ファクタリングは売掛金の売買契約!メリットと注意点を解説
ファクタリングは、利用者が売掛債権(売掛金)を売却(譲渡)する売買契約を結ぶことにより、売掛金を早期現金化できるサービスです。
ファクタリングは法律(民法)によって認められた「債権の譲渡」であり、「借りない資金調達方法」として、利用者数は年々増加傾向にあります。
この記事では、ファクタリングにおける売買契約および得られるメリットや利用時の注意点を解説します。
ファクタリングにおける売買契約
ファクタリングは、企業が保有する売掛金を売却することで資金調達を行う手法の一つです。この際に重要となるのが売買契約です。売買契約は、売掛金を売却する企業(売主、利用会社)と売掛金を買い取る企業(買主、通常はファクタリング会社)の間で結ばれます。
売掛金の売買契約
売買契約においては、主に以下のような内容が明記されます。
1.売買の対象となる売掛金の詳細
2.売掛金の売却価格
3.売買のタイミングと方法
4.売買契約におけるファクタリング会社の責任と義務
5.利用者の責任と義務
売買契約を結ぶことで売掛金を現金化でき、ファクタリング会社は将来的な回収を見込んで売掛金を買い取れます。
ファクタリングの契約は「ノンリコース(償還請求権なし)」と「(ウィズ)リコース(償還請求権あり)」の2つです(後に詳しく解説)。
ノンリコース契約では、債権譲渡と同時に、償還請求権も移ります。通常、ファクタリング契約の多くはノンリコースです。
一方、リコース契約では償還請求権ありとなります。そのため、もし売掛金が回収できない事態になれば、利用会社は大きな負担を背負うことになります。
ファクタリングの種類
ファクタリングの売買契約には「2社間」と「3社間」の2つの選択肢があります。
2つの売買契約の違いは「売掛先を含めて手続きを行うか」です。
2社間では、売掛金を持つ利用者とファクタリング会社の間で売買契約手続きを進め、3社間の場合は売掛先へ債権売却に関する通知を行い、承諾を得てから手続きを進めます。
2社間
2社間方式は、債権の売却を短時間で行える、売掛先に利用を知られないといったメリットがあります。
2社間方式は、最短即日での現金化が可能です。また、債権の売却を売掛先に知られたくないときに向いている契約方式です。
ただし、2社間方式はファクタリング会社のリスクが高くなるため、手数料が上乗せされて高くなる傾向があります。
3社間
3社間の手数料は、2社間に比べて安くなることがメリットです。
一方で、資金調達に数日から1週間程度が必要であるほか、売掛先との関係性を考慮しなければならないといったマイナス面もあります。
3社間では売掛先に対し、通知やファクタリング会社への支払いなどで負担をかけることになります。売掛先との関係が悪くならないように注意しましょう。
売買契約の進み方
ファクタリングの売買契約の流れについて、2社間と3社間の違いを解説します。
2社間の売買契約
2社間では、次のような流れで売買契約が行われます。
・売掛金がある利用会社が申し込み
・審査
・審査を通過すれば売買契約が成立
・売買契約後、売掛債権が買い取られ、その代金が支払われる
2社間の売買契約では、売掛先との手続きが発生しないため、売買契約まで最短、即日で完了します。資金調達を急ぐ場合は2社間を利用しましょう。
2社間の場合、売買契約とともに債権譲渡登記が条件になっているケースもあります。
3社間の売買契約
3社間での売買契約の流れは以下の通りです。
・売掛金がある利用会社が申し込み
・審査を通過すれば売買契約が成立
・売買契約が成立したあと、売掛先に債権譲渡が行われたことが通知される
・売掛先が承諾したら、代金が支払われる
3社間では売買契約が成立したあと、売掛先へ債権譲渡が行われたことについて通知がいきます。売掛先の承諾が必要であり、売掛先の了承が得られなければ3社間ファクタリングは成立しません。
売買契約の注意点
売買契約では、内容を細部に至るまで確認することが非常に大切です。
ポイントを押さえて契約書をチェックすれば、利用者側が不利になるような売買契約を避けられ、また違法業者を避けられるでしょう。
売買契約の注意点1.契約書の表題・前文
契約書の表題は、融資であれば「金銭消費貸借契約」といったように契約の内容により異なります。ファクタリングでは売買契約を結ぶため「債権譲渡契約書」となっているのが一般的でしょう。しかし、違法業者が貸付けしようとする場合「金銭消費貸借契約書」になっている可能性が高いため注意してください。
また売買契約の前文で、売買契約の内容について書かれている部分も必ずチェックしましょう。ファクタリングであれば、売掛金の売買契約(債権譲渡契約)である旨が書かれているはずです。
売買契約の注意点2.債権譲渡通知の有無
債権譲渡通知は、債権が第三者に譲渡されたことを債務者に通知することです。 2社間方式の売買契約では「無」、3社間方式の売買契約では「有」が一般的です。売買契約を確認し、債権譲渡通知について記載があるかをチェックしましょう。
売買契約の注意点3.債権譲渡登記の有無
債権譲渡登記は、基本的に2社間では必要、3社間やオンライン契約では不要です。
2社間方式では債権譲渡登記が条件になっていることが多く、登記にかかる費用負担が発生します。
売買契約の注意点4.償還請求権の有無
ファクタリングの売買契約には、償還請求権(リコース)に関する記述も必ずあります。
償還請求権は売買契約を結んだ後、売掛金が回収不能となった場合に利用会社に請求する権利です。
違法業者の場合、ウィズリコースでの契約を求められることがほとんどです。違法業者を避けるためには、売買契約がノンリコースとなっているか、必ず確認するようにしましょう。
売買契約の注意点5.手数料
貸金業の場合、法律で利息が制限されています。しかし、ファクタリングは規制する法律がまだなく、ファクタリング会社が自由に設定できるため、売買契約によって手数料の変動が大きいこともめずらしくありません。
ファクタリングの手数料は、一般的に2社間で10~30%、3社間で1~10%程度です。
売買契約の際、あまりにも高すぎる手数料を求める業者には注意してください。
売買契約の注意点6.担保や保証人
原則、ファクタリングは担保や保証人がなくても利用できます。担保や保証が必要といわれたら、違法業者である可能性が高いといえます。
売買契約では担保および保証人は不要となっているかチェックを忘れないようにしましょう。
売買契約の注意点7.報告義務
ファクタリングの売買契約には、売掛先についての情報をファクタリング会社へ報告する義務が盛り込まれています。
ファクタリングは原則として償還請求権がないことから、ファクタリング会社は未回収リスクを背負います。
2社間方式の場合、ファクタリング会社は売掛先がどのような経営状況なのかがわかりません。そこでファクタリング会社は、利用会社から報告を受けることを義務としています。
売買契約を結ぶ際には、報告義務の内容や利用会社が報告しなかったことが原因で、ファクタリング会社が損失を出した場合のペナルティなどについて、チェックするのを忘れないようにしましょう。
売買契約の注意点8.損害賠償や違約金、契約解除
売買契約において報告義務を怠ったり、売掛金を支払わなかったりといった違反行為があると、損害賠償や違約金の対象となります。
また売買契約において悪質な行為があったと判断されると、契約解除になることも明記されています。
売買契約の注意点9.契約期間
売買契約が有効となる契約期間についても確認しておく必要があります。
ファクタリングは、スポット的につなぎ資金として利用するのが一般的ですが、中には継続して利用する会社も増えてきました。
売買契約では、単発か継続利用になっているのかを確認しましょう。
中には、継続利用にして利用者に不利な条件で契約させる悪質な業者もあります。契約期間についてよく確かめ、認識の違いがないかのチェックが大切です。
ファクタリング利用の注意点
ファクタリングを効果的に利用するために、注意すべき点は以下の通りです。
・売掛金の額面以上の資金調達はできない
・過度の利用は資金繰りの悪化につながる可能性がある
・利用できないケースもある
・売掛先に知られる可能性がゼロではない
売掛金の額面以上の資金調達はできない
ファクタリングは、売掛債権の額面全額を資金調達できるわけではありません。
利用には必ず手数料が発生するため、実際に調達できる金額は想像以上に少ない可能性があることを理解しておく必要があります。
依存すると資金繰り悪化につながる可能性
ファクタリングは手数料を引かれる分、利益を減らすことになります。
また、ファクタリングは入金の時期を早めるサービスであり、根本的な資金繰り改善にはならない点にも注意が必要です。
ファクタリングで資金繰りに余裕を持たせている間に、資金繰りを改善する策を講じなければならない点を理解しておくべきでしょう。
利用できないケースもある
ファクタリングは、利用会社の信用度が低くても問題なく利用できます。
しかし、売掛先の信用度が著しく低い場合は、買い取ってもらえない可能性もあります。
通常のファクタリングはノンリコース取引であるため、未回収のリスクが高い債権の場合、利用できないこともあるでしょう。
また、ファクタリングで買い取り対象となるのは、原則「法人が発行した確定債権」です。売掛債権が複数ある場合は、信用度の高い債権を選ぶ必要があります。
5.売掛先に知られる可能性がゼロではない
2社間方式には「売掛先に知られずに資金調達ができる」というメリットがあります。しかし、売掛先も契約に参加する3社間方式では、必ず売掛先へファクタリングの利用を知られます。
また売掛先が契約に関与しない2社間方式であっても、債権譲渡登記を行う場合は、利用を知られる可能性はゼロではありません。
債権譲渡登記を行い、売掛先が登記録を閲覧した場合、利用を知られてしまいます。売掛先に知られたくない場合には、2社間方式を利用し、なおかつ債権譲渡登記を行わない契約を結ぶことが必要です。
ファクタリングは売掛金の売買契約!契約時の注意点を解説のまとめ
ファクタリングを利用により「売掛金の早期現金化」ができます。資金繰りに悩む多くの企業にとって、資金繰り改善に役立つ便利なサービスです。
ファクタリングは、利用会社とファクタリング会社が売買契約を結ぶことで成立します。売買契約は「企業が売上の代金として受け取る「売掛金」(売掛債権)を、ファクタリング会社に売却(譲渡)する」という契約です。
ファクタリングは銀行融資に断られてしまった企業や、その日のうちに資金調達が必要といった企業でも、売掛債権の信用力が高ければ利用可能です。
資金繰りに悩みやすい中小企業にとっては利用する価値があるといえます。しかし、ファクタリングには現在法律が整備されていないこともあり、中には違法業者も存在します。
悪質な違法業者に騙されないように、また不利な契約を知らない間に結ばされていたということがないように、売買契約時の契約書をしっかりとチェックしなければなりません。