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【両立支援等助成金】介護離職防止支援コースの内容と活用する際の注意点について解説

近年、日本では少子高齢化が著しいスピードで進行しています。
厚生労働省の見解では、2055年までに全人口に占める65歳以上の高齢者人口の割合が40%に達するとされており、介護に関する悩みを抱える若者が急増することが予測されます。
このような悩みを抱える日本において、仕事と介護の両立はもはや避けられません。
それと同時に、企業は両立するための環境整備を考えていく必要性があるでしょう。
今回は、「介護離職防止支援コース」について解説していきます。
コース内容だけでなく、活用する際の注意点についても解説していきますので、ぜひ参考にしてください。

介護離職防止支援コースとは

介護離職防止支援コースとは、仕事と家庭の両立に関する環境整備を実施する事業主を対象とする「両立支援等助成金」の6つあるコースのうちの1つです。
仕事と介護の両立支援を目的としており、環境整備を実施した事業主に対して助成をしています。
昨今の日本では少子高齢化が深刻な問題となっています。
2022年時点の調査結果によると、家族の介護をしている人は人口全体の6.1%となっています。
少子高齢化に関しては、今後しばらくの間進行していくと予測されており、家族介護の人口も増加していくことが予想されています。
家族介護の人口が増加するということは、雇用する従業員の中で仕事との両立を余儀なくされる人が増えるということです。
両立が難しい会社では従業員の不満が増え、離職者が出ることになるでしょう。
そのため、今後従業員を抱える事業主は両立できる職場環境を整えていく必要があります。
その際に活用できるのが「介護離職防止支援コース」です。
国から助成金の支給を受けながら両立に関する取組みを進めていくことができます。
詳しい内容については以下で解説するので、ぜひ参考にしてください。

介護離職防止支援コースの内容

ここからは本記事の本題である本コースの内容について解説していきます。

助成金の種類

本コースには以下の3種類の助成金があります。
1.介護休業
2.介護両立支援制度
3.業務代替支援加算
4.個別周知・環境整備加算

「介護休業」は介護支援プランを作成し、休業を取得させた後に職場復帰した人が出た場合に受給できる助成金です。
介護支援プランとは休業の取得を検討している従業員が円滑に休業・職場復帰を行えるように事業主が作成する計画書のことです。
「介護両立支援制度」は介護支援プランに基づき、仕事との両立に資する制度の利用者が現れた場合に受給できる助成金です。
「業務代替支援加算」は1の介護休業の取得者が行っていた業務を遂行するために、代替要員の新規採用または業務を代替する従業員に手当支給等を行った場合に受給できる助成金です。
代替要員の新規採用に関しては、派遣社員でも可能です。
「個別周知・環境整備加算」は1または2の対象となる従業員に対する個別周知及び介護と両立をしやすい環境整備を行った場合に受給できる助成金です。

受給要件

本コースの受給要件は、上記で解説した助成金の種類によって異なります。
それぞれの受給要件は以下の通りです。

1.介護休業(休業取得時)
・介護支援プランに基づいて従業員の休業取得・職場復帰を支援するという方針を周知していること
・本コースの対象となる従業員と面談等を行いその内容を記録したうえで、介護支援プランを作成すること
・介護支援プランに基づき、業務の整理・引継ぎをしていること
・本コースの対象となる従業員が合計5日以上の介護休業を取得していること
・介護休業に関する制度と所定労働時間の短縮等の措置を労働協約または就業規則に定めていること
・本コースの対象となる従業員を休業開始日から支給申請日までの間、雇用保険被保険者として継続的に雇用していること

2.介護休業(職場復帰時)
・本コースの対象となる従業員が職場復帰した際、フォロー面談を行い記録すること
・本コースの対象となる従業員が職場復帰した際に、原則として休業前に行っていた職務に復帰させること
・本コースの対象となる従業員を職場復帰した日から3ヵ月以上・支給申請日まで雇用保険被保険者として継続的に雇用していること

3.介護両立支援制度
・介護支援プランに基づいて従業員の休業取得・職場復帰を支援するという方針を周知していること
・本コースの対象となる従業員と面談等を行いその内容を記録したうえで、介護支援プランを作成すること
・介護両立支援制度に関する内容を労働協約または就業規則に定めていること
・本コースの対象となる従業員が介護両立支援制度を利用していること
・本コースの対象となる従業員を制度利用開始日から支給申請日までの間、雇用保険被保険者として1ヵ月以上継続的に雇用していること

助成金額

本コースの助成金額は上記で解説した助成金の種類によって変わります。

1.介護休業(休業取得時):30万円
2.介護休業(職場復帰時):30万円
3.介護両立支援制度:30万円

それぞれ一年度5名まで支給の対象となります。

また、「業務代替支援」「個別周知・環境整備」の加算措置を実施した場合、以下の加算額を受給できます。

1.業務代替え支援:新規雇用(20万円)、手当支給(5万円)
2.個別周知・環境整備:15万円

本コースの対象となる従業員が介護休業中に代替要員を新規雇用(派遣社員含む)した場合は20万円、在職している他の社員にカバーしてもらった場合は5万円の加算額を受給できます。

支給申請期間

補助金・助成金を活用する際は、厚生労働省が定める支給申請期間までに支給申請を行わなければいけません。
支給申請期間内に申請を完了できなければ、受給要件を満たしていたとしても支給対象外となってしまう可能性があるため、注意が必要です。
本コースを活用する際の支給申請期間は多少複雑になっていますので、理解を深めておくようにしてください。
本章では、助成金の種類ごとの支給申請期間について解説していきます。

介護休業(休業取得時)

介護休業(休業取得時)の支給申請期間は、対象となる休業取得日数が合計5日を経過する日の翌日から起算して2ヵ月以内です。
例えば、7/1より休業を開始し、7/5に取得日数が5日に到達した場合、7/6~9/5が支給申請期間となります。

介護休業(職場復帰時)

介護休業(職場復帰時)の支給申請期間は、休業が終了した日の翌日から起算して3ヵ月が経過する日の翌日から起算して2ヵ月以内です。
例えば、5/20に休業の終了日を迎えた場合、3ヵ月を経過する日は8/20となります。
支給申請期間は、3ヵ月を経過する日の翌日からスタートし2ヵ月以内となっているので、8/21~10/19が支給申請期間となります。

介護両立支援制度

・介護両立支援制度の支給申請期間は、実施する制度内容によって異なります。
・所定外労働の制限
・時差出勤
・深夜業の制限
・短時間勤務
・介護のための在宅勤務
・介護のためのフレックスタイム

上記の制度を実施した場合の支給申請期間は、本コースの対象となる従業員による両立支援制度の利用日数が合計20日を超える日の翌日から起算して、さらに1ヵ月を経過する日の翌日から2ヵ月以内です。
例えば、8/11に制度の利用日数が合計20日に到達した場合、8/12から起算して1ヵ月を経過する日は9/11となります。
支給申請期間はその翌日の9/12からスタートし、2ヶ月後の11/11までに支給申請を完了させなければいけません。

・法を上回る介護休暇
・介護サービス費用の補助
上記の制度を実施した場合の支給申請期間は、両立支援制度の利用期間が6ヵ月を経過した日の翌日から起算して、さらに1ヵ月を経過する日の翌日から2ヵ月以内です。
例えば、6/21時点で制度利用開始から6ヵ月を経過した場合、翌日の6/22から起算して1ヵ月を経過した日の翌日7/22から支給申請期間がスタートします。
支給申請期限は7/22から2ヵ月以内となっているので、9/21までに支給申請を完了させる必要があります。

介護離職防止支援コースを活用する際の注意点

本コースはこれからの日本でますます必要性が高くなる介護休業に関する環境整備を実施する事業主にとって非常にメリットがある制度です。
しかし、実際に活用する際は以下の点に注意する必要があります。

支給回数には限りがある

本コースの助成金は「介護休業を取得させれば何回でも受給できる」という仕組みではありません。
介護両立支援制度に関しても、同一の対象従業員の同一の制度利用に対する支給は1回限りです。
異なる制度を利用する場合でも、同一の対象従業員に対しての支給回数は2回までとなっています。
また、同一の対象従業員が介護休業と介護両立支援制度の利用について支給申請する場合は、それぞれ別個に面談を実施し、それぞれ介護支援プランを策定することが必須となっています。

対象となる介護状態、対象家族がある

本コースの対象となる従業員が介護休業を取得する際に注意しなければいけないのが、介護休業を取得する要因となる家族の要介護状態や関係性です。
本コースの対象となる要介護状態は、育児・介護休業法第2条第3号に定める範囲に限られています。
具体的には、「負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態」にある家族に対する介護休業となります。
また、本コースの対象となる家族の範囲は、育児・介護休業法第2条第4号に定める範囲に限られています。
具体的には以下の家族が対象となります。
・自身または配偶者の父・母
・自身の祖父母
・自身の兄弟
・配偶者
・子
・孫

配偶者の祖父母や配偶者に至っていないパートナーが要介護状態になったとしても、本コースを活用して介護休業を取得することはできないので、注意が必要です。

【両立支援等助成金】介護離職防止支援コースの内容と活用する際の注意点について解説のまとめ

今回は、「介護離職防止支援コース」の内容と活用する際の注意点について解説させていただきました。
本コースは、仕事との両立に関する取組みを積極的に行っていきたい事業主にとって、非常にメリットがある制度です。
雇用する従業員が休業を取得した際、はじめに考えるのは「今までやってくれていた業務をどうやって片付けよう」ということだと思います。
在籍している他の従業員に任せたり、新たに従業員を雇用する方法もありますが、それぞれ問題点があると思います。
しかし、本コースを活用して休業に関する取組みを実施すれば、業務を代替してくれる従業員に手当を支払ったり、新たに従業員を雇用することが容易になります。
仕事との両立に関する取組みを積極的に行っていきたい方は、ぜひ本コースの活用を検討してください。