ファクタリングの法改正の影響は?改正後のメリットについて紹介
目次
2020年の法改正は、ファクタリングに影響を与えました。
利用しやすくなったか気になる方もいるでしょう。
結論から述べると法改正の結果、売掛金の売却がスムーズに進みやすくなりました。
専門業者へ譲渡可能な債権が幅広くなったからです。
本記事ではファクタリング関連の法改正について、社会的影響を解説します。
ファクタリングの根拠法は民法第466条
もともとファクタリングの根拠法は、民法第466条です。
この法律では債権譲渡が原則可能になっています。
根拠法があるため、経営者は実質的にファクタリングを活用できるのです。
ファクタリングに特化した法律は、2024年7月時点で見られません。
しかし民法第466条によって、売掛金の取引が認められています。
これをビジネス化した形がファクタリングです。
法的根拠があるため、専門業者への売掛金の売却が可能になっています。
仮に民法第466条がなければ、売掛金の取引ができなかった可能性もあるのです。
多くの事業者が売掛金を換金できるのも、法的根拠のおかげです。
2020年の民法改正はファクタリングにいかなる影響を与えたか
法改正は時にファクタリングのあり方を変えます。
最近では2020年に本格的な法改正が行われ、売掛金の取引に関するルールが大きく変わりました。
具体的には、譲渡可能な債権が幅広くなったのです。
2020年の法改正について、主要なポイントを見ていきましょう。
譲渡禁止特約を受けた債権も譲渡可能に
2020年の法改正では、禁止特約のある債権も売却できるようになりました。
従来の民法では、譲渡禁止特約のある債権は、専門業者に売却できませんでした。
しかしルールが変わったことで、禁止特約の効力が弱まっています。
改正民法の第466条2項では、売掛先が債権の譲渡禁止を伝えた場合も、譲渡の効力を妨げられません。
つまり譲渡禁止特約のある売掛金の取引も有効です。
たとえば2社間ファクタリングを利用していれば、譲渡禁止を伝えた売掛先に知らせず、売掛金の売却ができます。
法改正の結果、譲渡禁止特約のある売掛金でも、ファクタリングは有効です。
ただし3社間ファクタリングでは、利用者と業者だけでなく、売掛先も契約対象です。
債権譲渡禁止を理由に売掛先が同意せず、契約不成立の場合もあります。
そのため譲渡禁止特約のある売掛金は、2社間契約で譲渡するのが理想です。
将来債権の規定の明文化
改正民法第466条6項で、将来債権の譲渡のルールが明文化されました。
将来債権とは、その時点で発生していないものの、将来発生する見込みのある債権です。
ファクタリングの利用者は法改正を受け、将来債権も売却しやすくなりました。
ほとんどの専門業者は改正前だと、発生済みの債権しか受け入れませんでした。
将来債権は発生前の権利なので、業者が取引をためらうことがありました。
しかし法改正によって、業者は発生前の債権も受け入れやすくなったのです。
以上から利用者は、取引前の売掛金も専門業者へ気軽に譲渡できます。
改正によって、今後は将来債権に対応可能な業者も増えるでしょう。
このような理由から、注文書や発注書によるファクタリングも活発化しそうです。
振興基準での努力義務にも影響
2020年の法改正は、振興基準での努力義務にも影響しそうです。
振興基準自体は、1971年3月12日に策定・公表されました。
親事業者や下請事業者が互いに守るべき基準で、下請中小企業振興法を根拠法としています。
その結果、親事業者と下請事業者の基本契約時には、以下の3つの特約が努力義務になりました。
1.売掛債権譲渡の円滑化
2.債権譲渡禁止特約解除の申し出の十分な尊重
3.下請事業者の債権譲渡の意思に対し、積極的な承諾に努めること
2020年の法改正では、譲渡禁止特約のある債権や、将来債権の譲渡が明文化されています。
上記の債権についても、振興基準が厳密に適用されるしくみです。
たとえば下請事業者が将来債権をファクタリングしたい場合、親事業者はその意思を十分に尊重し、承諾に努めなければなりません。
従来は下請事業者のファクタリング利用について、親事業者の妨害も想定されました。
しかし法改正の結果、債権譲渡に対する親事業者の介入の減少が期待されます。
これによりあらゆる企業が、ファクタリングを気軽に使いやすくなります。
法改正は資金繰り問題解決のため
2020年の法改正は、企業の資金繰り問題の解決が目的とされます。
改正前は多くの企業が、不動産を担保として融資を受けてきました。
しかし不動産は社会情勢により、資産価値が変動します。
売掛金と違って価値が変わりやすいので、融資計画に影響をおよぼしやすいのです。
そこで経済産業省は、ファクタリングの積極的な発信を始めました。
売掛金の譲渡なら、担保なしで資金調達できるからです。
2020年の法改正も、ファクタリングの社会的浸透を見据えたものと考えられます。
改正によって、売掛金の取引の理解度が高まりそうです。
経済産業省の働きかけにより、今後ファクタリングの需要拡大が想定されます。
民法改正でファクタリングの利用が容易に
民法改正の結果、多くの方がファクタリングを利用しやすくなりました。
譲渡可能な債権が広まったことで、資金調達のパターンが増えたのです。
民法改正のメリットについて、以下を見ていきましょう。
譲渡禁止特約の効力が実質的に弱まった
最初のメリットは、譲渡禁止特約の効力が弱まったことです。
ファクタリングで売却する売掛金は、特約の有無を問われなくなりました。
民法改正により、利用者はあらゆる売掛金を気軽に取引できます。
譲渡禁止特約の効力の弱体化は、ファクタリングに好影響をおよぼします。
仮に売掛先が売掛金の譲渡を知っても、取引の無効を主張できません。
民法第466条の2では、譲渡禁止特約があっても、ファクタリングの効力を打ち消せないからです。
従来は売掛先から譲渡禁止特約を言い渡されると、業者への売掛金の売却はできませんでした。
しかし特約の弱体化により、利用者は売掛金を資金調達に活かしやすくなりました。
売掛先が相手の債権譲渡の意思を尊重する形も、振興基準で努力義務になっています。
譲渡禁止特約の売掛金にも振興基準が適用されやすくなったため、利用者は気軽にファクタリングを使えます。
譲渡可能な売掛金が幅広くなった
次のメリットは、譲渡可能な売掛金が幅広くなった点です。
譲渡禁止特約のある売掛金だけでなく、将来債権も譲渡しやすくなっています。
手元に将来債権しかない場合も、ファクタリングの利用が可能です。
将来債権のポイントは、以下の2つです。
1.債権譲渡時に発生している必要はない
2.譲渡時に発生していないときは、発生時に譲受人が所有する
以上から将来債権をファクタリングすれば、取引成立時点で業者のものになります。
2020年の民法改正前は、将来債権の譲渡に関する法的根拠がありませんでした。
そのため業者が取引を断る形も想定されました。
しかし民法改正によって、将来債権の取引の活発化が予想されます。
ファクタリング利用をめぐるトラブルのリスクが低くなった
民法改正により、ファクタリングのトラブルのリスクが低くなりました。
たとえば譲渡禁止特約のある売掛金の譲渡も有効になっています。
改正前はこのような売掛金を譲渡すると、売掛先から訴えられる可能性がありました。
しかし改正民法第466条の2によると、譲渡禁止特約は売掛金の取引の効力を妨げません。
また将来債権の取引でも、トラブルが起きにくくなりました。
改正前は将来債権の譲渡の明文化がなく、健全な業者は扱いにくい状況でした。
そこで利用者は悪徳業者へ将来債権を譲渡し、法外な手数料や費用を求められることもあったでしょう。
しかし法改正の結果、健全な業者も将来債権を扱いやすくなりました。
このような背景から、人気業者が注文書や発注書を買い取るケースも増えています。
ルールが変わったため、多くの方が安心してファクタリングできるようになりました。
ファクタリング独自の法律は定められないまま
2020年に改正されたのは、あくまでも債権に関する法律です。
ファクタリングに特化した法律は、2024年7月時点でまだ定められていません。
そのため日本では、ファクタリングの法整備が不十分とも考えられます。
法整備がされていないため、多くの業者は業界内のガイドラインに応じて、売掛金を取引している状況です。
しかし一部業者が法の抜け穴をついて、悪質なサービスを行うかもしれません。
そのため悪質なファクタリング業者の規制が望ましいところです。
2024年7月時点も、ファクタリングは債権関連の法律を根拠に、取り扱い可能と認識されています。
しかしさらなる法整備が進めば、悪徳業者が規制され、多くの方が安心して売掛金を売却できるでしょう。
次回の法改正で、ファクタリング業界の改善が期待されます。
ファクタリングの法改正のまとめ
2020年の民法改正により、多くの方がファクタリングを利用しやすくなりました。
たとえば譲渡禁止特約のある売掛金も、専門業者に売却しやすくなっています。
注文書や発注書のような将来債権の譲渡も、改正法で明文化されました。
そのため発生前の債権も、専門業者に買い取ってもらいやすい状況です。
しかし悪徳業者に悩まされる方もいるため、さらなる法整備が望まれます。
それでも近年のファクタリングは、民法改正を通して、多くの方が利用しやすい状況です。
次回の法整備では、業界のさらなる改善が期待されます。