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【人材開発支援助成金】コース内容や申請方法、メリットについて解説!

人材開発支援助成金は、企業が労働者に対して業務に関連する知識・スキルを習得させるための訓練等を実施した場合に、訓練経費や賃金の一部を助成する制度です。
少子高齢化に伴い労働者を確保することが難しい昨今において、生産性の向上・効率化を目的とした人材育成は欠かせません。
しかし、人材を育成するための訓練を実施するには高額な費用が掛かるケースもあることから、取り組むことが難しい企業も少なくありません。
そこで活用できるのが「人材開発支援助成金」です。
人材開発支援助成金を活用すれば、人材育成にかかる費用の何割かの助成を受けることができます。
本記事では、人材開発支援助成金のコース内容や申請方法、メリットについて解説していきます。

人材開発支援助成金とは

人材開発支援助成金とは、その名の通り企業の人材開発に関する取組みを支援する制度です。
具体的には、企業が労働者に対して職務に関連した知識やスキルを習得させるための職業訓練等を行った際に掛かった経費や訓練中の賃金の一部が助成対象となります。

そもそも助成金って何?

助成金とは雇用促進や労働環境の整備に取組む企業を支援する制度です。
厚生労働省が運営しており、支給されたお金は返済不要です。
受給要件を満たせていれば100%受給できることが魅力で、補助金と比べると利用しやすい制度となっています。
支給される金額という面では補助金に劣る面もありますが、雇用促進や労働環境の整備に取組む企業にとって、ありがたい制度であることは間違いありません。

キャリアアップ助成金との違いは?

人材開発支援助成金と似た制度として「キャリアアップ助成金」という制度があります。
どちらの制度も雇用する労働者に対するスキルアップ・キャリアアップを支援する制度であることから、間違えられることが多いです。
しかし、両制度には明確な違いがあります。
それは助成対象者です。
人材開発支援助成金は雇用保険に加入している正社員を、キャリアアップ助成金は有期・無期雇用労働者を助成対象としています。
また、制度の目的も異なります。
人材開発支援助成金では雇用する労働者のスキルアップに重点を置いていますが、キャリアアップ助成金では労働者の待遇改善を重視しています。
このように、両制度には異なる点があるので、活用する際は注意が必要です。

人材開発支援助成金の6つのコース

人材開発支援助成金には以下の6つのコースがあります。
コースごとに内容や助成額、助成率が異なるので、活用を検討されている方は、ぜひ参考にしてみてください。

人材育成支援コース

人材育成支援コースは、職務に関連した知識・技能を習得させるための訓練等を実施した際に発生した経費や賃金の一部を助成するものです。
具体的には、以下の訓練を実施した場合に助成金を受給することができます。

 人材育成訓練:職務に関連した知識・技能を習得させるための訓練(10時間以上)
 認定実習併用職業訓練:厚生労働大臣の認定を受けたOJTとOFF-JTを組み合わせた実習併用職業訓練
 有期実習型訓練:有期契約労働者等を正規雇用労働者に転換するための訓練

人材育成支援コースの助成率や助成金額は、実施する訓練内容や対象労働者の状況によって変動します。
例えば、雇用保険被保険者(正社員)に対して人材育成訓練を実施した場合、経費に対して45%の助成金を受給できます。
また、一定の要件を満たせば加算措置が適用されることになり、より多くの助成金を受給できるようになります。

教育訓練休暇等付与コース

教育訓練休暇等付与コースは、労働者が職業訓練への参加を目的とした休暇(職業訓練休暇)を取った場合に、職業訓練等の導入経費と教育訓練休暇中の賃金の一部を助成するものです。
教育訓練休暇等付与コースには、取得する教育訓練休暇の日数に応じて以下の2つの制度が設けられています。

 教育訓練休暇制度:数日間の教育訓練休暇制度を導入する際に活用できる制度
 長期教育訓練休暇制度:最低でも30日以上の教育訓練休暇制度を導入する際に活用できる制度

このコースは令和8年度までと期間が定められている助成金です。
活用を検討されている企業は、早めに申し込みを行うようにしましょう。

建設労働者認定訓練コース

建設労働者認定訓練コースは、労働者に対して職業開発能力促進法に定められた認定訓練を実施した建設業を営む中小企業・中小建設事業主業団体などを助成するものです。
建設労働者認定訓練コースを活用するためには、以下の要件を満たす必要があります。

 経費助成要件:都道府県から認定訓練助成事業補助金(運営費)または広域団体認定訓練助成金の交付を受けて訓練を実施すること
 賃金助成:雇用する労働者に対して認定訓練を実施する期間は、通常と同様、もしくはそれ以上の賃金を支払うこと。また、人材育成支援コースの支給決定を受けていること。

建設労働者認定訓練コースの経費に対する助成額は支給対象費用の1/6、賃金に対する助成額は3,800円/日となっています。

建設労働者技能実習コース

建設労働者技能実習コースは、被保険者である労働者に対して技能実習等を実施した際の経費や賃金の一部を助成するものです。
訓練経費に対する助成額は、企業に所属する雇用保険被保険者の人数や年齢によって変動し、1つの技能実習につき1人当たり最大10万円までの助成金を受給できます。
賃金に対する助成額も企業に所属する雇用保険被保険者の人数によって変動します。

人への投資促進コース

人への投資促進コースは、その名の通り人への投資を促進するために、国民からの意見を形にした訓練コースで、以下の5つのコースが用意されています。

1. 高度デジタル人材訓練・成長分野等人材訓練:高度デジタル人材や成長分野等人材を育成するための訓練を実施した企業に対する制度
2. 情報技術分野認定実習併用職業訓練:ITの未経験者を即戦力化するための訓練を実施した企業に対する制度
3. 定額制訓練:サブスクリプション型の検収サービスを導入した企業に対する制度
4. 自発的職業能力開発訓練:労働者が自発的に訓練等を行った際の費用を負担する企業を支援する制度
5. 長期教育訓練休暇等制度:労働を維持しながら訓練等を受講するために休暇や短時間勤務等の制度を導入した企業を支援する制度

訓練経費・賃金に対する助成率・助成額は各コースによって異なります。
例えば、高度デジタル人材訓練・成長分野等人材訓練を実施した場合、訓練経費に対して最大75%の助成金を受給できます。
こちらも教育訓練休暇等付与コースと同様に令和8年度までの期間限定助成金となっていますので、お早めの申請をおすすめします。

事業展開等リスキング支援コース

事業展開等リスキング支援コースは、持続的な発展や新製品・新サービスの提供等により新たな分野に展開する、またはデジタル・グリーンといった成長分野の技術を取り入れ業務の効率化を図るため、以下の内容に取組む企業に対して訓練経費や賃金の一部を助成するものです。

 新規事業の立ち上げ等の事業展開に伴う人材育成
 業務の効率化や脱炭素化などに取り組むため、デジタル・グリーン化に対応した人材の育成

助成対象となる訓練は、以下の3つのいずれかに該当するものとなります。

1. 助成対象とならない時間を除いた訓練時間数が10時間以上であること
2. OFF-JT(職場から離れて行われる訓練)であること
3. 職務に関連した訓練であるうえに、以下のいずれかに該当する訓練であること
 事業展開を行うにあたり、新規事業で必要となる知識や技能を習得させるための訓練
 事業展開は行わないが、企業がデジタル化やグリーン化を促進するにあたり、これに関連する業務に従事させるために必要なる知識や技能を習得させるための訓練

事業展開等リスキング支援コースは、人材開発支援助成金のなかで一番規模が大きい制度です。
1年間における1事業所当たりの助成限度額は1億円で、経費に対して最大75%の助成金を受給できます。

人材開発支援助成金を活用するメリット

人材開発支援助成金を活用するメリットは以下の通りです。

人材育成にかかるコストを削減できる

人材開発支援助成金の活用は、人材育成にかかるコストの削減につながります。
雇用する複数の労働者に対して、知識・スキルの向上を目的とした研修・訓練を実施する場合は、多大な費用が発生します。
企業の中には、研修・訓練にかかる費用が問題で人材育成を実施できていない企業もあるでしょう。
しかし、人材開発支援助成金を活用すれば、研修・訓練にかかる経費と訓練中の賃金の一部を助成してもらえます。
実施する研修・訓練の内容や条件によっては経費の最大75%の助成を受けられるなど、通常よりも少ない負担で人材育成を実施できます。

企業成長につながる

人材開発支援助成金の活用は、実際に訓練を受ける労働者の成長だけでなく、企業としての成長にもつながります。
なぜなら、訓練を受講した労働者の知識・スキルの向上は、生産性の向上に直結するからです。
また、労働者に対してスキルアップの場を設ければ、仕事に対するモチベーション向上に期待できます。
このように、知識・スキルの向上を目的に訓練等を実施することは労働者と企業のどちらにもメリットがあります。

助成金の返済は不要

人材開発支援助成金を活用した場合、返済不要のお金を受給できます。
融資を活用して人材育成のための訓練等を実施した場合、継続的な返済が必要となります。
もし訓練による効果が薄かった場合は、費用対効果が低くなり、返済だけが残ってしまう可能性も否定できません。
一方、助成金の場合は、訓練の効果が薄かったとしても助成を受けたお金の返済がないため、失敗を恐れずに様々な訓練等を実施することができます。

人材開発支援助成金を活用する際の注意点

人材開発支援助成金を活用する際の注意点は以下の通りです。

対象となる訓練以外では受給できない

人材開発支援助成金を活用する際は、事前に助成対象となる訓練等を把握しておく必要があります。
もし、対象となる訓練等以外で申請した場合、助成金を受給することはできないので注意が必要です。
コースによっては、訓練を受講する労働者の年齢や雇用形態、訓練を実施する期間など、細かい要件が設定されています。
厚生労働省が公表している公募条件等を確認するようにしてください。

訓練等にかかる費用は先払いする必要がある

人材開発支援助成金を活用して訓練等を実施する場合に注意したいのが、助成金の受給タイミングです。
助成金は申請から受給までに1~2ヵ月の期間を要するため、訓練等にかかる費用は先払いする必要があります。
自己資金が不足している状況では、訓練等にかかる経費や労働者の賃金を立て替えられずに、活用できない可能性があります。
最低限の自己資金が必要になることを覚えておきましょう。

人材開発支援助成金の申請方法

申請方法は各コースによって異なります。
ここでは、申請する際の基本的な流れについて解説していきます。

①:事業内職業能力開発計画の策定

事業内職業能力開発計画とは、自社の人材育成に向けた基本的な方針などを記載する計画のことです。
育成方針や必要な知識・スキルについて、経営者と労働者が共通の認識を持ち、効果的な訓練等を行うために策定します。
また、事前に事業内職業能力開発計画の策定から周知までを主体的に実行する「職業能力開発推進者」を選任しておく必要があります。

②:訓練計画届の作成・提出

訓練計画届は、厚生労働省のホームページからダウンロードできます。
訓練の対象者や内容、期間など、実施する訓練に関する情報を記載し、訓練開始日の1ヵ月前までに提出する必要があります。

③:訓練の実施

訓練計画届に記載した内容に沿って、労働者に対して訓練を実施します。
もし訓練内容や期間に変更がある場合は「訓練実施計画変更届」の提出が必要です。
変更届を提出せずに計画を変更した場合、支給対象外になるので注意して下さい。

④:支給申請書の提出

訓練が終了した日の翌日から起算して2ヵ月以内に支給申請書と必要書類を提出します。
この際、提出期限を守らなかったり、必要書類に不備があった場合は、受給できなくなる可能性があるため、注意が必要です。
また、労働局の審査次第では、当初予定した助成金額が低くなったり、不支給になる可能性も考えられます。

【人材開発支援助成金】コース内容や申請方法、メリットについて解説!のまとめ

今回は、人材開発支援助成金のコース内容や申請方法、メリットについて解説させて頂きました。
助成金は、返済不要で受給できるお金です。
審査に通過することができ、実際に受給することができれば、労働者・企業の双方の成長に期待できます。
本記事で解説した内容をもとに、人材開発支援助成金の活用を検討してみましょう。