ファクタリング情報

ファクタリングは非課税?それとも課税?手数料も含めて解説

主に中小企業の資金調達方法として「ファクタリング」が注目されています。ファクタリングは売掛債権をファクタリング会社が買い取り、期日よりも早く現金化する方法です。ファクタリングを利用する場合、課税取引なのか、非課税取引なのかわからないという方もいるのではないでしょうか。

ファクタリングは基本的に非課税取引です。本記事では、ファクタリングがなぜ非課税取引なのかや、手数料およびその他諸費用の課税・非課税の取り扱いなどについてくわしく解説します。

ファクタリングは非課税

日本国内において、事業者がモノやサービスの提供を行った際に課される税金が消費税です。売掛金を現金化するファクタリングもその一部に含まれるのでは?と考えてしまいがちです。しかしファクタリングの取引は非課税となっています。はじめにファクタリングがどのような取引なのか、消費税の概要などについて解説します。

ファクタリングとは

ファクタリングは企業が売掛債権をファクタリング会社に譲渡(売却)し、必要な資金を調達するサービスです。本来の売掛金回収前に資金化が可能であり、資材や機材費の支払い、人件費など、すぐに資金が必要な場合に役立ちます。

融資よりもスピーディーに資金を手に入れられるため、中小企業を中心に新しい資金調達の方法として注目を集めています。

消費税とは

消費税は、日本国内において事業者が対価を得て行う資産の譲渡・貸付け・役務の提供(商品やサービスの提供などの商取引)に対して課税される税です。つまり、商品を販売したり、モノを運んだり宣伝したりといった取引は原則として課税の対象になります。

しかし、消費税は国内で行われるすべての取引に課税されるのではありません。一部は消費税の課税対象にならないケースがあり、課税されない取引は不課税・非課税・免税の3つに分かれます。

不課税取引とは

不課税取引とは、日本国内で事業者が対価を得て行う商品やサービス提供に当たらない取引です。たとえば、対価を得ない取引である寄附や贈与、給与や保険金などが該当します。

非課税取引とは

非課税取引とは、対価を得る取引であっても、消費税を課税するのがなじまないなどを理由に課税しない取引です。有価証券や商品券の譲渡や介護保険サービスの提供、学校の授業料などが該当します。本来、課税対象ではない取引が「不課税取引」、本来は課税対象となるはずの取引のうち、課税しない扱いになっているのが「非課税取引」です。

免税取引とは

輸出や外国への輸送、外国の事業者に対するサービスの提供などの取引で、一定の条件を満たす場合に消費税を免除できる取引を指します。非課税取引と同様、課税対象の取引ではあっても、税金を支払わなくてもよいことになっている取引です。

ファクタリングはなぜ非課税なのか?

ファクタリングは売掛債権を譲渡(売却)し、代金を利用者は受け取ります。この取引は消費税が課税される要件「対価を受け取る」という取引にあたり、課税取引となるイメージがあります。しかし、実際には非課税取引です。ここでは、その理由について解説します。

売掛債権の譲渡は非課税

消費税とは何かを「消費する」際に発生することから、ファクタリング=債権の譲渡(売買)は「権利の移動」であり、消費ではなく非課税取引となっています。

ファクタリングは、国税庁が定める非課税取引のひとつ「有価証券等の譲渡」に当たるとされています。譲渡される売掛債権は有価証券等にあたる「国債や株券、金融債権など」のうち「金銭債権」であり、株式などの取引と同様、消費税が発生しないのです。

ファクタリングの買取手数料も非課税

ファクタリングをすると、ファクタリング会社に支払う「買取手数料」がかかります。この場合、買取手数料にも消費税は課税されません。

買取手数料が非課税の理由は、国税庁が定める「預金や貸付金の利子など」にあたると考えられるためです。前述のように消費税は、商品やサービスの「消費」にかけられる税です。ファクタリングの買取手数料は、預金などの利子と同じく消費されるものではありません。

「預金や貸付金の利子など」の中には「手形の割引料」が含まれています。ファクタリングと似ている取引が売掛債権を支払期日前に銀行や業者に譲渡して現金化する「手形割引」です。

手形を買い取る銀行および業者は、手形の額面から手数料として割引料を差し引き、残った金額を手形の所有者に払います。この割引料は非課税です。そのため、ファクタリングの買取手数料も手形の割引料同様、非課税取引とされています。

ファクタリングにおいて課税対象の部分は?

ファクタリングにおいて、取引自体と買取手数料は非課税です。しかし一般的に「ファクタリングの手数料」には買取手数料だけではなく、手続きに必要な諸経費の部分が含まれています。諸経費には課税対象の取引が含まれているため、この部分は消費税を負担しなければなりません。

債権譲渡登記の費用

ファクタリング取引の基本的な部分は非課税です。しかし、「債権譲渡登記」には消費税が課税されます。債権譲渡登記とは、売掛債権を譲渡したことをファクタリング会社が第三者に対し主張する(対抗要件)ための方法です。

ファクタリング会社は、買い取りした売掛金を回収しなければなりません。買い取りした債権が、二重譲渡(ほかの会社にも債権が売却されること)されていては大変です。

3社間の場合は、売掛先の承諾が必要であるため、二重譲渡のリスクは少なく、債権譲渡登記は基本的に必要ありません。

しかし2社間の場合売掛先へ通知する必要がないため、二重譲渡が行われるリスクがあります。そこでファクタリング会社は債権譲渡登記を行って、自社こそが譲渡された売掛債権を所有しているという事実を証明するのです。

債権譲渡登記に必要な「登録免許税」(1件につき7,500円または1万5,000円)や「印紙代」は非課税ですが、司法書士に登記を依頼する際に支払う報酬(5万円から10万円程度)や交通費は消費税がかかります。債権譲渡登記にかかる費用は、利用者が負担することになっているため、注意が必要です。

2社間ファクタリングでは債権譲渡登記が必須条件になっている会社もあります。その場合は消費税が発生することを理解しておきましょう。

事務手数料

ファクタリングそのものの手数料は非課税ですが、審査や契約などの事務手続きにかかる費用である事務手数料は課税対象となります。事務手数料は数千円~数万円程度必要です。

出張費用

ファクタリング会社の中には、出張買取、面談に対応している会社もあります。近くにファクタリング会社がない場合など、わざわざ遠方に足を運ぶ必要がなく手続きできるため便利ですが、オンライン上ではなく対面で行うため交通費や出張費用を利用者が負担することも少なくありません。

出張買取では、出張費を求められることがあります。出張費の内訳は、出張手数料と出張に必要な交通費です。
出張手数料は、ファクタリングの買取手数料とは別に、出張対応によって発生する手数料です。そのため、課税売上となり消費税を請求される可能性があります。

また、電車代やタクシー代、飛行機代といった交通費は非課税売上です。交通費は基本的に内税であるため、消費税が含まれた金額です。消費税を上乗せした金額を請求する場合、二重に課税していることになります。悪徳業者が出張費用を請求する際、出張手数料と交通費を分けず、出張費全体に消費税を上乗せすることがあるため、注意しましょう。

手数料をごまかされるのが不安な場合は、出張費が無料のファクタリング会社の利用を検討するのがおすすめです。

悪徳業者と取引した場合

買取手数料が非課税であると知らずにファクタリングを利用した場合、もし上乗せされていても、知識がないと疑いもせず払ってしまうかもしれません。

非課税である部分に対して消費税が請求された場合、悪徳業者である可能性が高いため注意しましょう。悪徳業者は本来非課税であるのに課税されるとして、消費税を上乗せして請求する手口をよく使います。 また、出張費用に関しても高額な費用や、利用者が負担しなくてもよい手数料が請求されるケースもあります。請求で不明な点があるときには、内訳の説明を要求しましょう。

ファクタリングの会計処理

ファクタリングを利用した場合、会計処理は通常の売掛金処理とは異なります。ここでは
ファクタリングをした時の仕訳について解説します。

通常の仕訳

会計処理は仕訳という方法で行います。仕訳とは企業が取引を借方と貸方に分け、金額や勘定科目を帳簿に記録していく作業です。 最終的に「貸借対照表」や「損益計算書」などの決算書にまとめられます。

仮に100万円の売上が掛取引で発生した場合は、
①借方:売掛債権(売掛金) 100万円 貸方:売上100万円という仕訳です。

その後、売掛先から100万円の売掛金が入金された場合、
②借方:現金100万円 貸方:売掛債権(売掛金)となります。

上記のように売上が発生した時点での仕訳と、入金があった(売掛金を回収した)ときの仕訳という2回の会計処理が必要です。

ファクタリングの仕訳

ファクタリングを利用した場合の仕訳は、3回の会計処理が必要になります。
売掛金が発生した時点の仕訳は、通常の仕訳と同じです。
①借方:売掛債権(売掛金) 100万円 貸方:売上100万円

100万円の売掛債権(売掛金)をファクタリングした時の仕訳は、

②借方:未収金100万円/ 売掛債権(売掛金)100万円  です。

「未収金」は、売掛債権(売掛金)以外の金銭債権で「通常の取引以外で発生した未入金のもの」があるときに使用する勘定科目です。ファクタリングを契約してから、実際に資金調達できるまでには時間があります。ファクタリング会社から入金があるまで、未収金として計上しておきます。

後日、ファクタリング会社から入金されたときの仕訳は、

③借方:現金90万円、売上債権売却損(または雑損失)10万円  貸方:未収金100万円 

ファクタリングを利用したことによる未収金を会計処理し、買取手数料を処理します。買取手数料の分は「売上債権売却損」または「雑損失」として計上し、売上からマイナスします。

ファクタリングは非課税?それとも課税?手数料も含めて解説まとめ

ファクタリングによって調達する資金及びファクタリングの取引時にかかる買取手数料は非課税取引であり、消費税はかかりません。これは、ファクタリングが有価証券の譲渡に、買取手数料は「預金や貸付金の利子など」 に該当すると解釈されているからです。これらは国税庁により非課税取引とされています。ただし、債権譲渡登記を行う場合や、事務手数料などの諸費用は課税対象です。
また出張買取を依頼する場合の交通費は内税であるため、非課税となります。悪徳業者の中には本来非課税の部分を課税にして、消費税分を余分に取ろうとする会社があるため、注意しましょう。