ファクタリングで経費計上できるものには何がある?経費計上できるものとその仕訳の仕方、勘定科目を紹介
目次
ファクタリングは中小企業や個人事業主向けの資金調達手段として広く活用されています。しかし、ファクタリングの種類、種類ごとで経費計上できるもの、仕訳の仕方やその際に使う勘定科目を知らないと会計上のミスが起こるでしょう。
そこで、この記事では、ファクタリングの種類をまず説明し、それから種類ごとに経費計上できるもの、仕訳の仕方やその際に使う勘定科目についてわかりやすく紹介します。
ファクタリングは大きく分けると買取型と保証型の2種類
ファクタリングサービスは大きく分けると次の2種類です。
買取型:保有している売掛債権をファクタリング事業者に譲渡(売却)し、その代金を受け取ることで、売掛金の入金期日より前に、売掛債権を現金化できるサービス
保証型:売掛債権に保険を掛けることで、信用不安のある売掛先からの売掛金未回収に備えられるサービス。倒産などの理由で売掛先から売掛金を回収できなくなった場合、保証会社が保証限度額の範囲内で保証金を支払う
買取型ファクタリングは資金調達手段として利用します。一方、保証型ファクタリングは売掛金未回収へのリスクヘッジとして利用する掛け捨て保険のようなものです。
したがって、どちらの種類のファクタリングを利用するかで、経費計上できる経費の種類が違ってきます。
経費計上とは?
ファクタリングで経費計上できるものを説明する前に、簡単に経費計上の意味についても触れておきましょう。
経費とは事業のために使用したお金です。収益を得ることが事業の目的ですから、収益を得るために使用したお金は経費になります。
経費計上とは、事業のために出費した金額を経費に換算することです。経費計上額が増えれば、納税額が少なくなり節税につながります。
ファクタリングで絶大な節税効果を期待することはできません。しかし、経費計上できるものをきちんと知っておけば、いくらかの節税効果は見込めます。
一般的に経費計上できるものの例は以下の通りです。
人件費
旅費交通費
消耗品費
福利厚生費
法定福利費
通信費
地代家賃
広告宣伝費
接待交際費など
買取型ファクタリングで経費計上できるもの
買取型ファクタリングで経費計上できるものは、「ファクタリング手数料」です。
ファクタリングを利用すれば、かならずファクタリング手数料がかかります。ファクタリング手数料はファクタリング事業者の儲けになる部分です。
一般的にファクタリング手数料は次のような内訳になっています。
基本手数料
振込手数料
掛け目
印紙代
債権譲渡登記費用
事務手数料(審査料・契約手数料・システム手数料・出張契約費用など)
買取型ファクタリングには契約スタイルによって、次の2つの種類に分けることができます。
2社間方式:ファクタリング事業者と利用企業の2社だけが契約や取引する。売掛先にファクタリング利用の通知や承諾を求める必要がない。
3社間方式:ファクタリング事業者と利用企業、そして売掛先の3社が契約や取引する。
どちらのファクタリングを利用しても、手数料は必ず発生するので、経費計上できます。
ちなみに、3社間方式は2社間方式より、詳細に売掛先の支払い能力について審査が可能です。したがって、3社間方式の方が2社間方式より、売掛金未回収のリスクを軽減できます。その分3社間方式の手数料は2社間方式より低く設定されています。
保証型ファクタリングで経費計上できるもの
保証型ファクタリングで経費計上できるものは、「保証料」です。保証料は保険でいう保険料に該当します。
病気や事故に備える保険に加入し、保険料を納めていれば万が一のときに保険金が支払われます。それと同じように、保証型ファクタリングで保証をかけた売掛先が倒産などの理由で売掛金未回収となった場合、保証金を受け取ることが可能です。
手数料や保証料以外の費用を請求する事業者には要注意!
買取型ファクタリングで経費計上できるものはファクタリング手数料で、保証型ファクタリングで経費計上できるものは保証料でした。
ファクタリング事業者の中には、これら以外の名目で費用を請求してくるところがあります。ファクタリング事業者が以下のような独自の名称で費用を請求してきた場合、注意してください。
着手金
審査料
見積もり費用
契約手数料・事務手数料・システム手数料
出張契約費用
これの費用は基本的にファクタリング手数料の内訳に含まれています。こうした項目でファクタリング手数料以外のお金を請求してくる業者とは契約しないのが賢明です。
経費計上できるファクタリング手数料の仕訳の仕方と勘定科目
ファクタリング手数料は経費計上できますが、仕訳帳に仕訳を記載する際の仕方、使用する勘定科目を説明していきます。
2社間方式を利用したケースで、どのような仕訳が必要なのかを見てみましょう。
2社間方式の仕訳の仕方
50万円の売掛債権を、手数料5万円でファクタリングしたケースを例にして、仕訳の仕方を説明します。
50万円の売掛金が発生した時点が、ファクタリングに関係する最初の仕訳です。
<借方>勘定科目「売掛金」で50万円
<貸方>勘定科目「売上」で50万円
仕訳が必要な次の取引は、ファクタリング事業者と契約した時点です。
<借方>勘定科目「未収入金」50万円
<借方>勘定科目「売掛金」50万円
次は、ファクタリング事業者から手数料5万円を引いた分の入金が口座あった時点の仕訳です。
<借方>勘定科目「普通預金」45万円
<借方>勘定科目「売上債権売却損」5万円
<貸方>勘定科目「未収入金」50万円
2社間ファクタリングでは、ファクタリング会社の契約と買取代金の口座への入金が同時におこなわれるケースがあります。
そのケースにおける仕訳は以下の通りです。
<借方>勘定科目「普通預金」45万円
<借方>勘定科目「売上債権売却損」5万円
<貸方>勘定科目「売掛金」50万円
3社間方式の仕訳の仕方
3社間方式で、50万円の売掛債権を手数料5万円でファクタリングしたケースを例に、取引ごとにどのような仕訳が必要なのか、どんな勘定科目を使えるのかを解説します。
掛取引で50万円の売掛金が発生した時点でまず仕訳します。
<借方>勘定科目「売掛金」で50万円
<貸方>勘定科目「売上」で50万円
次は、ファクタリング事業者と契約した時点での仕訳です。
<借方>勘定科目「未収入金」50万円
<借方>勘定科目「売掛金」50万円
さらに、ファクタリング事業者から手数料を引いた分のお金が口座に入金された時点で仕訳します。
<借方>勘定科目「普通預金」45万円
<借方>勘定科目「売上債権売却損」5万円
<貸方>勘定科目「未収入金」50万円
ファクタリング手数料の勘定科目は売上債権売却損
経費計上できる買取型ファクタリングの手数料ですが、それを仕訳する際に使う勘定科目は、「売上債権売却損」です。
会計ソフトによっては、売上債権売却損の勘定科目がないものがあります。
そうしたケースでは「雑損失」「支払手数料」「繰越利益剰余金」「割引料」などの勘定科目を代用してください。
とはいえ、仕訳のたびにファクタリング手数料の勘定科目を変えるのはふさわしくありません。
仕訳帳を見返した時に取引内容が理解できるようにするため、勘定科目のルールを定めたなら仕訳の際はそのルールに従ってください。
経費計上できる保証料の仕訳の仕方と勘定科目
この部分では保証型ファクタリングを利用した際の仕訳の仕方、経費計上できる保証料に使う勘定科目を解説しましょう。
50万円の売掛債権について1万円の保証料で保証型ファクタリングを契約した場合を例に、仕訳の仕方を説明します。
最初は、掛取引で50万円の売掛債権が発生した時点での仕訳です。
<借方>勘定科目「売掛金」で50万円
<貸方>勘定科目「売上」で50万円
仕分が必要な次の取引は、ファクタリング事業者との保証型ファクタリングの契約です。その取引の仕訳は以下の通りにおこないます。
<借方>勘定科目「支払手数料」1万円
<借方>勘定科目「普通預金」1万円
経費計上できる保証料1万円は、支払手数料の勘定科目を使います。
万が一、売掛先の倒産などで売掛金が回収不能となった場合、次の仕訳が必要になります。
<借方>勘定科目「貸し倒れ損失」50万円
<借方>勘定科目「売掛債権」50万円
さらに、売掛金が未回収となったので保証会社から50万円の保証金を受け取った場合、その取引があった時点で以下の仕訳をします。
<借方>勘定科目「普通預金」50万円
<借方>勘定科目「雑収入」50万円
保証料の勘定科目は支払手数料
仕訳の仕方の説明を見るとわかるように、保証料の勘定科目は「支払手数料」を使っています。
さらに、ファクタリング事業者から受け取った保証金は勘定科目「雑収入」を使い仕訳してください。
保証型ファクタリングには売掛債権の譲渡はありません。したがって、勘定科目「未収入金」「売上債権売却損」を使った仕訳処理は必要ありません。
ファクタリングで経費計上できるものについてのまとめ
この記事では、ファクタリングで経費計上できるものについて紹介しました。ファクタリングには買取型・保証型の2種類があります。
それぞれの種類で経費計上できるものは以下の通りです。
買取型ファクタリング:ファクタリング手数料
保証型ファクタリング:保証料
仕分する際に使う勘定科目は次の通りでした。
ファクタリング手数料:売上債権売却損
保証料:支払手数料
ファクタリングを利用したなら、どの時点で仕訳を始める必要があるのか、経費計上できる出費には何がふくまれるのか、どの勘定科目を使うのかに注意して会計処理をしてください。
こうしたポイントを押さえておけば、ファクタリングにまつわる会計処理も正確に記入することができるでしょう。