ファクタリングのリコースとは?ノンリコース契約について解説
目次
ファクタリングでよく見る言葉に「リコース」があります。
こちらについて、意味がよくわからない方もいるでしょう。
リコースとは償還請求権で、こちらの有無で企業の対応が変わります。
リコースありなら、債権譲渡後に債務不履行が起きると、譲渡した側が受け取った側に不足金を支払わなければいけません。
しかしリコースなしなら、譲渡後の売掛金の取引先が債務不履行を起こしても、企業は責任を負わなくてよいのです。
リコースの定義を踏まえ、ノンリコース契約のメリットやデメリットなどを紹介します。
ファクタリングのリコースとは償還請求権
リコースとは償還請求権を表します。
債務者が期日までに債権相当額を支払わない場合、債権の以前の持ち主に直接請求できるのです。
ファクタリングでいうと償還請求権ありの場合、以下の流れがあるかもしれません。
1.依頼企業がファクタリング業者に売掛金を譲渡
2.売掛金の支払い期日までに取引先が決済しない
3.ファクタリング業者は、譲渡前の売掛金保有者である依頼企業へ未払い分を請求する
売掛金とは本来、取引後に取引先が企業と結ぶ後払いの約束です。
企業は取引先にサービスを提供したあと、期日までの支払いを待ちます。
ファクタリングでの売掛金の譲渡後に、取引先が支払いの約束を破ると、債務不履行になるのです。
ファクタリング業者は、譲渡された売掛金を回収できないと、多大な損失になります。
仮に償還請求権ありなら、業者は依頼企業へ未払い分の請求が可能です。
しかしファクタリングは多くの場合、償還請求権なしが原則なので、業者から企業への請求はありません。
以上からリコースとは、取引相手の債務不履行後も資金回収できる権利です。
リコースの有無で契約内容が違う
債権に関連した契約は、リコースの有無で異なります。
ファクタリングでも、一部業者がリコースありのサービスを扱っており、取引先の動向次第で企業が損失を受けるかもしれません。
リコースの有無による契約内容の違いを見ていきましょう。
リコースありの場合
リコースありのファクタリングは「ウィズリコース」とも呼ばれます。
この場合は売掛金の譲渡後も、取引先の債務不履行のリスクに要注意です。
リコースありの形式は、貸金業者や銀行のファクタリングに見られます。
「償還請求権特約」や「買い戻し特約」などの文言があると、リコースをともなうしくみです。
売掛金譲渡後に資金回収が不可能になれば、業者が償還請求権を行使できます。
売掛金を実質的に買い戻す形なので、企業は業者に売掛金の相当額を支払わなければなりません。
以上から実質的に、売掛金を担保にした借り入れと扱われます。
資金調達目的でファクタリングをしても、取引先が債務不履行をすれば、大きな損失にいたります。
リコースありの形式は、取引先の信用力が高いときに利用しましょう。
リコースなしの場合
リコースなしなら、企業は資金未回収リスクを避けられます。
売掛金の譲渡後は、取引先から資金を回収できた場合、それを業者に渡せばよいのです。
仮に取引先が債務不履行を起こしても、企業は責任を負う必要がありません。
契約上ファクタリング業者は、償還請求権を行使できないからです。
たとえば売掛金の取引先が倒産し、ファクタリング後の売掛金を支払えないとしましょう。
取引先の倒産後も、ファクタリング業者が企業に未払金を請求せず、自社で損失をカバーします。
ただし業者は取引先の債務不履行に備えて、手数料を高くするかもしれません。
以上から企業は、ファクタリングの利用時において、手数料が高すぎないか気をつけてください。
多くの業者はノンリコース契約を採用しており、企業は資金未回収リスクを防げます。
ファクタリングはノンリコース契約が原則
ファクタリングの原則は、償還請求権をともなわないことです。
売掛金の売買は融資と異なるため、リコースなしで契約する業者が多いといえます。
以上から多くの業者は、売掛金の取引先が債務不履行を起こしても、企業に未払い金を請求しません。
企業はファクタリングによって、取引先の動向による損害リスクを抑えられます。
以上からノンリコース契約は、業者が一定のリスクを負うのです。
リスクマネジメントのため、手数料を高くして、収益確保を目指す業者もいます。
一方ノンバンクや金融機関だと、リコースありのファクタリング契約を提示するかもしれません。
この場合は実質的に、売掛金を担保にした融資契約と認識してください。
人気ファクタリング業者の多くは償還請求権を持たないため、売掛金の支払い期日が守られなくても、企業は責任を負いません。
ノンリコース契約のメリット4つ
ノンリコース契約には、さまざまなメリットがあります。
資金回収失敗のリスクを避けられるほか、経営を守るための利点に注目しましょう。
ここでは以下の4つのメリットを紹介します。
1.回収失敗のリスクを避けられる
2.安定した資金繰りを見込める
3.効率的な与信管理が可能
4.違法業者との契約を避けられる
1.回収失敗のリスクを避けられる
ノンリコース契約のおかげで、資金回収失敗のリスクを避けられます。
ファクタリング業者は償還請求権を持たないので、売掛金の支払いがなくても未払い分を請求しません。
以上から企業は、損失リスクの抑制が可能です。
リコースありだと、資金調達後に債務不履行がわかった場合、企業が補填しなければならず大きな損失に見舞われます。
こうしたリスクに対処できる点は、経営者にとって助かるでしょう
一方ファクタリング業者は審査や手数料によって、債務不履行対策をしています。
たとえば売掛金について、対象の取引先の信用力が不十分なら、審査不通過を決めるかもしれません。
債務不履行による損失カバーのため、高い手数料で収益を確保する業者もいます。
企業は審査や手数料に注意しなければなりませんが、ノンリコース契約なら資金未回収リスクの予防が可能です。
2.安定した資金繰りを見込める
ノンリコースのファクタリングなら、企業は資金繰りを安定させやすいでしょう。
売掛金の回収不能状態は、企業にとって金銭的なリスクです。
ファクタリングを利用せず、期日までに売掛金が支払われないと、企業は大きな損失を負います。
損害の結果、資金がショートして、廃業に追い込まれる企業もあるのです。
しかしノンリコース契約は債務不履行への対策になります。
売掛金を譲渡すれば、取引先が支払い期日を守らなくても、企業が損失を負いません。
そのため売掛金を早期に換金でき、以後の損失リスクも抑えられます。
経営者は安心して資金を得られ、財務状況を安定させられるでしょう。
資金繰りを確実に改善するなら、ノンリコース契約を選んでください。
3.効率的な与信管理が可能
次のメリットは、効率的な与信管理です。
与信管理とは取引先の実態を調べ、売掛金の管理や取引条件に反映させることです。
しかし中小企業は人材やツールの不足により、満足に取り組めない場合があります。
以上のケースでは、他社の協力が欠かせないでしょう。
そこでファクタリングを利用すれば、スムーズな与信管理が可能です。
売掛金の売却前には審査があり、取引先の信用力が重点的にチェックされます。
仮に審査に落ちると、取引先の経営状況がよくないと判断できます。
不健全と評価された取引先からは、距離を置こうと思えるでしょう。
資金繰りが悪くないときでも、売掛金のファクタリングによって、効率的な与信管理が可能です。
4.違法業者との契約を避けられる
最後のメリットは、違法業者とのトラブルへの対策です。
一部ファクタリング業者はリコース契約を結ぶほか、法外な手数料で収益を得ます。
この場合企業は、想定外の損失に見舞われ、資金調達も満足にできないでしょう。
損失によって経営が傾き、廃業に追い込まれることもあります。
不健全な業者は、資金回収不能リスクの高い売掛金を買い取るかもしれません。
このときリコースありの契約を結び、取引先の債務不履行が起きれば、企業に未払い分を請求することがあります。
他社より明らかに高い手数料を設定し、企業に損をさせる業者もいるのです。
悪質業者に引っかかると、企業は資金調達がうまくいかず、財務状況を余計に悪化させるかもしれません。
このような事態を避けるには、健全な業者を見分けましょう。
取引実績や口コミ評価などからクリーンな業者を調べ、依頼すべきところを慎重に選んでください。
ノンリコース契約のデメリット2つ
ノンリコース契約にはデメリットもあります。
デメリットによって財務状況が改善しない企業も見られるのです。
ここでは以下の2つの注意点を見ていきましょう。
1.手数料が高くなるリスク
2.利益の一部が犠牲になる
1.手数料が高くなるリスク
最初のデメリットは、手数料が高いリスクです。
ノンリコース契約で業者が資金未回収リスクを背負うぶん、手数料を高くすることがあります。
手数料は売掛金に対する割合で示され、大きいほど手数料がかかりやすいのです。
依頼時のコストを抑えるには、手数料の安い業者を選びましょう。
口コミ評価や取引実績が豊富で、手数料が安ければ、安心して利用できます。
余分なコストをかけないように、依頼先を慎重に決めてください。
2.利益の一部が犠牲になる
ファクタリングを利用すると、利益の一部が犠牲になります。
取引先から売掛金を直接受け取るより、ファクタリング業者への依頼の方が、企業の手取りが少ないでしょう。
業者の入金額から、一定の手数料が差し引かれるためです。
ファクタリングの複数回利用によって、資金繰りが改善しない企業もあります。
手数料で利益が食いつぶされ、赤字決算にいたる可能性に要注意です。
資金繰りを改善するには、やみくもにファクタリングを使うだけでなく、財務コンサルティングを受けましょう。
ファクタリング業者がコンサルティングを兼ねることもあるので、財務状況をよくするため積極的に利用してください。
ファクタリングのリコースのまとめ
リコースとは償還請求権という意味ですが、ファクタリングによる売掛金譲渡ではノンリコースが主流です。
売掛金の譲渡後に取引先が債務不履行を起こしても、企業が責任を負いません。
譲渡を受けたファクタリング業者が、自社で損失補填を行うからです。
ただし売掛金の譲渡には手数料がかかるため、なるべくコストのかからない依頼先を決めてください。