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ファクタリングで消費税は課税される?―消費税が課税されない理由と税務処理の方法を紹介

経営者の中には「ファクタリングを利用すれば消費税が課税されるのか知りたい」「もし消費税が課税されるならどのようなケースでそうなるのか知りたい」という方がいらっしゃいます。

答えを先に述べるなら、基本的にファクタリングを利用しても消費税はかかりません。

しかし、ファクタリングの契約で債権譲渡登記が求められる場合、消費税が課税されます。

そこで、この記事ではファクタリングで消費税が非課税となる理由、消費税が課税されるケースでは何に消費税が課税されるのかを紹介します。

ファクタリングのプロセスを理解する

ファクタリングで消費税が課税されない理由を説明するには、ファクタリングで資金調達するプロセスを理解しておく必要があります。

ファクタリングで資金調達するプロセスは以下の通りです。

・ 資金需要のある会社が、所有している売掛債権(売掛金)をファクタリング事業者に買取依頼する
・ ファクタリング事業者は、売掛先から売掛金を回収できる見込みがあれば、その売掛債権を買取する
・ 資金需要のある会社はファクタリング事業者から買取代金を受け取ることで売掛金の入金期日より前に資金調達ができる

ファクタリングのプロセスを見るとわかりますが、ファクタリングは会社が持つ売掛債権という資産をファクタリング事業者に譲渡する行為です。

国税庁の公式サイト「資産の譲渡の具体例」のページでは、資産の譲渡を次のように定義しています。

「資産の譲渡とは、資産につき同一性を保持しつつ、他人に移転させることをいいます。例えば、売買、代物弁済、交換、現物出資などにより、資産の所有権を他人に移転することをいいます。」(引用:国税庁)

ファクタリングは売掛債権を売買する行為なので、資産の譲渡に該当するという点がポイントです。

ファクタリングに消費税がかからない理由

ファクタリングを利用しても消費税がかかることはありません。ファクタリングは消費税における非課税取引に該当するからです。

国税庁の公式サイトでは、消費税が課税される取引について次のように説明しています。

「国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡、資産の貸付け及び役務の提供に課税されますので、商品の販売や運送、広告など、対価を得て行う取引のほとんどは課税の対象となります。」(引用:国税庁)

この説明によると、以下の4つの条件が揃えば消費税の課税対象となります。

・ 国内(日本)における取引
・ 事業者が事業としておこなう取引
・ 対価を得ておこなう取引
・ 資産の譲渡、資産の貸付け及び役務の提供に関係する取引

日本でファクタリング事業者が手数料を受け取っておこなう売掛債権の買取は、4つの条件すべてが当てはまるので、消費税の課税になる取引です。

しかし、国は、消費税の性格や社会政策的配慮から一部の取引を消費税が課税されない非課税取引としています。

財務省の公式サイトでは、消費税における非課税取引として以下のものを挙げています。

• 土地の譲渡及び貸付け
• 有価証券、支払手段の譲渡
• 貸付金等の利子、保険料等
• 郵便切手類、印紙、物品切手等の譲渡
• 行政手数料等、外国為替取引

ファクタリングは2番目の有価証券、支払い手段の譲渡に該当するので、消費税における非課税取引です。

国税庁の公式サイトの「非課税となる取引」のページにも同じ点が説明されています。

そこでは、有価証券等の譲渡が、消費税の非課税取引で、その中には、国債や株券などの有価証券、登録国債、合名会社などの社員の持分、抵当証券、金銭債権などの譲渡が含まれるとあります。

したがって、ファクタリングを利用する際には、消費税はかからないという点を覚えておいてください。

ファクタリング手数料も非課税

ファクタリングを利用した場合、ファクタリング事業者に手数料を支払います。この手数料にも消費税はかかりません。

国税庁の公式サイト「金銭債権の買取等に対する課税関係」のページでは、以下の状況で消費税が課税されるのかどうかを回答しています。

状況:相手方から金銭債権を譲り受け、債務者から回収できるかどうかにかかわらず、金銭債権額から割引料、保証料又は手数料を控除して現金又は手形で支払います。

回答:金銭債権の譲り受けの際に債権者から徴収する割引料、保証料又は手数料は、その名目の如何にかかわらず、金銭債権の譲受対価として非課税となります。

この説明からもわかるように、ファクタリング事業者に支払う手数料は非課税です。

さらに、ファクタリングと似た資金調達手段に手形割引があります。

手形割引料は、手形を支払期日より前に現金化する際にかかる手数料(利息)のことで、手形を現金化する際に、手形の額面から手形割引料が割り引かれます。

したがって、手形割引料は、手形を買取する銀行や手形割引業者の収益になる部分です。ファクタリング手数料も同じように売掛債権を買取する事業者の収益になります。

国税庁の公式サイト「預金や貸付金の利子など」のページでは、非課税となる取引として「手形の割引料」が含まれると説明しており、手形割引料は、消費税の課税対象外です。

こうした点から、手形割引料と似た性質を持つファクタリング手数料についても消費税非課税と判断できるわけです。

債権譲渡登記が必要であれば消費税が課税される

ファクタリングは消費税がかからない非課税取引です。ファクタリング手数料も消費税は課税されません。

しかし、例外的に消費税が課税されるケースがあります。それが「債権譲渡登記」が必要な場合です。

まずは、債権譲渡登記とはどのようなものなのかを説明しましょう。

債権譲渡登記とは?

債権譲渡登記とは債権が譲渡されたことを登記する手続きです。不動産登記や商業登記と同様に、債権についても法務局で手続きすることで、その債権が誰の所有であるかを証明できます。

ファクタリング事業者が債権譲渡登記を求める理由は、二重譲渡の防止と売掛金使い込みへの対抗要件のためです。

たとえば、多額の資金調達を望む会社が、2つ以上のファクタリング事業者に同じ売掛債権を売却した場合、買取したファクタリング事業者すべてが所有権を主張できます。

しかし、その所有権は共存できません。当然トラブルに発展します。所有権が認めらなかった場合は、売掛金が回収できなくなるでしょう。

売掛債権の二重譲渡によるトラブルを回避するため、ファクタリング事業者の中には、自社が債権の所有者であることを第三者に主張できるよう債権譲渡登記の手続きを求めることがあります。

さらに、使い込みでファクタリング事業者に売掛金が入ってこないというリスクに備えるために債権譲渡登記を求めるケースがあります。

たとえば、ファクタリングを利用した会社が、売掛金を回収し、そのままファクタリング事業者へ支払わずに、使い込んだとしても、債権譲渡登記をしていれば、ファクタリング事業者は、売掛金は自社のものであることを第三者に主張できます。

債権譲渡登記をしておけば、使い込みがあっても、裁判所を経由して差し押さえ(債務執行手続き)をおこなう権利を主張し、回収できなかった売掛金を取り戻せるからです。

3社間方式では、債権譲渡通知が求められることはまずありません。一方、2社間方式の場合は、売掛先へのファクタリング導入の通知や承諾が不要なので、二重譲渡や使い込みが密かにおこなわれるリスクがあります。

したがって、2社間方式でファクタリングの契約をする場合、ファクタリング事業者から債権譲渡登記を求められる場合があり、その際の費用の一部が消費税の課税対象です。

債権譲渡登記で課税対象となるもの

債権譲渡登記を伴うファクタリングの契約をする場合、債権譲渡登記の手続きや書類作成は司法書士に依頼するのが一般的です。

その際に、司法書士に支払う報酬や交通費は消費税の課税対象です。

ただし、以下のものについて消費税はかかりません。

・ 登録免許税
・ 印紙代

2社間方式でファクタリングを契約する場合には、債権譲渡登記を求められる場合があります。

債権譲渡登記のため司法書士に仕事を依頼すれば、消費税が課税されるものとされないものがあることを覚えておいてください。

ファクタリング事業者から消費税を請求された場合

通常のファクタリングでは消費税が発生することはありません。

したがって、ファクタリング事業者が、売掛債権買取の見積もりを依頼したときに、取引や手数料に消費税を加算した見積書を提出してきたなら、その事業者は悪徳業者とみなせます。

ファクタリングを利用する会社の中には、急いで現金が必要というところがあります。

そうした会社が「売掛債権の即日買取に対応」という言葉を信用し悪徳業者と契約すると、本来支払う必要のない消費税を支払うだけでなく、割高な手数料、本来存在しない保証金や手付金などの費用を請求されるかもしれません。

支払う必要のない消費税などが見積書に記載されていれば、契約手続きを中断し、信頼できる別のファクタリング事業者を探してください。

ファクタリングと消費税についてのまとめ

この記事では、ファクタリングで消費税が課税されるかどうかを説明しました。

ファクタリングは有価証券の譲渡にあたるので、消費税がかからない非課税取引です。

さらに、ファクタリング手数料も消費税の課税対象ではありません。

2社間方式でファクタリングを契約し、その際に債権譲渡登記をするのであれば、司法書士への報酬に消費税がかかります。

一方、債権譲渡登記のための登録免許税や印紙代は消費税が非課税です。

本来発生しない消費税を上乗せして請求するファクタリング事業者は悪質業者とみなせます。そうした事業者とは取引しないようにしてください。

信頼できるファクタリング事業者を探せば、不要な費用を支払う必要がなく、申し込めばすぐに売掛債権を現金化できるでしょう。