サービサーとは?ファクタリング会社との違いは?特徴を解説
目次
「ファクタリング」と「サービサー」の違いを理解するには、それぞれの定義と違いを明確にすることが必要です。
ファクタリングとサービサーは、一見似ているようで実は根本的な違いがあります。企業が直面する資金繰りの問題を解決するためには、これらのサービスの特徴を正確に理解し、自社の状況に最適な選択をすることが不可欠です。
この記事では、資金繰りの改善を目指すファクタリングと、債権回収が業務の中心であるサービサーの役割の違いを明らかにします。利用の目的や対象の債権、利用する企業、手数料の違いなどさまざまな視点から比較し、それぞれのサービスがどのようにリスク管理に役立つのかについて理解しましょう。
ファクタリングとサービサーの定義と違い
ファクタリングは、売掛債権を売却し早期に現金化する資金調達方法です。一方サービサーは、回収が何らかの理由で滞っている債権の管理を扱う、債権回収の専門会社です。金融機関などから債権の委託を受け、回収を代行する役目があります。
ファクタリング会社とサービサーには共通点もありますが、扱う債権の質が違います。
ファクタリングとは
ファクタリングは、企業が売掛債権を現金化する実用的な資金調達の手段として、広範囲にわたり活用されています。現金化までのスピードが速く、企業のキャッシュフローの改善と、事業運営の円滑化に大きな役割を果たすサービスです。
ファクタリングのメリットは、売掛金の未回収リスクが移転するため、企業が安心して利用できる点にあります。
さらにファクタリングは負債を増やすことなく現金を調達でき、企業の価値を下げずに企業の資金繰りを改善できます。
サービサーとは
サービサーは、銀行やカード会社などの金融機関のほか、リース会社などが抱える回収困難な債権の回収を行う会社です。主な目的は「債権を確実に回収し、企業のキャッシュフローを改善する」「企業の財政健全化と成長を支援する」ことにあります。
本来、債権回収業務は弁護士しかできませんでしたが、法律の改正により、認可された民間会社もできるようになりました。
サービサーは債権回収のプロであり、債権者と債務者双方と交渉を行い、最善の解決策を模索し、適切に法的な手続きを進めます。さらに債務者の返済能力を評価・判断し、適切な返済計画の策定も行います。
サービサーの利用により、債権者は回収が困難な債権を回収でき、企業のキャッシュフローを改善できます。サービサーの活用は、企業の財務状況を改善し、成長を支える土台を揺るぎないものとするのに役立ちます。
サービサーの利用目的
サービサーの目的は、貸し付けたお金や提供したサービスに対する対価を回収することが難しい場合に、債務者からの支払いを効率的かつ法に則った方法で回収することです。
サービサーは、不良債権を回収する技術と経験を持ちます。法的手続きや交渉に精通しており、貸主である企業が行うよりも効率的な債権回収ができます。
債権の回収は時間や専門的な知識が必要です。サービサーへの委託により、貸主は自社の本来の業務に集中できます。サービサーによって、貸主が行うよりも高い回収率を期待できるでしょう。
自社で債権回収を行う場合、人件費をはじめとしたコストがかかりますが、サービサーに委託するとこれらのコストを減らせます。また、債権回収を外部に委託することは、回収に伴うリスク(債務者とのトラブルや法的リスクなど)をサービサーに転嫁できます。
このように、サービサーの利用は貸主にとって多くの利点があることから広く活用されています。
サービサーの利用者
サービサーを利用する企業は、銀行や消費者金融、クレジットカード会社など、貸付業務を行う金融機関が中心です。そのほか取引先からの代金回収が困難な企業や医療機関や教育機関、不動産会社なども利用者に含まれます。
こうした企業は、返済が滞った債権の回収をサービサーに委託します。
医療機関では治療費などの未払金を回収するため、教育機関では学費の滞納がある場合、不動産会社では家賃滞納などで利用されることがあります。
サービサーは回収不能になるのを回避して、資金繰りを支える重要な役割を果たしているといえるでしょう。
ファクタリング会社とサービサーの違い
ファクタリング会社とサービサーの間には、目的や利用者、手数料などに違いがあります。
利用目的の違い
ファクタリング会社とサービサーは債権に関連するサービスを提供しますが、その目的と機能は違います。
ファクタリング会社は、利用企業が未回収の売掛金(健全な売掛金)を現金化するための会社です。売掛金をファクタリング会社に売却し、その代金を本来の入金日より先に企業が受け取ることで、資金繰りを円滑にできるサービスです。企業は運転資金の確保や流動性の向上を図れます。
一方のサービサーは、支払い(返済)が遅れている債権の回収が業務の中心です。
債権の回収は、時に企業が自らの力だけでは困難なこともあります。このような場合、サービサーに委託し回収を図ります。
ファクタリングが通常、債権が健全な段階で利用され、サービサーは債権に問題が発生した後に利用されることが多いといえるでしょう。
利用者の違い
ファクタリングの利用者は、短期的な資金調達を必要とする企業です。
ファクタリングは、一般的に以下のような目的がある場合に利用されます。
・資金繰りを改善したい
・運転資金を迅速に確保したい
・成長投資のために今すぐに資金が必要
・売上の拡大とともに売掛金が増加し、早く現金化したい
・クレジット管理や債権回収の手間を省きたい
一方、サービサーの利用者は、以下のような状況の企業が含まれます。
・支払いが滞っている債権の回収に困っている
・回収が困難な不良債権を抱えている
・法的な手続きをとることなく、専門家に債権回収を委託したい
・従業員に債権回収業務を行わせることなく、その業務を外部にアウトソーシングしたい
・長期間にわたり回収できずにいる古い債権を処理したい
ファクタリングは、健全な債権(売掛金)を資金化することで、企業の財務状況を改善することが目的です。対してサービサーは、すでに支払いが滞っている、あるいは回収が困難な債権に対して専門的な手段で回収を図ることが目的です。どちらも企業の財務戦略の一部ですが、目的には大きな違いがあるといえるでしょう。
ファクタリングは、早急に資金を調達しなければならない状況にある中小企業あるいは個人事業主が主な利用者です。ファクタリングは借入金を増やさずに資金調達が可能で、企業の信用力および評価が下がりません。
銀行をはじめ、金融機関は金銭の貸し付けや立替えを顧客に提供しています。その際、返済されない債権が発生することはめずらしくありません。
サービサーが扱う債権は、こうした貸し付けやクレジット債権が多くを占めます。
手数料の違い
ファクタリングおよびサービサーを利用する場合、手数料の計算方法とその違いを理解する必要があります。
ファクタリングの手数料率は、一般的に売掛金の金額や回収できる期間、リスクに基づいて設定されます。サービサーでは「成功報酬型」が主流で、回収に成功した債権の一部が手数料として徴収されます。
このため、ファクタリングの手数料が事前に算出できるのに対し、サービサーの場合は回収の結果により変動します。
手数料の違いを把握することは、予算計画や債権回収の戦略を立てる上で大切です。
ファクタリングおよびサービサーの手数料を比較する場合は、安さだけではなく、サービス内容にも目を向けることが求められます。
サービサーを利用する場面とは?
サービサーを利用するのは、主に貸倒れリスクを抱えている金融機関やクレジット会社、支払いが滞っている債権を多く抱えている企業です。
サービサーの取り扱う債権は、以下のような債権が対象です。
・支払期日が過ぎても支払われないローンの月々の支払い
・元の債権者が回収を諦めた債権
・他の企業や金融機関から割引価格で買い取った債権
・訴訟によって確定した債権
・個人向けの消費者金融債権
・クレジットカード、自動車ローンの未払い金
・企業向けのローンや信用供与から生じる債権
・住宅ローンの支払いが滞った場合の債権
金額、支払い時期、支払い方法、受取人などが明確に特定されている「特定金銭債権」が主にサービサーが回収する債権です。
この種の債権は、債権者が特定の債務者に対して、確定した金額の支払いを請求できる法的な権利を持っている状態を表しています。
そのため一般的な企業が、回収期限がかなり過ぎた売掛金があって回収したい場合、サービサーを利用する機会はなく、直接弁護士に依頼することになるでしょう。
サービサーによる回収
サービサーによる債権回収は、複数の段階を経て行われます。
・債権の譲渡
債権者(クレジット会社や金融機関など)は、回収が困難と判断した債権をサービサーに譲渡します。売却によって一括で行われることも、回収成功に応じた手数料で行われることもあります。
・債権の評価
サービサーは譲渡された債権の詳細を分析し、債務者の支払い能力や債権の性質を評価し、回収戦略を立てるための基礎情報を収集します。
・債務者へ通知
サービサーは債務者へ、債権が移行したことを通知します。債務者は、サービサーへ支払うように求められます。
・交渉と和解
サービサーは債務者と直接交渉を行い、支払いプランの設定や一部の債務の削減を提案することがあります。和解により、債務者が支払いを再開することを目指します。
・法的手続き
交渉による解決が困難な場合、サービサーは法的手続きを開始することがあります。これには、裁判所に支払い命令を申し立てたり、債務者の資産を差し押さえたりといったことが含まれます。
・強制執行
裁判所からの支払い命令を得た後、サービサーは債務者の資産を強制的に売却して債権を回収できます。不動産や車両など、債務者の資産の差し押さえが含まれることもめずらしくありません。
・債権の管理とモニタリング
債権が回収されるまで、サービサーは債権の管理と監視を続けます。定期的な債務者の経済状況の再評価や、回収戦略の調整などが行われます。
サービサーは、債務者の権利を尊重し、法律の枠内で債権回収を行わなければなりません。債務者に対する不当な圧力や違法な回収手法は禁止されています。また、サービサーは債務者からの苦情や法的な対応に直面することがあるため、適切な手続きが要求されるでしょう。
サービサーとは?ファクタリング会社との違いは?それぞれの特徴を解説まとめ
ファクタリングにおいても、サービサーが行う債権回収も、共通しているのは債権を取り扱う点です。しかし、この2つの間には違いがあります。ファクタリングが健全な売掛債権を現金化して資金調達するのに対し、サービサーはリスクが高い不良債権の回収が目的です。
サービサーのユーザーは、債権を回収してほしい企業です。
サービサーが対象とするのは「特定金銭債権」であり、支払いが滞っているローンやクレジットの支払いといった債権です。そのため、一般的な企業がサービサーを利用する機会はほとんどないといってよいでしょう。