ファクタリングで使用する売掛金と手形割引で使用する受取手形の違いについて解説!
目次
売掛金と受取手形の概要
売掛金と受取手形は、どちらも未回収の売上のことを指します。
どちらも「売掛債権」と呼ばれますが、異なる性質を持っています。
本章では、売掛金と受取手形の概要について解説していきます。
売掛金とは
売掛金とは、提供した商品・サービスの代金を後から請求できる権利のことです。
売掛金は、商品・サービスの提供から代金の支払いまでに期間が空く「掛け取引」において発生します。
現在の日本では、入金などの手間や振込手数料を削減するために掛け取引が主流となっています。
ただ、実は売掛金の法的な強制力は弱いです。
あくまでも取引を行っている2者間の信用のもとで行われる取引であるため、債務者が支払いを実行しなければ、裁判を介して再度売掛金の請求を行わなければいけません。
このように、売掛金は貸し倒れになるリスクが高いため、しっかりと与信を調査した後に取引を開始することが重要です。
受取手形とは
受取手形とは、提供した商品・サービスと同じ金額の手形を受け取ることです。
受取手形は取引先の事業者が発行するわけではなく、銀行が発行します。
銀行は受取手形の発行依頼を受けた際、債務者の経営状況や信用情報を審査し、支払い能力に問題がないか確認をします。
このように、受取手形の場合は銀行が取引先に対する与信調査を行うため、売掛金と比べると未回収に陥るリスクは低いといえるでしょう。
また、受取手形の支払期日に取引先が支払いを実行しない場合は不渡りとなります。
不渡りは銀行からの信頼を失う原因となり、半年間に2度不渡りを起こしてしまうと銀行との取引が停止となります。
もちろん取引先からの信用を失うことにもつながり、取引停止などの措置が取られることになるでしょう。
このように、受取手形の不渡りを起こしてしまうと、銀行や取引先から取引を停止されてしまうため、事実上の倒産となってしまいます。
このように、受取手形は売掛金と比べて支払いを実行しなかったときのリスクが高いため、未回収リスクが低い傾向にあります。
売掛金と受取手形の違い
売掛金と受取手形は、どちらも提供した商品・サービスの代金を後から請求できる権利であるものの、異なる点がいくつもあります。
本章では、売掛金と受取手形の違いについてまとめてみました。
①:証書発行の有無
売掛金と受取手形では「証書発行の有無」に違いがあります。
売掛金は証書発行という形ではなく、請求書や契約書に基づいて発生します。
売掛金の金額や支払期日は請求書や基本契約書に明示されており、取引先はこれらの書類の内容に基づいて支払いを行います。
一方、受取手形は手形自体が支払いを約束した証書となります。
受取手形には、支払期日や金額などが明示されており、取引先は証書の内容に従って支払いを実行します。
②:支払いに対する法的な強制力
売掛金と受取手形では「支払いに対する法的な強制力」にも違いがあります。
売掛金は、取引を行う両者間の信用に基づいて発生します。
簡単に言うと「口約束」のようなイメージです。
そのため、取引先が売掛金の支払いを期日内に行わなくても、法的な強制力はありません。
債権者は、自ら取引先に対して支払いを促す必要があり、それにも応じない場合は訴訟を起こすという流れになります。
一方、受取手形は支払期日に代金の支払いを行うという約束が証書として存在しています。
受取手形は法的な証書であるため、取引先が期日になっても支払いを実行しない場合は、法的な手続きを通じて支払いを強制することができます。
③:取引に関わる人
売掛金と受取手形には「取引に関わる人」にも違いがあります。
売掛金は、実際に取引を行っている両者間で発生するものであるため、取引に関わる人は取引先のみとなります。
一方、受取手形の場合は、銀行で手形を発行する必要があるため、取引に関わる人は取引先と銀行になります。
受取手形を発行するためには、銀行による審査が必要になるため、売掛金よりも多くの手間が生じてしまいます。
④:支払いサイト
売掛金と受取手形には「支払いサイト」の違いもあります。
支払いサイトとは、商品・サービスを提供した日から実際の支払期日までの期間のことです。
売掛金の場合、支払いサイトは60日以内で設定されることが一般的です。
例えば、商品を4月1日に納品した場合は、6月1日までに代金が支払われることになります。
一方、受取手形の支払いサイトは主に120日内に設定されます。
商品・サービスの提供から代金の受取までの期間が長いので、資金繰りが悪化しやすい傾向にあります。
⑤:未回収時の扱い
売掛金と受取手形には「未回収時の扱い」の違いもあります。
売掛金が未回収になった場合は貸し倒れとなり、商品・サービスの提供者側が損失を受けることになります。
一方、受取手形の未回収時は、不渡りとして扱われます。
上記でも述べたように、取引先は不渡りを出すと社会的な信用を失ってしまうことになります。
ただ、商品・サービスの提供者側の保証があるわけではないので、売掛金と同じく損失を受けてしまうことになります。
このように、売掛金と受取手形には未回収リスクがあるので、注意が必要です。
売掛金を資金化できる「ファクタリング」
売掛金を早期に資金化する方法としては「ファクタリング」が挙げられます。
ファクタリングは近年注目を集めているサービスで、売掛金を素早く資金化したい方や、未回収リスクを回避したい方から利用されています。
本章では、ファクタリングの利用方法、メリット・デメリットについて解説していきます。
ファクタリングの利用方法
ファクタリングを利用する際は、まず契約方式を選びます。
ファクタリングには、利用者とファクタリング会社で取引を行う「2者間ファクタリング」と、取引先も参加する「3者間ファクタリング」の2種類の契約方式があります。
2者間ファクタリングの場合は、ファクタリング会社に申し込みを行い、必要書類の提出、審査、契約の流れを踏んで売掛金を資金化できます。
一方、3者間ファクタリングでは、ファクタリング会社に申し込みを行う前にファクタリングを利用することに関して取引先からの承諾を得なければいけません。
そのため、3者間ファクタリングは2者間ファクタリングよりも資金化スピードが遅い傾向にあります。
ただ、取引先が取引に参加することから、2者間ファクタリングよりも手数料が安い傾向にあります。
このように、2者間ファクタリングは「資金化スピードが早い」、3者間ファクタリングは「手数料が安い」という特徴があるので、ニーズに合った契約方式を選ぶようにしましょう。
ファクタリングのメリット
ファクタリングのメリットは以下の通りです。
①:素早い資金化が可能
ファクタリングの最大のメリットは資金化スピードの早さです。
上記でも述べたように、売掛金には最大で60日の支払いサイトが設定されます。
商品・サービスの提供から60日間は、手元資金で事業を運営する必要があるため、資金繰りに困る方も多いでしょう。
また、手元資金が潤沢という場合でも、突発的な出費によって手元資金が不足してしまうケースも考えられます。
しかし、ファクタリングでは売掛金を最短即日で資金化できます。
申し込みを行った当日中に売掛金を資金化することが可能なので、資金繰りの悪化や突発的な出費の際に活用できます。
②:未回収リスクを回避できる
ファクタリングには未回収リスクを回避できるというメリットもあります。
ファクタリングでは基本的に「償還請求権なし」の契約が締結されます。
償還請求権とは、買取った債権を回収できなかった場合に元の債権者に弁済を求めることができる権利です。
償還請求権なしのファクタリングでは、ファクタリング会社に売掛金を譲渡した後に未回収が発生したとしても、利用者に弁済の義務が発生することはありません。
利用者はファクタリングの利用によって売掛金を確実に資金化でき、未回収リスクを回避できます。
取引先の経営状況に不安要素がある場合や、売掛金の未回収による倒産リスクがある場合に活用できます。
③:信用情報が悪くても利用できる
ファクタリングは信用情報が悪くても利用可能です。
融資やカードローンなど、一般的な資金調達方法においては審査の際に「利用者の信用力」が重視されます。
これは、利用者から貸付金と利息を回収する必要があるからです。
一方、ファクタリング会社は利用者の取引先から売掛金を回収する必要があるため「取引先の信用力」を重視します。
そのため、赤字決算や債務超過など、融資やカードローンの審査においては不安要素となる信用情報を抱えている方でも、ファクタリング審査においては問題ありません。
ファクタリングは信用情報が悪くても利用できるので、融資やカードローンを利用できないケースにおいて活用できます。
ファクタリングのデメリット
ファクタリングのデメリットは以下の通りです。
①:手数料の発生
ファクタリングを利用する際は必ず手数料が発生します。
手数料は売掛金が持つ未回収リスクに応じて設定されますが、相場としては2者間ファクタリングで10%~20%、3者間ファクタリングで1%~9%程となっています。
ファクタリングの手数料は、売掛金を資金化する際に差し引かれます。
例えば、100万円の売掛金を手数料10%で資金化する場合、手数料の10万円は先に差し引かれ90万円を受け取れることになります。
手数料が発生することによって、本来受け取れる金額が少なくなってしまうので、資金繰りの悪化などに注意する必要があります。
②:悪徳業者の存在
実はファクタリング業界には、利用者に対して違法な契約を促したり、高額な手数料を請求してくる悪徳業者が存在します。
なぜなら、ファクタリング会社は開業に際して貸金業登録を行う必要がないからです。
開業に際して国からの認可を得る必要がなく、資金さえあれば開業できることから、多くの悪徳業者が存在しています。
悪徳業者を利用してしまうと、高額な手数料による資金繰りの悪化や、違法な取り立てによる社会的信頼性の失墜などの被害に遭う可能性があります。
ファクタリング会社を選ぶ際は、信頼性や実績を確認し、悪徳業者の利用を回避するようにしてください。
受取手形を資金化できる「手形割引」
受取手形を早期に資金化する方法として「手形割引」が挙げられます。
手形割引とは、銀行や割引業者に一定の手数料を支払うことで、受取手形を早期に資金化できるサービスです。
本章では、手形割引の利用方法、メリット・デメリットについて解説していきます。
手形割引の利用方法
手形割引を利用する際は、まず受取手形を資金化してくれる銀行や割引業者を選定します。
その後申し込みを行い、無事審査に通過することができれば、手数料を差し引かれた受取手形を資金化できるという流れになります。
手形割引では、取引先にあたる手形の振出人だけでなく、利用者の信用力に関しても審査が行われます。
なぜなら、手形割引では振出人が支払いを実行しない場合、利用者に弁済義務が生じるからです。
そのため、信用情報や経営状況に問題を抱えている場合は、審査に通過できない可能性があります。
手形割引のメリット
手形割引のメリットは以下の通りです。
①:受取手形の支払いサイトを短縮できる
手形割引の最大のメリットは、受取手形の支払いサイトを短縮できることです。
受取手形の支払いサイトは売掛金よりも長期化することが多く、長ければ商品・サービスの提供から3か月~4か月後になることもあります。
手形の受取人は、この支払いサイトが原因で資金繰りの悪化を引き起こしてしまう可能性があります。
しかし、手形割引を利用すれば1週間ほどで受取手形を資金化することができます。
長期化しやすい受取手形の支払いサイトを短縮できることは、利用者にとって大きなメリットだといえるでしょう。
②:手数料が安い
手形割引はファクタリングと比較して手数料が安い傾向にあります。
先ほどファクタリングの手数料相場について述べましたが、ファクタリングの手数料には利息制限法が適応されないため、場合によっては20%を超える高額な手数料を請求されることもあります。
しかし、手形割引を行う銀行や割引業者は貸金業者であり、貸金業法を順守する必要があるため、20%以上の手数料を設定されることはありません。
手数料を抑えることによって、受取手形の資金化による資金繰りへの影響を最小限にとどめることができます。
③:銀行融資の審査よりも通過しやすい
手形割引の審査は銀行融資の審査よりも通過しやすい傾向にあります。
なぜなら、審査の際に手形の受取人だけでなく、振出人に関する審査も行うからです。
手形割引の利用者である受取人の信用情報・経営状況に多少の不安要素があっても、振出人の支払い能力が良好であれば、審査に通過できる可能性は高いといえます。
手形割引のデメリット
手形割引のデメリットは以下の通りです。
①:手数料が発生する
手形割引では、ファクタリングと同じく手数料が発生します。
手数料の相場はファクタリングよりも安いものの、支払期日まで待てば受け取れる金額が目減りしてしまうことに変わりありません。
受け取れる金額が少なくなることによって資金繰りが悪化してしまう可能性があるため、注意が必要です。
②:不渡り時のリスクが大きい
手形割引は「償還請求権あり」の契約です。
手形割引利用後に受取手形が不渡りとなった場合、利用者は不渡りとなった受取手形を買い戻さなければいけません。
もし、資金化した受取手形を使い込んでおり手元資金が不足している場合は、倒産してしまう可能性も考えられます。
このように、手形割引では振出人が問題なく支払いを実行するまで安心できないというデメリットがあります。
ファクタリングで使用する売掛金と手形割引で使用する受取手形の違いについて解説!のまとめ
今回は、売掛金と受取手形の違い及び、それぞれの売掛債権を資金化する方法について解説させていただきました。
売掛金と受取手形は「売掛債権」という言葉で一括りにされますが、その性質は全く異なるものです。
また、資金化する方法も異なっており、それぞれのサービスにメリット・デメリットがあります。
売掛債権の早期現金化を検討されている方は、保有している売掛債権の性質を理解し、適切なサービスを選択するようにしましょう。