【両立支援等助成金】出生時両立支援コースの内容と活用する際の注意点について解説
目次
両立支援等助成金は、仕事と家庭の両立に向けた環境整備に取組む事業主を助成する制度です。
状況に応じて複数のコースが設けられており、様々な取組みに対して助成を受けることができます。
今回解説するのは、雇用する男性に対して育児休業に関する取組みを実施している事業主を助成する「出生時両立支援コース」です。
本コースを活用すれば、雇用する男性に対して育児休業を取得させる際の負担を軽減することができます。
本記事では、「出生時両立支援コース」の内容と活用する際の注意点について解説していきます。
両立支援等助成金「出生時両立支援コース」とは
「出生時両立支援コース」は、雇用する男性が育児休業を取得しやすいように環境の整備に取組む事業主を助成する制度です。
仕事と家庭の両立に関する事業主の取組みを促し、労働者の雇用の安定を目的としています。
本コースには3つの助成金があり、取組み内容に応じた助成金を受給できます。
助成金を受給しながら雇用する男性の雇用安定化を図れるので、非常にメリットが大きいといえるでしょう。
「出生時両立支援コース」の内容
ここからは本記事の本題である「出生時両立支援コース」の内容について解説していきます。
本コースを活用するためには、助成対象となる環境整備の実施や一定の要件を満たす必要があるので、これから解説する内容に関してはしっかりと理解しておきましょう。
受給要件
本コースには、加算措置も含め3種類の仕組みがあります。
第1種は、環境整備と雇用する男性に育児休業を取得させた場合に、助成金を受給できる仕組みです。
第1種の枠組みの受給要件は以下の通りです。
・男性労働者が育児休業を取得しやすい環境整備を複数実施していること
・子の出生後8週間以内に連続5日以上の育児休業を取得した男性労働者がいること
・育児休業制度に関する内容を就業規則や労働協約に定めていること
第2種は、本助成金制度の申請者にあたる事業主の事業所において、育児休業を取得する男性が増加した場合に助成金を受給できる仕組みです。
もとの取得率と事業年度ごとの取得率を比較して、一定の上昇が認められた場合に対象となります。
第2種の枠組みの受給要件は以下の通りです。
・第1種の助成金を受給していること
・育児・介護休業法に定める環境整備の措置を複数実施していること
・育児休業取得者の業務を代替する労働者の業務見直しに係る規定等を策定し、業務体制の整備をしていること
・第1種の助成金を申請してから3事業年度以内に、男性労働者の育児休業取得率の数値が30ポイント以上上昇していること
・育児休業を取得した男性労働者が第1種申請の対象となる労働者の他に2人以上いること
助成金額
本コースの具体的な助成金額は以下の通りです。
【第1種】
第1種の枠組みの助成金額は20万円です。
ただし、2人~3人目は10万円です。
【第2種】
第2種の枠組みで受給できる助成金額は、休業取得率の数値が30ポイント以上上昇した事業年度によって異なります。
第1種の受給後、
・1事業年度以内に30ポイント以上:60万円
・2事業年度以内に30ポイント以上:40万円
・3事業年度以内に30ポイント以上:20万円
【加算額】
本コースにはいくつかの加算措置が設けられており、それらの措置を実施した場合加算額を受給できます。
1.第1種:1人目で環境整備措置を4つ以上実施した場合:10万円
2.第2種:第1種受給後にプラチナくるみん認定事業主であった場合:15万円
3.育児休業に関する情報を「両立支援のひろば」のサイト上で公表した場合:2万円
申請の流れ
本コースを活用する際の申請の流れは以下の通りです。
1.支給申請書の提出
2.支給申請の受付
3.支給決定通知
本コースは、雇用する男性の休業期間終了後に支給申請を行う流れとなっています。
第1種の申請期間は、申請対象となる期間の終了日の翌日から起算して2ヵ月以内です。
複数回に分割して取得する場合は、受給要件を満たした期間の翌日から申請期間がスタートします。
例えば、1回目で4日、2回目で5日を取得した場合、2回目の終了日の翌日から起算して2ヵ月以内に支給申請を行う必要があります。
申請先は、人事労務管理の機能を有する部署が所属する事業所を管轄している労働局です。
支給申請を行う際は、支給申請書とあわせて支給要件確認申立書、環境整備の措置を実施した日付が分かる書類などを提出しなければいけません。
支給申請書は厚生労働省のホームページからダウンロードできます。
一方、第2種の申請期間は、受給要件を達成した事業年度の翌事業年度の開始日から起算して6ヵ月以内となっています。
第1種と第2種では申請期間が異なるので、注意が必要です。
また、支給申請を郵送で行う場合、消印の日付が申請期間内であっても、労働局への到着日が申請期間を経過していた場合、申請期間内に申請されたとは認められないため、申請期間について余裕を持って行動するようにしましょう。
「出生時両立支援コース」を活用する際の注意点
本コースは、雇用する男性に対して仕事と家庭の両立に関する取組みを行う予定がある事業主にとって、非常にメリットのある制度です。
しかし、実際に活用する際は以下の点に注意する必要があります。
これから本コースの活用を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
育児休業期間に連続5日間以上の休業を取得させなければいけない
育児休業の取得方法は、まとまって長期間取得する、短期間を複数回取得するなど様々ですが、本コースの受給要件を満たすためには、期間中に連続5日以上を取得させなければいけません。
もし計1ヵ月間を取得させたとしても、その中に5日以上連続する休業がなければ、本コースの助成金を受給することができないのです。
本コースを活用する際は、対象労働者に対して連続5日以上を取得させないといけないことを覚えておきましょう。
育児休業に関する情報公開は採用に悪影響を及ぼす可能性がある
本コースの加算措置には「育児休業に関する情報公開」があります。
自社の情報を公開すれば2万円の加算額を受給できますが、情報公開が採用に悪影響を及ぼす可能性も懸念しなければいけません。
例えば、これまで雇用する労働者に対して育児休業を取得させておらず、実績が少ない場合は今後結婚や出産を検討している方からの応募はすくなくなってしまうでしょう。
しかし、これまで積極的に取得させてきた場合は、逆に結婚や出産を検討している方からの応募が増加する可能性も考えられます。
このように、情報公開は自社の状況に応じて採用に影響を与えるため、リスクを考慮したうえで行うようにしましょう。
「出生時両立支援コース」を活用するメリット
上記で活用する際の注意点について述べましたが、本コースは事業主にとって非常にメリットがある制度です。
金融機関からの融資と異なり、受給したお金は返済する必要がないので、資金不足に陥っている事業主の方でも安心して活用することができます。
本章では、出生時両立支援コースを活用するメリットについて解説していきます。
会社の評価を高めることができる
本コースを活用して育児をしながらでも働き続けられる環境を整えることができれば、会社の評価を高めることができます。
というのも、昨今の日本では少子高齢化の影響もあり「育児休業を取得させてくれる会社=優良企業」というイメージが定着しつつあります。
逆に育児休業に対して消極的な企業は、業績がどれだけ素晴らしくても良いイメージを得ることは難しい状況となってきています。
従業員の離職率低下につながる
男性も育児に参加することが当たり前となってきた昨今では、仕事との両立が可能な職場を模索する人も少なくはありません。
場合によっては、仕事との両立が難しいという理由で雇用する男性が離職してしまうケースもあります。
しかし、本コースを活用して仕事との両立が可能な環境を整えれば、おのずと従業員の離職率を低下させることができます。
また、本コースを通じて会社が育児休業の取得に対して前向きであるという意向を従業員に示すことができれば、職場の同僚や上司の目を気にせずに育児等との両立を考えることができます。
現状子を持つ予定がない従業員に関しても、両立が可能な体制が整えられていることは、安心材料となるでしょう。
人材確保につながる
会社に仕事と生活を両立できる支援体制が整っていることは、人材を募集する際に大きなアピールポイントとなります。
近年、仕事とプライベートを両立するために「週休3日制」が導入されるなど、ワークライフバランスが重視される時代になりつつあります。
その中で仕事と育児等を両立できる会社の環境は、求職者から重宝される存在となるでしょう。
【両立支援等助成金】出生時両立支援コースの内容と活用する際の注意点について解説のまとめ
今回は、出生時両立支援コースの内容と活用する際の注意点について解説させていただきました。
本コースは育児休業の取得を検討している男性労働者を雇用する事業主にとって非常にメリットがある制度です。
育児休業を取得させることで助成金を受給できることはもちろん、育児休業を取得させる対象労働者の離職率を軽減することにもつながります。
本コースの活用を検討されている方は、ぜひ本記事を参考にしてください。