助成金・補助金情報

【働き方改革推進支援助成金】4つのコース内容と活用事例について解説

働き方改革推進支援助成金は、その名の通り働き方改革に取組む企業を支援する制度です。
近年、日本では働き方改革が推奨されていますが、実際のところ働き方改革に取組む企業の負担は大きいです。
そこで働き方改革推進助成金では、労働時間の削減や有給休暇の促進など、働き方改革に取組む企業の負担を軽減するべく、助成金を支給しています。
働き方改革推進支援助成金の要件を満たすことができれば、本来よりも少ない負担で働き方改革に取組むことができます。
本記事では、働き方改革推進支援助成金のコース内容と活用事例について解説していきます。

働き方改革推進支援助成金とは

働き方改革推進支援助成金は、さまざまな形で働き方改革に取組む中小企業を助成する制度です。
もともとは「時間外労働等改善助成金」として運営されてきましたが、2020年度より名称が「働き方改革推進支援助成金」に変更され、複数のコースが設けられるようになりました。
働き方改革推進支援助成金の概要や受給要件、助成金額等は、各コースによって異なります。
活用を検討されている方は、これから解説するコース内容や受給要件等を参考にし、自社に適したコースを見つけていきましょう。

働き方改革推進支援助成金のコース内容

働き方改革推進支援助成金には以下の4つのコースがあります。
・労働時間短縮・年休促進支援コース
・業種別課題対応コース
・勤務間インターバル導入コース
・団体推進コース
本章では以上のコースそれぞれについて詳しく解説していきます。
助成対象となる事業主や助成対象となる取組みが異なるので、最後までお読みいただきそれぞれのコースの概要について理解を深めていきましょう。

労働時間短縮・年休促進支援コース

労働時間短縮・年休促進支援コースは、労働時間の短縮や年次休暇・特別休暇の取得促進に取組む中小企業事業主を助成する制度です。

助成対象となる事業主

本コースの助成対象は、以下の全てに当てはまる中小企業事業主です。

・労働者災害補償保険の適用事業主
・交付申請時点で「成果目標」の設定に向けた条件を満たしている
・交付申請時点で年5日の年次有給休暇の取得に向けて就業規則等を整備している

ここでいう中小企業事業主とは、以下の資本金又は労働者数に当てはまる中小企業の事業主のことを指します。

・小売業(飲食店含む):(資本金)5,000万以下もしくは(労働者数)50人以下
・サービス業:5,000万円以下もしくは100人以下
・卸売業:1億円以下もしくは100人以下
・その他の業種:3億円以下もしくは300人以下

助成対象になる取組み

本コースで助成金を受給するためには、以下のうちいずれか1つ以上の取組みを実施する必要があります。

1.労務管理担当者の研修
2.労働者に対する研修
3.外部専門家によるコンサルティング
4.就業規則等の作成・変更
5.人材確保に向けた取組み
6.労務管理用ソフトウェアの導入・更新
7.労務管理用機器の導入・更新
8.デジタル式運行記録計(デジタコ)の導入・更新
9.労働能率の増進に資する設備・機器などの導入・更新

※原則PC・タブレッド・スマートフォンは対象外

成果目標の設定

上記の助成対象になる取組みは、以下の成果目標1~3のいずれかの達成を目指して実施する必要があります。

1.36協定に基づき、時間外・休日労働時間数を縮減し、月60時間以下、または月60時間を超え月80時間以下に上限を設定し、労働基準監督署に届け出を提出する
2.年次有給休暇の計画的付与の規定を新たに導入する
3.時間単位の年次有給休暇の規定を新たに導入し、かつ特別休暇(病気休暇・教育訓練休暇・ボランティア休暇・新型コロナウイルス感染による休暇・不妊治療のための休暇・時間単位の特別休暇)の規定をいずれか1つ以上新たに導入する

上記に加え「対象労働者の時間当たりの賃金額を3%引き上げること」を成果目標に追加することもできます。

助成金額

本コースの助成金額は、上記で紹介した成果目標の達成状況に応じて変動します。
助成金額は以下のいずれか低い方になります。
・成果目標1~3の上限額および賃金加算額の合計額
・対象経費の合計額×補助率3/4(※)
※労働者数が30人以下かつ、助成対象となる取組みの6~9を実施する場合。またその所要額が30万円を超える場合は4/5の補助率になる

成果目標ごとの上限額

本コースでは成果目標1~3それぞれに上限額が設定されています。
・成果目標1:100万円~200万円
・成果目標2:25万円
・成果目標3:25万円

なお、賃金額の引上げを成果目標に加えた場合は、実際に賃上げを実現した労働者数に応じて以下の額が加算額として支給されます。
ちなみに賃上げ労働者数の上限は30人となっています。

常時使用する労働者が30人以上の中小企業事業主
【3%以上賃上げした場合の加算額】
・1~3人:15万円
・4~6人:30万円
・7~10人:50万円
・11~30人:1人当たり5万円(上限150万円)

【5%以上賃上げした場合の加算額】
・1~3人:24万円
・4~6人:48万円
・7~10人:80万円
・11~30人:1人当たり8万円(上限240万円)

常時使用する労働者数が30人以下の中小企業事業主
【3%以上賃上げした場合の加算額】
・1~3人:30万円
・4~6人:60万円
・7~10人:100万円
・11~30人:1人当たり10万円(上限300万円)

【5%以上賃上げした場合の加算額】
・1~3人:48万円
・4~6人:96万円
・7~10人:160万円
・11~30人:1人当たり16万円(上限480万円)

労働時間短縮・年休促進支援コースの活用事例

A社は利益率を向上させるために、無駄な業務や経費の削減を検討していました。
しかし、どの業務・経費が無駄なのかを判断できず、動けずにいました。
そこで働き方改革推進支援助成金の「労働時間短縮・年次促進支援コース」の助成対象となる取組みの一つである「外部専門家によるコンサルティング」を活用することに。
外部専門家のコンサルティングで無駄な業務・経費を削減でき、利益率の向上を実現しました。

業種別課題対応コース

業種別課題対応コースは、2024年4月1日から時間外労働の上限規制が適用された建設業・運送業・病院等・砂糖製造業において、時間外労働の削減や週休2日制の推進、勤務間インターバル制度の導入等に取組む中小企業事業主を助成する制度です。

助成対象となる事業主

本コースの助成対象は、以下の全てに当てはまる中小企業事業主です。

・労働者災害補償保険の適用事業主
・交付申請時点で成果目標1~4の設定に向けた条件を満たしている
・交付申請時点で年5日の年次有給休暇の取得に向けて就業規則等を整備している
・常時使用する労働者数が300人以下、もしくは資本金または出資額が3億円以下(病院は5,000万円以下)の中小企業事業主で、建設業・運送業・病院等・砂糖製造業のいずれかの業種であること

助成対象になる取組み

助成対象になる取組みは前項「労働時間短縮・年休促進支援コース」と同様です。

成果目標の設定

上記の助成対象になる取組みは、以下の成果目標1~6のいずれかの達成を目指して実施する必要があります。

1.36協定に基づき、時間外・休日労働時間数を縮減し、月60時間以下または月80時間以下に上限を設定し労働基準監督署に届け出を提出する
2.年次有給休暇の計画的付与の規定を新たに導入する
3.時間単位の年次有給休暇の規定を新たに導入し、かつ特別休暇(病気休暇・教育訓練休暇・ボランティア休暇・新型コロナウイルス感染による休暇・不妊治療のための休暇・時間単位の特別休暇)の規定をいずれか1つ以上新たに導入する
4.9時間以上の勤務間インターバル制度の規定を導入すること
5.4週5休から4週8休以上の範囲で所定休日を増加させること(建設業が選択可)
6.医師の働き方改革推進に関する取組みとして以下を実施すること(病院等が選択可)
・労務管理体制の構築等
・医師の労働時間の実態把握と管理

助成金額

本コースの助成金額は、上記で紹介した成果目標の達成状況に応じて変動します。
助成金額は以下のいずれか低い方になります。
・成果目標1~6の上限額および賃金加算額の合計額
・対象経費の合計額×補助率3/4(※)
※労働者数が30人以下かつ、支給対象の取組みで6~9のいずれかを実施する場合で、その商用額が30万円を超える場合の補助率は4/5

成果目標ごとの上限額

本コースでは成果目標1~6それぞれに上限額が設定されています。

・成果目標1:150万円~250万円
・成果目標2:25万円
・成果目標3:25万円
・成果目標4:建設業及び砂糖製造業(50万円~120万円)、運送業(75万円~170万円)、病院等(60万円~170万)
・成果目標5:100万円(1日増加につき25万円)
・成果目標6:50万円

賃金引上げによる加算額は「労働時間短縮・年休促進支援コース」と同様です。

業種別課題対応コースの活用事例

建設業を営むA社は測量作業と重機操作を効率化し、労働時間の削減を図りたいと考えていました。
しかし、効率化のための機器等を購入するためには多大な費用が発生するため、なかなか計画を実行できずにいました。
そこで労働時間の削減等に取組む中小企業事業主を支援する働き方改革推進支援助成金の「業種別課題対応コース」を活用することに。
助成金を活用して測量杭打機と重機用センサーユニットを導入し、1日当たりの労働時間の削減を実現しました。

勤務間インターバル導入コース

勤務間インターバル導入コースは、その名の通り勤務間インターバル制度の導入に取組む中小企業事業主を助成する制度です。
勤務間インターバルとは、勤務終了後から次の勤務開始までに一定時間の「休息」を設けることで、労働者の休息時間の確保や健康保持を図る目的で、2019年から努力義務化されている制度です。

助成対象となる事業主

本コースの助成対象は、以下の全てに当てはまる中小企業事業主です。

・労働者災害補償保険の適用事業主である
・次の3つのうちいずれかに該当する事業所を有する事業主であること
1.勤務間インターバルを導入していない事業所
2.既に休息時間9時間以上の勤務間インターバル制度を導入している事業所であり、対象となる労働者が事業所に所属する労働者の半数以下である事業所
3.既に勤務間インターバル制度を導入しているものの、休息時間が9時間未満となっている事業所
・交付申請時点で36協定が締結・届け出されていること
・過去2年間に月45時間を超える時間外労働の実態がある
・交付申請時点で年5日の年次有給休暇の取得に向けて就業規則手等を整備していること

助成対象になる取組み

助成対象となる取組みは、「労働時間短縮・年休促進支援コース」と同様です。

成果目標の設定

上記の助成対象になる取組みは、以下の成果目標の達成を目指して実施する必要があります。

・休息時間が「9時間以上11時間未満」または「11時間以上」の勤務間インターバルを導入し、定着を図ること

上記に加えて、労働者の時間当たりの賃金を3%以上引上げることを成果目標に加えることも可能です。

助成金額

本コースの助成金額は、上記で紹介した成果目標の達成状況に応じて変動します。
基本的な助成金額は以下の通りです。

・対象経費の合計額×3/4(※)
※労働者数が30人以下かつ、助成対象となる取組みの6~9を実施する場合で、その所要額が30万円を超える場合の補助率は4/5

上限額

本コースの助成金額には以下のように上限額が設けられています。

・50万円~120万円

賃金引上げによる加算額は「労働時間短縮・年休促進支援コース」と同様です。

勤務間インターバル導入コースの活用事例

A社は勤務間インターバル制度を導入するために業務の無駄を無くし、効率化を図ろうと考えました。
自社の話し合いで様々な意見が出ましたが、より効果的な施策を実施するべく、働き方改革推進支援助成金の「勤務間インターバル導入コース」を活用して外部専門家によるコンサルティングを受けることに。
結果として、外部専門家からのアドバイスを活かして、効率的な業務が行える体制を確立しました。

団体推進コース

団体推進コースは、中小企業事業主の団体が、傘下の労働者を雇用している事業主の労働条件等の改善のために、時間外労働の削減や賃金引上げに向けた取組みを実施した場合に、事業主団体を助成する制度です。

助成対象となる事業主

本コースの助成対象は、事業主団体等は3事業主以上、共同事業主においては10事業主以上で構成されており1年以上の活動実績がある以下のいずれかに該当する事業主団体です。

・事業主団体
1.法律で規定する団体等(事業協同組合・商工組合など)
2.鹿児島県及び沖縄県における砂糖を製造する事業に関連する団体(日本甘藷糖工業会など)
3.上記以外の事業主団体(一定の要件あり)

・共同事業主

助成対象になる取組み

本コースで助成金を受給するためには、以下のうちいずれか1つ以上の取組みを実施する必要があります。

1.市場調査
2.新ビジネスモデルの開発・実験
3.材料費・光熱費・在庫等の費用の低減実験
4.下請取引適正化への理解促進等
5.販路の拡大の実現を図るための展示会開催及び出展
6.好事例の収集・普及啓発
7.セミナー開催
8.巡回指導・相談窓口設置等
9.団体に所属する事業主が共同で利用する労働能率の増進に資する設備・機器の導入・更新
10.人材確保に向けた取組み

成果目標の設定

上記の助成対象になる取組みは、以下の成果目標の達成を目指して実施する必要があります。

・助成対象となる取組み内容について、事業主団体が計画で定める時間外労働の削減又は賃金引上げに向けた改善事業の取組みを行い、団体に所属する事業主の1/2以上に対してその取組または取組結果を活用すること

助成金額

本コースの助成金額は、以下のいずれか低い方の金額となります。

・対象経費の合計額
・総事業費から収入額を控除した額
・上限額500万円(都道府県単位または複数の都道府県単位で構成する事業主団体等に該当する場合の上限額は1,000万円)

団体推進コースの活用事例

事業主団体Aは所属する事業主に対して「働き方改革」の取組みを周知したいという課題を抱えていました。
そこで働き方改革推進支援助成金の「団体推進コース」を活用して、労務管理に関わるセミナーを開催することに。
セミナーを開催した結果、36協定の作成手順や労働時間管理の方法を教示することができました。
また、セミナー後に相談しやすい環境を整えるために、相談窓口を設置し、所属事業主の取組みを支援しました。

働き方改革推進助成金の申請方法

働き方改革推進助成金を実際に活用するためには、これから解説する内容に沿って申請や手続きを行っていく必要があります。

働き方改革推進助成金の申請手順

働き方改革推進助成金の申請は以下の手順で行います。

1.交付申請書を労働局雇用環境・均等部に提出する
2.交付決定通知を受けた後に、提出した計画に沿った取組みを実施する
3.計画完了後、労働局に支給申請を提出する

働き方改革推進助成金の申請時の注意点

働き方改革推進助成金の申請を行う際は、提出書類の漏れや期限に注意しましょう。
提出書類に漏れや遅れがあると、申請の締め切りに間に合わず活用できなくなる可能性があります。
また、提出書類はコースごとに異なるので、申請前に公募要領をよく確認するようにしてください。

働き方改革推進助成金:2024年度の受付け

働き方改革推進助成金は2024年度も実施されています。
交付申請受付けの期限は、2024年11月29日までとなっています。
ただ、国の予算の関係上、11月29日よりも前に受付けを締め切る場合があるので、活用を検討されている方は早めに申請手続きを行うようにしましょう。

【働き方改革推進支援助成金】4つのコース内容と活用事例について解説のまとめ

今回は、働き方改革推進助成金のコース内容や活用事例について解説させていただきました。
働き方改革推進助成金には4つのコースがあり、それぞれ目的や助成金額等が異なります。
活用する際はコース内容や対象となる取組み等を理解し、自社に最適なコースを選ぶことが重要です。
上手く活用できれば、雇用する労働者の意欲向上や業務効率化による生産性の向上に期待できます。
また、「働き方改革に取組む企業」という良い印象を与えることができるので、取引先の開拓や採用にも役立てることができるでしょう。
助成対象となる事業主の要件を満たせている企業の方は、ぜひ働き方改革推進助成金の活用を検討してみてください。