ファクタリングと取引信用保険の相違点、目的別おすすめサービスはどれかをわかりやすく説明
目次
中小企業の経営者の中には、売掛先の倒産などで売掛金が未回収になりキャッシュフローが悪化することを避けるため、買取型ファクタリングや保証型ファクタリング、あるいは取引信用保険の利用を検討している方がいらっしゃいます。
自社のニーズに調和したサービスを選択するためには、以下の点を理解しなければなりません。
● ファクタリングと取引信用保険のサービス
● ファクタリングと取引信用保険の共通点と相違点
● 目的別のおすすめサービス
● それぞれのサービスの利用上の注意点
そこで、この記事では、売掛金未回収のリスクを避けたいという経営者のために、ファクタリングと取引信用の間にある共通点や相違点、それぞれのサービスを利用する際の注意点などをわかりやすく解説します。
買取型ファクタリングは資金調達手段
ファクタリングには買取型と保証型があり、一般的にファクタリングと呼ばれるサービスは買取型になります。
買取型ファクタリングは、会社が保有する売掛債権をファクタリング事業者に譲渡(売却)することで、売掛債権を現金化できるサービスです。
買取型ファクタリングは契約スタイルにより以下の2つに大別できます。
● 3社間方式:契約と取引に関係するのは利用企業・ファクタリング事業者・売掛先
● 2社間方式:契約と取引に関係するのは利用企業・ファクタリング事業者のみ
売掛債権を売却し代金を受け取った後、売掛先から売掛金を回収することになりますが、その方法は以下の通りです。
● 3社間方式:売掛先がファクタリング事業者に売掛金を入金する
● 2社間方式:ファクタリング利用前と同じように、利用企業が売掛先から売掛金を回収し、それをファクタリング事業者に支払う
買取型ファクタリングを使えば、売掛金の入金期日より前にお金が入ってきます。したがって、買取型ファクタリングは、売掛金が発生してから実際に入金されるまでの期間の短縮や緊急時の資金調達を目的としたものです。
保証型ファクタリングで売掛金未回収のリスクを回避
保証型ファクタリングは、企業が保有する売掛債権に保険をかけることで、売掛金未回収のリスクを回避するサービスです。
売掛先の倒産や経営破綻といった理由で売掛金が回収不可となっても、保証会社が保証限度額の範囲内で保証金を支払います。
利用目的は、債権の貸し倒れ、連鎖倒産、黒字倒産による貸し倒れリスクを回避することです。
取引信用保険で売掛金未回収の損害をカバー
取引信用保険は、売掛先の倒産などで売掛金が回収不能となり損害を被った場合に、その損害の一定割合を補償するサービスです。
売掛金の入金遅延があれば、話し合いや督促が必要であり、それでも支払いがない場合は裁判手続きで売掛金を回収することになります。さらに、売掛金が未回収になれば資金繰りに影響を及ぼします。
資金繰りが苦しくなれば、取引先に経営状況が悪いと警戒され、悪い噂が広まるかもしれません。
取引信用保険により売掛先が倒産などの理由で債務不履行になっても保険金で損失補填できるので、貸し倒れ損失に伴う様々な問題を回避できます。
3つのサービスの共通点
ファクタリングと取引信用保険の共通点は次の3つです。
● 対象となる債権は売掛債権
● 貸し倒れ損失の確実な回収
● 与信審査がある
まずは、対象となるものは売掛債権という点が同じです。
他にも、貸し倒れ損失の確実な回収ができるという共通点があります。
買取型ファクタリングの契約は償還請求権なしの契約が一般的です。
償還請求権なしの契約であれば、売掛先の倒産などで貸し倒れになり、ファクタリング事業者が売掛金を回収できなくなっても、利用企業に弁済責任が生じることはありません。
利用企業は既に受け取った売掛債権の代金をファクタリング事業者に返却する必要はないので、貸し倒れ損失の確実な回収が可能です。
保証型ファクタリングでは、売掛先が債務不履行になっても保証金が支払われるので、貸し倒れ損失を回収することができます。
同じように、取引信用保険では、貸し倒れ損失が起こっても、保険金で損失の一部をカバーすることが可能です。
さらに、3つのサービスすべてに与信審査が必要であり、その審査で重要視されるのが売掛先の信用力という点も共通しています。
納入企業は、売掛先に売掛金の支払い能力があるかどうかを自社で定期的にチェックしなければなりません。そうすることで、売掛金未回収のリスクを減らすもしくは回避できるからです。
この作業を「与信管理」といいます。
しかし、中小企業や個人事業主は本業に忙しく、与信管理をきちんとするための時間を見出すのが難しいです。
ファクタリングや取引信用保険を申し込めば、ファクタリング事業者または保険会社が売掛先の与信審査をおこなってくれます。
ファクタリング事業者や保険会社の与信審査を利用すれば、自社でおこなう与信管理を充実させることが可能です。
3つのサービスの相違点
買取型・保証型ファクタリング、取引信用保険には共通点だけでなく、相違点もいくつか存在します。相違点は以下の4つです。
● サービス提供事業者
● 利用目的
● 対象となる売掛先
● 手数料・保証料・保険料の相場
サービス提供事業者
ファクタリングと取引信用保険取引ではサービス提供事業者が違います。
● 買取型ファクタリング:ファクタリング事業者
● 保証型ファクタリング:ファクタリング事業者(主に銀行系・ノンバンク系の事業者)
● 取引信用保険:保険会社
買取型ファクタリングは、親会社が銀行、ノンバンクの事業者に加え、大手企業や有名企業の後ろ盾を持たない独立系ファクタリング事業者もサービスを提供しています。
保証型ファクタリングのサービスを提供する事業者は、銀行系・ノンバンク系のファクタリング事業者がほとんどです。
取引信用保険は損害保険会社と契約します。
利用目的
買取型ファクタリング・保証型ファクタリング・取引信用保険の別の違いは、サービスの利用目的です。
● 買取型ファクタリング:回収サイトの短縮や早期の資金調達
● 保証型ファクタリング:売掛金未回収のリスクに備える
● 取引信用保険:売掛金未回収のリスクに備える
買取型ファクタリングの利用目的は資金調達です。
保証型ファクタリングと取引先信用保険の利用目的は、両方とも売掛金未回収のリスクに備えるためなので、一見すると同じです。
しかし、保証型ファクタリングと取引信用保険の間には対象となる売掛先の範囲に違いがあります。
対象となる売掛先
買取型・保証型ファクタリングと取引信用保険のいずれもサービスの対象が売掛債権という点は同じですが、利用企業が対象として選ぶ売掛先の範囲については違いがあります。
● 買取型ファクタリング:取引先の中から対象となる売掛先を選択可能
● 保証型ファクタリング:取引先の中から対象となる売掛先を選択可能
● 取引信用保険:継続的な売買契約または請負契約がある全売掛先が対象、基本的に選択不可
保証型ファクタリングでは、利用企業が取引先の中から対象となる売掛先を選択します。
したがって、その利用目的は特定の売掛先について売掛金未回収になるリスクを回避することです。
取引信用保険では、利用企業が基本的に対象となる売掛先を選ぶことはできません。
しかし、一部の保険会社では、利用企業が以下の選定基準で取引信用保険の対象となる売掛先を選べます。
● 全取引先
● 売上高上位〇社
● 売上高〇~〇位
● 債権残高上位〇社
● 債権残高〇百万円以上
● 特定部門の全取引先
● 上場企業を除く全取引先
取引信用保険では1社だけを対象とするということはできません。ある保険会社では取引信用保険を契約するためには10社以上の売掛先で申し込み可能としています。
手数料・保証料・保険料の相場
ファクタリングと取引信用保険では手数料・保証料・保険料にそれぞれ相場があります。これも相違点のひとつです。
ちなみに相場は以下の通りです。
● 買取型ファクタリング(2社間方式):手数料は売掛債権の8%~18%
● 買取型ファクタリング(3社間方式):手数料は売掛債権の2%~9%
● 保証型ファクタリング:保証料は売掛債権の1%~8%
● 取引信用保険:保険料は保険会社が設定する支払限度額の1%~3%
買取型ファクタリングで、額面500万円の売掛債権を手数料5%で買取してもらうなら、手数料の額は25万円になります。
保証型ファクタリングで、額面500万円の売掛債権を保証料2%で保証してもらうなら、保証料は10万円です。
取引信用保険で、保健会社の設定する支払限度額が2,000万円で保険料が2%なら、年間保険料は40万円です。
どのサービスを選択するかで迷っているなら、手数料・保証料・保険料がどれくらいになるのかを計算し、その費用対効果を比較してください。
目的ごとのおすすめサービス
取引型・保証型ファクタリング・取引信用保険の3つのサービスの特徴を踏まえた上で、目的ごとにどのサービスがおすすめなのかをまとめました。自社に合ったサービスを選ぶ際の参考にしてください。
● 売掛金未回収のリスクを避けたい:買取型ファクタリング/保証型ファクタリング/取引信用保険
● すぐに資金が必要:買取型ファクタリング
● 売掛先を選んで売掛金未回収のリスクを減らしたい:買取型ファクタリング/保証型ファクタリング
● 毎年決まったコストで売掛金未回収のリスクを減らしたい:取引信用保険
こうした情報を参考に自社に合ったサービスを選んでください。
ファクタリング・取引信用保険を利用する際の注意点
注意点には以下のものがあります。
● 買取型は短期間で頻繁に利用しない
● 保証型は掛け捨て保険のようなものである
● 取引信用保険では対象外になる売掛先がある
● 売掛債権全額を受け取れるわけではない
買取型は短期間で頻繁に利用しない
買取型ファクタリングを利用する際には、短期間で何度も利用しないように注意してください。
買取型ファクタリングは、売掛債権の額面から手数料を引いた分を資金化できます。したがって、普通に入金期日を待ってから売掛金を受け取る方が得られる資金の額は大きいです。
短期間に何度もファクタリングを利用するなら、通常よりも入ってくる資金がどんどん少なくなり、かえってキャッシュフローを悪化させることになるでしょう。
保証型は掛け捨て保険のようなもの
保証型ファクタリングは、掛け捨て保険のようなものであるという点を念頭に置いてください。
売掛金の支払いがきちんとあった場合、保証型ファクタリングの保証が実行されることはなく、保証料が返還されることはありません。
したがって、与信管理をきちんとせず複数の売掛先を保証型ファクタリングの対象にすれば、支払った保証料の分だけ資金が減ることになります。
取引信用保険では対象外になる売掛先がある
取引信用保険については、保険会社による取引先の審査で、保険の対象外となる売掛先が出る場合があるという点に注意してください。
保険会社による審査の結果、取引先によっては保険の対象外、もしくは希望与信枠を下回る支払い限度額での引受けとなる場合があります。
たとえば、取引信用保険の対象取引は継続的な取引で、スポット的な売買取引で、継続・反復しない取引は対象外です。
また、保険契約前に、法的な倒産手続きが既に開始されている売掛先、以前から支払遅延などの不払いを起こしているも対象外になります。
地震や津波といった大規模災害が原因で損害が発生した場合、一般的に保険金は支払われません。しかし一部の保険会社によっては保険金を支払うケースがあります。
売掛債権の全額を受け取ることはできない
買取型ファクタリングの場合、売掛債権の全額を資金化することはできません。最終的に受け取れる金額は、買取金額からファクタリング事業者の手数料を差し引いた金額になります。
保証型ファクタリングを契約し、その後売掛先が債務不履行となった場合も、売掛金の全額を受け取ることはできません。
ファクタリング事業者により、全額保証を掲げているところがあります。しかし、保証料を支払っているので実際に回収できる金額は売掛金の額面の90%程度です。
取引信用保険に加入し、対象となるどこかの売掛先が債務不履行になった場合も、回収不能となった金額全額が保証されることはありません。
保険事故の場合、貸倒れ金額、又は与信限度額、どちらか少ない金額に通常85~95%の縮小率を掛けた金額が保険金の支払い限度額となります。
ファクタリングと取引信用保険の違いについてのまとめ
ファクタリングと取引信用保険について共通点と相違点を紹介しました。
どれも売掛債権を対象としたサービスであり、売掛金未回収のリスクに備えることができるのは同じです。
しかし3つのサービスは利用目的や対象となる売掛先の範囲が違います。
● 買取型ファクタリングの目的は資金調達
● 保証型ファクタリングの目的は、特定の売掛先について売掛金回収不能となるリスクを回避すること
● 取引信用保険は基本的にすべての売掛先を対象に売掛金回収不能となった場合のリスクを軽減すること
サービスの選択のカギは、それぞれのサービスの内容や特徴、違いを理解することです。そうすれば、自社のニーズに合ったサービスを選ぶことができるでしょう。