファクタリングのメリット4つ

医療ファクタリングには、主に4つのメリットがあります。審査難易度の低さ、恵まれた条件での契約、取引先からの評判悪化リスクの小ささ、資金繰りの解決です。それぞれを詳しく見れば、医療ファクタリングのよいところがわかります。

審査難易度が低い

医療ファクタリングのひとつめのメリットは、審査難易度の低さです。一般的なファクタリングよりも、審査に通りやすいとされます。

ここでは売掛金を支払う組織の信用力が重視されます。売掛金にあたる医療報酬は、公的機関が支払うため、信用力の高さを評価されやすいのです。

医療ファクタリングでは、原則として3社間で契約を結びます。3社間契約では依頼者とファクタリング会社、取引先による同意がなければいけません。ここでは依頼者が医療機関で、取引先が公的機関にあたります。

公的機関は債務不履行や倒産のリスクが少ないとされるので、医療機関はファクタリングの審査を通りやすいでしょう。

審査の難易度が低いため、スムーズな資金調達につなげられます。売掛金を支払う公的機関の信用力が高いためです。

恵まれた条件での契約が可能

医療ファクタリングは、恵まれた条件での契約が可能です。取引先が国による公的機関で、信用力が高いといえます。

そのためファクタリング会社も、医療機関から安心して債権を買い取れるでしょう。債権の買取後にそのコストを国へ請求すれば、支払ってもらえる可能性が高いといえます。

以上から手数料も低い割合になるでしょう。医療業界以外でのファクタリングでは、手数料が高いことがあります。取引先である一般企業に、不払いや倒産などのリスクがあるからです。

医療ファクタリングは取引先が公的機関なので、そうしたリスクが低いとされます。以上から審査に通りやすく、手数料の面で有利な契約を結べるでしょう。

取引先からの評判悪化を気にしなくてよい

医療ファクタリングでは、取引先からの評判悪化を心配しなくてよいでしょう。ここでは国の公的機関が取引先になるため、信用を疑われるリスクが少ないといえます。

医療機関が公的機関に報酬を請求するのが決まった流れです。そのため医療機関の体制に関わらず、基本的に公的機関は請求された金額を支払います。以上からファクタリングでもスムーズな対応が可能です。

たとえば医療業界以外の3社間ファクタリングでは、事業者の利用を知った取引先が、資金繰りがよくないと疑うかもしれません。これによってそのあとの取引に影響が及ぶ可能性があります。

しかし医療ファクタリングは、国が取引先として契約を結ぶため、ほかの業界のような風評被害のリスクが少ないのです。医療機関から見れば、取引先からの悪評は心配しなくてよいといえます。

資金繰りを解決できる事業者がいる

医療ファクタリングによって、資金繰りの問題を解決できるかもしれません。支払期日を待たずに債権を現金化できるからです。

医療機関によっては必要な支払いがありながら、資金が足りない場合があります。医療報酬の債権を早めに現金化すれば、こうした問題をクリアできるでしょう。

医療ファクタリング会社によっては、初回だけ2カ月分の債権を現金化できます。これで資金繰りを改善する医療機関もあるのです。

医療業界は診察や急患の対応、高額な薬の調剤、設備の入れ替えなどで急な出費が生じやすいといえます。このような問題の解決策が、ファクタリングです。

医療業界では、債権買取を通して資金調達の見通しを立てることもあります。債権を売ることで、資金繰りを改善できるからです。

医療ファクタリングのデメリット3つ

医療ファクタリングでは、次の3つのデメリットに気をつけてください。買い取ってもらえる債権の対象期間が限られている点、手数料による目減り、途中での活用中止の難しさです。ここでは3つのデメリットを知り、対策を考えておきましょう。

売却できる債権の対象期間が限られている

買い取ってもらえる債券は、対象期間が限られています。2カ月分の債権というように、売却可能な売掛金は限定的です。たとえば3カ月分の債権を買い取ってもらいたくても、ファクタリング会社に断られるケースがあります。

また一定期間が過ぎても医療機関に支払われないものは不良債権とされ、ファクタリングには原則として使えません。

以上を踏まえながら売却可能な債権と、資金繰りを改善できる可能性を確かめましょう。現金化できる金額が低いときは、施設の建て替えや設備導入などができない可能性もあります。

医療ファクタリング会社は、利用可能な債権の対象期間を限定しているため、どこまで資金調達できるか確かめてください。

手数料により報酬額が目減りする

医療ファクタリングのデメリットとして、手数料が挙げられます。それによって、医療機関が実際に受け取れる報酬額が目減りするのです。

公的機関から直接払ってもらう場合は、手数料がかかりません。ファクタリングを使えばスピーディに現金を受け取れますが、余分なコストを差し引かれます。

医療ファクタリングは3社間契約が基本で、手数料の相場は1~9%です。ファクタリング会社によっては、低めの割合にしています。それでもサービスの利用によって、手数料は手痛い出費になるでしょう。

実際に受け取れる報酬額を想定し、資金繰りを改善できる可能性を考えてください。

途中での活用中止は難しい

医療ファクタリングは、途中での活用中止が難しいのもデメリットです。最初の利用で資金繰りがよくなっても、あとでまた資金不足になるかもしれません。そのため利用をやめられなくなる医療機関もあります。

医療ファクタリングを利用すれば、2カ月先に払われる報酬を早めに受け取れるでしょう。しかし利用を止めることで、一定期間にわたり医療報酬を受け取れないことがあります。

以上からファクタリングの利用後の資金計画も考えなければなりません。

一度利用したあとも、資金繰りのために再利用しなければならない可能性があります。事前に利用期間を決めたり、資金計画を変えたりするなど、事業継続に向けた対策を決めましょう。

医療ファクタリングを依頼するときの注意点3つ

医療ファクタリングを依頼するときは、利用しすぎないことも大切です。また掛け目制度によって、全額をすぐに受け取れるわけではない点にも注意してください。ファクタリング会社によっては悪徳業者もいるので、引っかかってはいけません。3つの注意点をそれぞれ解説します。

頼りすぎないように注意

ファクタリングは頼りすぎないことが大切です。ビジネスローンより手続きが簡単で、審査も厳しくないといえます。しかしそのぶん、資金繰りが苦しくなるたびに利用するクセがつきやすいのです。計画的に利用しないと、事業計画に影響が及ぶでしょう。

何度もファクタリングを利用するとかえって利益が低くなり、資金繰りがうまくいかなくなるリスクがあります。利益が削られる原因は手数料で、これにより公的機関からの直接入金よりも、手に入れられる報酬が少なくなるのです。

ファクタリングに依存すると手数料が積み重なり、長期的に損失が大きくなる可能性があります。慣れすぎないためにも、資金繰りを改善する方法を考えましょう。

掛け目制度に気をつけよう

医療ファクタリングには掛け目制度があります。契約段階では診療報酬のうち、大部分が支払われるのです。その割合は報酬額の約80%が相場とされます。

つまり医療機関はファクタリングを依頼した場合、全額を一括で受け取れるわけではありません。

ファクタリング会社は最初に医療機関へ報酬額の一部を支払い、残りは正式な報酬額が確定してから入金します。公的機関によるレセプト審査が通らない場合があるからです。

審査結果によって報酬額が減るケースもあるので、ファクタリング会社はその対策として支払いを二段階に分けます。

このような掛け目制度で、医療機関がファクタリング会社から受け取れる報酬額は二段階に分かれます。全額受け取れるまでの資金管理に気をつけてください。

悪徳業者に引っかからないように注意

ファクタリング会社によっては、悪徳業者もいます。こうした業者は公式サイトの情報が疑わしかったり、契約書を交わさなかったりすることがあります。そのためファクタリングを成功させるには、依頼先の信頼性を確かめなければなりません。

そこで運営会社の質や実績などを見極めてください。たとえば医療機関との取引実績が豊富なら、一定の信頼性を見出せます。ほかにも運営会社の評判の高さが判断材料になるでしょう。

悪質な業者を避ける意味でも、ファクタリング会社の信頼性を確かめてから、依頼すべきか考えましょう。

医療ファクタリングの依頼先の選び方4つ

医療ファクタリングの依頼先を選ぶには、さまざまなポイントがあります。取引実績や請求対象期間、掛け目の大きさ、審査から支払いまでの期間を基準としてください。以上の4つのポイントを紹介します。

ファクタリング実績で選ぶ

まずはファクタリング会社の実績に注目しましょう。実績の検証によって、信頼性を見極められます。

実績の乏しいファクタリング会社を選ぶと、支払いをめぐるトラブルが起きたり、法外な手数料を請求されたりするかもしれません。このような事態を避ける意味でも、実績のチェックは大切です。

たとえば累計申込件数が多い企業は、ファクタリング会社として信頼できます。それだけの依頼者に対応しているので、実績の根拠につながるでしょう。

さらに提携企業が豊富だったり、大手との関係性が強いところも選択肢です。たとえばメガバンクや地方銀行と複数提携しているところは安心できるでしょう。このようにファクタリングを検討するなら、依頼先の実績を確かめてください。

請求対象期間で選ぶ

医療報酬のファクタリングでは、どれだけの期間分の債権を買い取ってもらえるかに注目してください。対象期間が長いほど、まとまった資金を調達できます。

債権の対象期間は最大2カ月分が一般的です。以上を踏まえながら、なるべく長い期間分の債権を対象としたものを選んでください。

ファクタリング会社によっては、最大4カ月分の債権に対応します。たとえば2カ月分の医療報酬に加え、さらに2カ月分を融資で調達できる形です。ただしこの場合、融資分の返済が必要なので、それに向けた資金管理も求められます。

医療報酬の債権を売るなら、その対象期間も確かめてください。

掛け目の大きさで選ぶ

ファクタリングを検討するときは、掛け目の大きさにも注目してください。掛け目とは医療報酬の金額に対して、ファクタリング会社が契約段階で支払う割合です。

これが大きいほど、一度に手に入れられる金額が大きくなります。資金繰りの改善を目指すなら、掛け目の大きさは見逃せません。

一般的に掛け目は約80%が相場ですが、ファクタリング会社によっては90%以上も見られます。資金調達を見据えるなら、なるべく掛け目が大きいところが望ましいでしょう。

以上から掛け目が大きいほど、医療機関は有利な条件で契約できます。

審査から支払いまでの期間

ファクタリング会社を選ぶときは、審査から支払いまでの期間を確かめてください。これがわかれば債権の現金化までの見通しをつけやすいといえます。

ファクタリングのメリットは、支払期日よりも前に債権にあたる金額を手に入れられることです。しかしどれだけ早く手に入れられるかは、依頼先により違います。

ファクタリング会社によっては、審査から支払実行までの期間を公表しています。最短1週間のような具体的が期間があれば、資金調達の見通しをつけやすいでしょう。

急な支払いに迫られているときは、審査から支払実行までの期間が短いところが理想的です。以上からファクタリングを検討する場合は、審査から支払実行までの期間について、比較検討をしてください。

医療ファクタリングを利用すべきケースは?

医療ファクタリングは、以下の場合におすすめです。

・資金繰りを改善したい
・設備刷新のような重要な投資を控えている
・ローンが残っている場合
・ボーナスや退職金など人件費の確保が必要

以上のいずれかに当てはまる場合は、ファクタリングを検討しましょう。推奨されるケースを、以下で詳しく解説します。

資金繰りを改善したい

資金繰りの改善を目指す場合は、ファクタリングが選択肢です。医療機関では運転資金や設備の維持費、消耗品の補充などさまざまな出費が想定されます。

介護事業者としての設備投資や、調剤薬局による高額な医薬品の管理など、特定業種ならではの経費もあるでしょう。以上から資金のコントロールの一環として、ファクタリングも戦略のひとつです。

債権の現金化は、医療機関にさまざまなメリットをもたらします。たとえば売り上げが伸びない時期において、必要な支払いをカバーできるでしょう。ほかにも想定外の出費が生じたときは、ファクタリングで資金を補えます。

このように資金のコントロールとして、債権売却が役に立つでしょう。

新しい設備のような重要な投資を控えている

新しい設備のように、重要な投資を控えている場合もファクタリングがおすすめです。設備の新調や内装リフォームなどによって、新しい顧客層を開拓できるかもしれません。

このような取り組みには、まとまった費用がかかります。そこで資金調達のために、ファクタリングを選ぶ方がいるのです。

ファクタリングは、売り上げに伸び悩む事業者にも効果的です。設備や内装の作り替えによって、新しいイメージを作り出せます。イメージアップにより顧客を呼び込めば、投資額を収益で回収できるでしょう。

以上から重要な投資のために、ファクタリングを選ぶ形もよいといえます。

ローンが残っている場合

定期的なローンの支払いが残っていて、手元の資金が足りない場合も、ファクタリングで解決できるかもしれません。とくに新規開業直後にローンが残っている場合は、銀行からの追加融資を受けにくいといえます。

ローンの支払いが終わっていない状態で、さらなるお金を借りようとしても、審査に通らないケースがあるのです。そこで資金調達の方法がわからず、行き詰まる方もいるでしょう。

しかしファクタリングなら、スピーディに現金を手に入れられます。医療債権の売却と引き換えに入金を受ける形なので、ローンとは違います。

受け取った現金の使い道も自由なので、ローンの返済だけでなく運転資金や設備投資などに使えるでしょう。ローンの支払いが残っているときも、ファクタリングでカバーできるかもしれません。

ボーナスや退職金など人件費の確保が必要

ボーナスや退職金などまとまった人件費が必要な場合も、ファクタリングが選択肢です。医療債権の売却により、医療機関は決まった時期にボーナスや退職金を調達できます。

働く人から見ても、このようなお金は決まった時期に手に入れたいでしょう。しかし事業者がそれに応えたくても、手元に資金が足りないケースがあります。

このようにファクタリングを検討する事業者には、人件費の支払いに悩む方もいるのです。その解決手段として、医療報酬債権の売却が考えられます。

ファクタリングは審査に通りやすく、スピーディに医療報酬を受け取れる関係から、ボーナスや退職金などの人件費にも対応できます。

医療ファクタリングのまとめ

医療ファクタリングは、医療報酬の債権をファクタリング会社に売り、その代価として早期に報酬を受け取るしくみです。

ファクタリングでは取引先の信用力を問われますが、医療機関の取引先は公的機関なので、この問題はクリアしやすいでしょう。これによりスピーディな資金調達につなげられます。

ただし利用すると、手数料によって手に入れられる報酬額が目減りします。使いすぎると収益の減少につながるので、利用回数を抑えながら、活用のタイミングを慎重に考えましょう。有効活用によって、資金繰りを改善できます。