ファクタリング情報

ファクタリングの際に通帳提出が必要になる理由と注意点

ファクタリングを契約する際、ファクタリング会社からいくつか書類の提出を求められます。提出すべき書類の一つに銀行の預金通帳があります。なぜファクタリングを利用する際には通帳提出が求められるのでしょうか。また求められたからと言って通帳提出に応じていいのでしょうか。

ファクタリングと通帳提出

ファクタリングを行う際、ファクタリング会社から様々な書類の提出を求められます。以下に示す書類が一般的ですが、ファクタリング会社の方針やファクタリングの金額等によって一部の書類は提出を求められないケースもあります(それぞれのファクタリング会社に確認してみる必要があります)。
いずれの書類についても、提出しないという選択はなく、提出しないで済むよう交渉することもよほど明確な理由がある場合を除いて困難です。ファクタリング会社から書類の提出を求められた場合には、提出するか、別のファクタリング会社を探すか、を検討することになります。

ファクタリングの提出書類

それでは具体的に提出を求められる書面にはどのようなものがあるかを見ていきましょう。

1. ファクタリングの対象となる売掛債権に関する請求書
ファクタリングの対象となる売掛債権に関する請求書とは、取引先(売掛先)に対して発行した請求書です。売掛金の発生を証明するための重要な書類になります。
この請求書には、請求先の名称、請求金額、支払い条件、発行日などが記載されています。ファクタリング会社は、この請求書を基に売掛金の金額や支払い期限を確認し、ファクタリングの審査をしたり契約を結んだりする際の基礎資料として利用します。

2. 売掛先との取引契約書
売掛金が発生する原因となった売掛先との取引に関する契約書は、売掛債権が正当な商取引に基づいていることを証明する書類です。この契約書には、取引の内容、取引条件、支払い条件などが詳細に記載されています。ファクタリング会社は、この契約書と請求書の内容が合致しているか、またこの契約書を通じて、そもそも取引が正式なものであるか、また売掛先が契約に基づいて支払いを行うかを確認し、審査を行います。
契約書の他に仕様書や納品書が存在する場合、それらの提出を求められることがあります。ファクタリング会社がこられの書類の提出を求める理由は契約書を求める理由と同じで、取引の存在を確認するためです。

3. 決算書類(過去2~3期分)
決算書類は、企業の財務状況を示す重要な書類で、過去2~3期分が求められることが一般的です。決算書類には貸借対照表や損益計算書、キャッシュフロー計算書などが含まれます。
決算書は企業の経営状態や収益性、財務健全性を評価するために使用されるもので、ファクタリング会社も、これらの書類を基に、企業の信用力や債務返済能力を判断しています。

4. 会社概要書
会社概要書は、企業の基本情報をまとめた書類で、会社名、設立年月日、資本金、従業員数、事業内容などが含まれます。元々会社が用意していたものを提出するのではなく、ファクタリング会社の指定する書式で記載するよう求められることが多いです。
ファクタリング会社は、この概要書を通じて、企業の規模や事業の性質、経営の安定性を把握します。これにより、ファクタリングのリスクを評価し、契約内容を検討する材料とするのです。

5. 代表者の身分証明書
代表者の身分証明書は、企業の代表者が本人であることを確認するための書類です。通常、運転免許証やパスポートなどが提出されます。この書類は、本人確認とともに、ファクタリング会社が契約を結ぶ相手の信頼性を確認するために重要です。ファクタリング会社は身分証明書を確認することにより、契約上のトラブルを未然に防ぐことができます。
また会社の実在を確認するために登記簿謄本や印鑑登録証明書の提出を求められるケースもあります。

6. 預金通帳
企業の銀行口座情報を確認するために通帳提出を求められます。通帳提出は原本を求められることもありますが、コピーでもよい場合もあります。また通帳提出が求められるのはファクタリングにかかる債権の入金口座である場合が多く、企業が他に口座を持っていたとしてもその口座の通帳提出を求められるわけではありません。代表者個人の預金口座の通帳提出も必要ありません。

ファクタリングで通帳提出を求められる理由

このようにファクタリング会社が提出を求める書面の中で特に重要なのが通帳提出です。ファクタリングで通帳提出が求められる理由を細かく見ていきましょう。

1. 企業の信用力確認
ファクタリング会社は通帳提出された通帳の現物またはコピーをみて、企業の信用力を確認します。
具体的には、ファクタリング会社は預金残高や過去の取引履歴から、企業がどれだけ安定したキャッシュフローを持っているかを評価できます。定期的な収入や預金残高の大きさは、取引先からの入金が安定して行われていることを示し、ファクタリング会社にとってリスクの低い取引相手であることを確認するための資料となります。

2. 売掛金の入金状況確認
ファクタリング会社は売掛金の入金状況を確認するためにも通帳提出を求めます。ファクタリング会社は、売掛金が確実に企業の口座に入金されているか、また入金が遅れていないかをチェックします。これにより、売掛債権の回収リスクを評価し、支払期日に間違いがないことを確認します。この情報は、ファクタリング取引におけるリスク管理に役立ちます。

3. 不正リスクの排除
通帳提出は、不正リスクを排除するためにも求められます。ファクタリング会社は、通帳の取引履歴を確認し、虚偽の債権や架空の取引がないかを検証します。ファクタリング会社には詐欺により資金をだまし取ろうとする申込があります。通帳提出を求め、その通帳を確認することにより、架空の売掛金を基にした詐欺を防止することができます。詐欺を避けることにより結果としてファクタリング会社の損失リスクを軽減できます。通帳の取引履歴は信頼性の高い証拠となるのです。

4. 振込先の確認
ファクタリング契約で得た資金を企業の指定口座に確実に振り込むために、振込先を確認します。通帳提出を求められた通帳の原本またはコピーには口座番号や銀行名が記載されているため、正確な振込先情報を確認することが可能です。これにより、ファクタリング会社は振込ミスを防ぎ、また振込先が違っていた場合の紛争を予防することができます。確実にファクタリングの資金が指定の口座に振り込まれることで企業側も安心してファクタリングを利用できます。

ファクタリングの際に通帳提出するリスク

ファクタリングで通帳提出が求められることを理解したら次に通帳提出の要求に応じた際にどのようなリスクがあるのかを確認しておきましょう。

1. 情報漏洩リスク
預金通帳には、企業の取引先や振込先などの機密情報が含まれています。これらの情報はファクタリング会社のミスで外部に漏洩する可能性があります。また、ファクタリング会社が適切な情報管理を行っていなかった結果、サイバー攻撃などによって情報が流出することもあります。
情報漏洩が発生すると預金通帳の取引履歴から、企業の経済状況や財務状態が第三者に把握されることで、詐欺や架空請求のターゲットになる可能性があります。たとえば、支払い能力があると見込まれた場合、架空の請求書や契約が送られることがあり、企業や個人が不当に金銭を要求されるリスクが増します。

2. 不正利用のリスク
ファクタリング会社からの通帳提出の要求に応じたことにより、ファクタリング会社が悪意をもって情報を悪用するリスクが生じます。ファクタリング会社がもともと詐欺的な会社である場合もあれば、ファクタリング会社の従業員が自らの利益のため、あるいは会社への報復などの目的で情報を流出させることもあります。
口座番号や取引履歴を不正に利用することで、不正送金や口座の乗っ取りなどの犯罪に利用される可能性があります。特に、オンラインバンキングが普及している現在、口座情報を悪用した詐欺行為や不正送金は大きなリスクです。

4. 金融機関との信頼関係への影響
通帳提出することで、金融機関との信頼関係に影響が出る可能性があります。金融機関は、取引情報が外部に漏れることを嫌うため、ファクタリング会社への情報提供が発覚した場合、企業に対して警戒心を抱く可能性があります。また、金融機関側が企業の信用リスクをファクタリングを利用している点に着目して資金繰りに問題を抱えていると評価し、将来的に融資条件を厳しくするなどの対応を取る可能性もあります。

5. 取引先との関係悪化リスク
通帳提出する預金通帳には取引先の情報が含まれており、これが外部に渡ることで取引先との関係が悪化するリスクがあります。取引先は自社の情報が第三者に知られることを好まない場合が多く、そのような状況が生じると、信頼関係にヒビが入る可能性があります。最悪の場合、取引先が取引を見直す、あるいは終了する事態に至る可能性も考えられます。

ファクタリングで通帳提出するときにできる対策

ファクタリング会社に求められたからといって通帳提出を行うとリスクがあることを理解してもらえたと思います。しかし、ファクタリング会社からの通帳提出を断ることは容易なことではありません。やむを得ず通帳提出を行う場合でも、言われるがままに通帳提出するのではなく、以下のような方法でリスクを低減させることを検討してみるべきです。

1. 信頼性の高いファクタリング会社を選ぶ
ファクタリング会社の選定はリスク軽減の基本です。信頼性の高いファクタリング会社を選ぶことで、情報の漏洩や不正利用のリスクを最小限に抑えることができます。
ファクタリング会社の信頼性を外部から確認するのは簡単ではありませんが、ファクタリング会社を選定するときに、ファクタリング会社の評判や実績は最低限確認しておくべきです。評判や実績は知り合いに聞いてみることやインターネットで情報を集めることでも何もしないよりもはるかにましです。
また可能であればセキュリティポリシーを確認し、第三者機関による評価や認証を取得しているかどうかもみておくとよいでしょう。
なお、信頼できるファクタリング会社であれば万が一、情報漏洩が発生した場合であっても、適切に保障してもらえることが期待できます。

2. 情報管理と契約書の確認
ファクタリング契約を締結する前に、契約内容をしっかりと確認することが重要です。契約書には、情報の取り扱いを明記しておくべきだと言えます。具体的には、情報を漏洩させないようファクタリング会社に義務を負わせ、万が一にも情報漏洩が生じた際は、しっかりと保障することを盛り込んでおきます。
可能であればセキュリティ対策も明記されていることが望ましいです。セキュリティ対策について契約書に盛り込める場合には、ファクタリング会社が提供する情報管理のプロセスやセキュリティ対策について十分に理解し、必要に応じて契約書に特定のセキュリティ対策を盛り込むことがおすすめです。
契約書に情報漏洩について規定すれば情報漏洩が起きなくなるわけではありません。しかし契約書に情報漏洩の防止を規定するファクタリング会社は情報漏洩がリスクであることを正しく認識しているといえ、社内で必要な対策を行っている可能性が高いです。

3. 最小限の情報提供
預金通帳に含まれる情報の中で、ファクタリングに必要な最低限の情報だけを提供する方法も有効です。例えば、口座番号や取引履歴の一部のみを提供し、不要な情報を省略することで、リスクを抑えることができます。具体的には原本ではなくコピーの提供が許されているのであればなるべくコピーを提出すること、その際に今回のファクタリングに関係のない情報(例えばファクタリング会社が必要としていない銀行届出印の印影や、ファクタリングの対象ではない取引先からの入金履歴等)を塗りつぶすなどしてファクタリング会社に渡さないことです。
必要な情報のみを提供することで、情報漏洩や誤用のリスクを軽減し、企業の機密情報を保護することができます。

ファクタリングで通帳提出するときは少し注意して

ファクタリングを利用する際、通帳提出を求められればいやとは言えません。断ればそのファクタリング会社を利用することはできず、他のファクタリング会社を探す必要があります。
しかし、通帳提出はリスクの高い行為であることは確かです。ファクタリング会社が信頼できる会社か見極め、契約でしっかりと対策すべきです。
信頼できないファクタリング会社からファクタリングを受けることは通帳提出以外にもたくさんの問題を起こしかねません。ファクタリング会社は信頼できる会社をしっかりと選ぶようにしましょう。