助成金にデメリットはあるの?デメリットに対する対策やメリットについて解説
目次
助成金とは、ある要件に沿った取組みを実施している事業主に対して支給されるお金です。
受給したお金は返済不要であるため、多くの事業主が助成金の申請を行います。
無償で資金調達できることや審査通過率が高いことなど、メリットばかりが表立っている助成金ですが、実はデメリットとなる面も存在します。
デメリットを事前に理解しておかなければ、助成金の受給を上手く活かすことができないため、メリットだけでなくデメリットについても理解を深めるようにしてください。
本記事では、助成金のデメリットとメリット、デメリットを軽減するための対策について詳しく解説していきます。
助成金について
助成金とは厚生労働省が運営している制度で、雇用促進や人材育成、労働環境の整備等の取組を実施した事業主に支給されます。
採択件数や予算に制限がある補助金とは異なり、要件を満たしていればほぼ確実に受給できます。
また、一度受給したお金については返済不要であるため、受給後の資金繰り等に悪影響を与えることはありません。
事業主は助成金を活用することによって、無償に近い形で労働環境の整備や人材育成を行うことができます。
助成金のデメリットと対策
ここからは、本記事の本題である「助成金のデメリット」について解説していきます。
デメリットを理解しておかなければ、後々面倒なことや不都合になることが発生する可能性があるので、注意が必要です。
デメリット①:申請の準備に手間がかかる
1つ目のデメリットは、申請の準備に手間がかかることです。
助成金の申請を行うためには、複数の申請書類や帳簿類を準備しなければいけません。
特に初期段階で労働局に提出する「計画書」は、申請後に行う取組みに沿った内容にしなければいけないため、作成に時間がかかります。
もし申請後の取組みが当初の計画書と異なっていた場合、助成金を受給できなくなる可能性もあるので、計画書の内容と実際の取組みに相違が出ないようにしなければいけません。
このように、助成金の申請の準備には多大な手間・時間がかかるので、本業に支障をきたしてしまう可能性があります。
デメリット①の対策
デメリット①の申請の準備に手間がかかることの対策としては、申請代行の活用が挙げられます。
申請代行を活用すれば、助成金の申請にかかる手間・時間を大幅に軽減でき、本業への支障を最低限に抑えることができます。
また、申請にかかる手間・時間を軽減できるだけでなく、最適な助成金を見つけてくれることも申請代行を活用するメリットだといえます。
助成金の申請代行を請け負えるのは、法律上「社労士」のみです。
社労士以外の民間会社に申請代行を依頼すると不正受給扱いになり、助成金の全額返還や企業名の公開などの罰則を受けることになるので注意が必要です。
デメリット②:申請直後の支出が増える
2つ目のデメリットは、申請直後の支出の増加です。
助成金の制度の中には、人材採用や研修制度の導入など、費用がかかる要件が設定されているものが多くあります。
支出と同時に助成金を受給できれば問題ありませんが、助成金の受給には時間がかかるので、結果として支出が増えてしまうことになるのです。
助成金を受給するためには、人材採用や研修制度の導入といった取組みを実施する必要があるので、ある程度の手元資金が必要となります。
デメリット②の対策
デメリット②申請直後の支出が増えるに関する対策としては、助成金を活用することによる費用対効果を事前に考えておくことが挙げられます。
助成金は返済不要のお金ですが、要件を満たすための取組みにかかった費用を全て賄えるわけではなく、少なからず自己資金を投じる必要があります。
自己資金が不足している事業主からすると助成金の活用はリスクが高いといえますが、費用対効果が高いのであれば問題ありません。
例えば、研修制度の導入に100万円を支払ったとしても、研修による効果で生産性や売上の向上を実現できれば、事業主にとっては大きなプラスとなります。
デメリット③:制度の変更・廃止が頻繁に起こる
3つ目のデメリットは、制度の変更・廃止が頻繁に起こることです。
助成金の財源は、基本的に事業主と従業員が折半して納付する「雇用保険料」ですが、経済情勢や国の予算に応じて制度の変更・廃止が頻繁に起きます。
直近の例で例えると、新型コロナウイルスの影響を受けた事業主を支援する「雇用調整助成金コロナ特例」が廃止となり、通常の雇用調整助成金のみの利用に変更となりました。
助成金の制度変更・廃止を見逃してしまうと、予定していた計画を実行できなくなる可能性があるので、最新情報についてはこまめにチェックするようにしましょう。
デメリット③の対策
デメリット③制度の変更・廃止が頻繁に起こるに関する対策は、日頃から助成金に関する情報をチェックするしかありません。
助成金の制度変更や廃止は政府の指針や国の予算、経済情勢など、様々な要因で決定されます。
ただ、制度変更や廃止はある日突然行われるわけではなく、一般的に半年~1年ほど前から告知されます。
助成金の情報に関しては、厚生労働省の公式HPにて確認できるので、ぜひ閲覧してみてください。
デメリットだけじゃない!助成金のメリット
ここからは助成金のメリットについて解説していきます。
メリット①:返済義務がない
1つ目のメリットは、返済義務がないことです。
助成金を活用すると、数十万~数百万円の返済不要のお金を受け取ることができます。
金融機関から融資を受けた際は、長期間に渡って元本と利息を返済していく必要があるため、資金繰りが悪化してしまう可能性がありますが、返済不要の助成金ではそのような心配がありません。
雇用環境の整備や人材育成に活用できる資金を受け取れることは、事業主にとって大きなメリットだといえるでしょう。
メリット②:会社の利益につながる
2つ目のメリットは、会社の利益につながることです。
助成金の活用による収入は「雑収入」として処理されるため、事業の利益につながります。
また、受給した助成金の使用用途は自由なので、設備投資や研修制度の導入、債務の返済などに活用できます。
メリット③:労働環境を整備できる
3つ目のメリットは、労働環境を整備できることです。
助成金は支給要件を満たせていれば受給できる制度ですが、申請時には就業規則や出勤簿等を提出しなければいけません。
これらの資料を準備するためには、常日頃から人事労務管理を整えておく必要があるため、助成金を活用することは労働環境の整備につながります。
メリット④:審査通過率が高い
4つ目のメリットは、審査通過率が高いことです。
補助金の場合は、あらかじめ予算や採択件数が決まっているため、審査通過率が低い傾向にあります。
支給要件を満たしていたとしても、申請を行う事業主が多ければ審査に通過できる確率は低いです。
しかし、助成金の場合は支給要件を満たせていれば基本的に審査に通過することが可能です。
また、一年を通して申請を行うことができるため、余裕を持って手続きを進めることができます。
メリット⑤:社会的信用の向上につながる
5つ目のメリットは、社会的信用の向上につながることです。
助成金を受給するためには、国(厚生労働省)が定めた支給要件をクリアする必要があります。
つまり、助成金を受給できた事業主は、国が定めた基準を満たしている会社であり、雇用や人材育成に積極的に取り組んでいる会社として、社会的な信用を得ることができるのです。
しかし、助成金の支給要件を満たすために、タイムカードの時間を偽造するなどの不正行為を行った場合は、逆に不正受給をした事実が公表され、社会的な信用を失うことになります。
また、不正受給を行うと5年間助成金を受給できないなどの罰則もあるので、不正は行わないようにしてください。
代表的な助成金をご紹介
ここからは助成金のデメリットに不安を抱えている方に向けて代表的な助成金を2つご紹介します。
キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金は、非正社員の正社員化や処遇改善を支援する制度です。
非正社員とは、アルバイトやパート、派遣社員、契約社員などのことを指しており、キャリアアップ助成金は非正社員のキャリアアップ促進を目的としています。
そんなキャリアアップ助成金には以下の6つのコースが用意されています。
正社員化コース
非正社員の正社員化や直接雇用を支援する制度
障害者正社員化コース
障害を持つ労働者の正規雇用を支援する制度
賃金規定等改定コース
非正社員の賃金規定見直し、3%以上の昇給を実施した事業主を支援する制度
賃金規定等共通化コース
非正社員が正社員と同様の職務・責任をこなした際の賃金規定改定を支援する制度
賞与・退職金制度導入コース
非正社員に対する賞与・退職金制度の導入を支援する制度
社会保険適用時処遇改善コース
社会保険の被保険者の収入を増加させる取り組みを実施する事業主を支援する制度
雇用調整助成金
雇用調整助成金は、経済的な理由で事業規模の縮小を余儀なくされた事業主が、労働者の雇用の維持を図った場合に支援する制度です。
具体的には、休業や教育訓練、出向などにかかった費用が助成対象となります。
助成率は中小企業で2/3、大企業で1/2となっており、教育訓練を行った際は1人1,200円/日が加算されます。
助成金にデメリットはあるの?デメリットに対する対策やメリットについて解説のまとめ
今回は、助成金のデメリットとメリット、デメリットを軽減するための対策について詳しく解説させていただきました。
助成金には返済不要や使用用途が自由などのメリットがある一方で、デメリットも存在します。
しかし、助成金のデメリットの多くは正しい対策を実施することで解消することが可能です。
助成金の支給要件を満たすことができている場合は、積極的に活用していきましょう。