【両立支援等助成金】育休中等業務代替支援コースの内容と活用する際の注意点について解説
目次
近年では、子供が生まれた際に男性も育休を取得することが一般的になりつつあります。
しかし、他の従業員の負担を増加させてしまうことから、取得しづらい環境にいる人も少なくありません。
従業員を雇用する事業主には、「育休を取得したい人」と「業務代替によって業務負担が増えた人」の両方の要望に応えるための環境整備が求められます。
今回は、「育休中業務代替支援コース」について解説していきます。
他のコースと比べて助成金額が大きいため、ぜひ活用をご検討ください。
育休中等業務代替支援コースとは
育休中等業務代替支援コースは、育児休業や短時間勤務の期間中の業務にまつわる環境整備を目的とした制度です。
事業主が負担の増える従業員に対して手当を支給したり、新規雇用や派遣受入れを行う場合に、助成金が支給されます。
冒頭でも述べましたが、近年では男性も子育てに積極的に参加することが一般的になりつつあります。
しかし、限られた人数で運営している中小企業などでは、従業員が一定期間抜けることによる影響が大きいため、取得が難しい実状があります。
そこで2024年1月に新設されたのが「育休中等業務代替支援コース」です。
本コースを活用すれば、周囲の従業員に対する手当や新規雇用にかかる資金の一部を確保できます。
また、本コースの助成金は返済不要であるため、活用後のお金の心配は必要ありません。
「気持ちよく取得させてあげたい」「業務を変わってくれている従業員の不満を軽減したい」という方は、ぜひ本コースの活用をご検討ください。
育休中等業務代替支援コースの内容
ここからは本記事の本題である「育休中等業務代替支援コースの内容」について解説していきます。
対象となる取組みや受給要件、助成金額等について解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
対象となる取組み
本コースでは、以下の3つの取組みに対して助成金を支給しています。
1.手当支給等(育児休業):育児休業を取得した従業員の業務を代替する従業員に対して、手当支給等の取組みを行う
2.手当支給等(短時間勤務):育児を目的とした短時間勤務制度を利用する従業員の業務を代替する従業員に対して、手当支給等の取組みを行う
3.新規雇用(育児休業):育児休業を取得した従業員の業務を代替する従業員を派遣受入れを含む新規雇用による確保する
このほか、本コースには2つの加算措置が設けられており、実行した場合上記1~3の助成金に加算額が上乗せされて支給されます。
受給要件
本コースの受給要件は、実施する取組みごとに異なります。
手当支給等(育児休業)
1.育休取得者の業務を、事業主が雇用する従業員に代替させていること
2.業務の見直し・効率化のための取組みを実施していること
3.代替業務に対応した賃金制度を労働協約か就業規則に定め、制度に基づき業務代替者の賃金が増額されていること
4.育休取得者に7日以上の休業を取得させていること
5.育休に関する制度を労働協約か就業規則に定めていること
6.次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、労働局に届け出ていること
育休取得者の休業期間が1ヵ月以上の場合は、上記に加えて以下の要件を満たす必要があります。
7.育休取得者を原職等に復帰させる旨を労働協約か就業規則に定めていること
8.育休終了後、育休取得者を原則として原職等に復帰させたこと
9.育休取得者を原職等に復帰させた日から支給申請日までの3ヵ月以上継続した期間において、雇用保険被保険者として雇用していること
手当支給等(短時間勤務)
1.3歳未満の子を養育する従業員が、育児を目的として短時間勤務制度を1ヵ月以上利用していること
2.短時間勤務制度を利用している従業員の業務を、事業主が雇用する従業員に代替させていること
3.業務の見直し・効率化のための取組みを実施していること
4.代替業務に対応した賃金制度を労働協約か就業規則に定め、制度に基づき業務代替者の賃金が増額されていること
5.短時間勤務制度の利用者を、短時間勤務制度の利用開始日及び支給申請日において、雇用保険被保険者として雇用していること
6.短時間勤務制度に関する内容を労働協約か就業規則に定めていること
7.次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、労働局に届け出ていること
新規雇用(育児休業)
1.育休取得者の代替要員を、新規雇用もしくは派遣受入れによって確保していること
2.育休取得者に7日以上の休業を取得させたこと
3.育休取得者を休業開始日及び職場復帰から支給申請日までの間、雇用保険被保険者として雇用していること
4.育児休業制度に関する内容を労働協約か就業規則に定めていること
5.次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、労働局に届け出ていること
助成金額
本コースの助成金額は以下の通りです。
1.手当支給等(育児休業)
手当支給等(育児休業)の助成金額(育休取得者1人あたり)は以下AとBの合計額です。
・A:業務体制整備経費:5万円
・B:手当支給総額の3/4(最大10万円/月)
手当支給等(育児休業)の助成金額は、業務体制整備経費に対する5万円と業務を代替する従業員に対する手当支給総額の3/4となっています。
AとBを合わせた上限額は125万円です。
業務体制整備経費に対する助成金額は基本的に5万円ですが、育休期間が1ヵ月未満の場合は2万円となります。
手当支給に対する助成金に関しては最大10万円/月となっており、代替期間12ヵ月分が助成対象となります。
2.手当支給等(短時間勤務)
手当支給等(短時間勤務)の助成金額(短時間勤務制度利用者1人あたり)は以下のAとBの合計額です。
・A:業務体制整備経費:2万円
・B:手当支給総額の3/4(最大3万円/月)
手当支給等(短時間勤務)の助成金額は、Aに対する2万円とBの3/4(最大3万円/月)となっています。
AとBを合わせた上限額は110万円です。
3.新規雇用(育児休業)
新規雇用(育児休業)の助成金額(育休取得者1人あたり)は、育休取得者の代替要員が実際に育休取得者の業務を代替した期間の長さに応じて決定されます。
また、申請者にあたる事業主がプラチナくるみん認定事業主となっている場合は、通常よりも高い助成金額が支給されます。
新規雇用(育児休業)の助成金額は以下の通りです。
※以下()はプラチナくるみん認定事業主に対する助成金額
※以下左側は業務代替期間、右側は助成金額
・7日以上14日未満:9万円(11万円)
・14日以上1ヵ月未満:13万5千円(16万5千円)
・1ヵ月以上3ヵ月未満:27万円(33万円)
・3ヵ月以上6ヵ月未満:45万円(55万円)
・6ヵ月以上:67万5千円(82万円5千円)
4.有期雇用労働者加算
有期雇用労働者加算とは、育休や制度の利用者が有期雇用労働者だった場合に、加算額を受給できるものです。
利用期間が1ヵ月以上の場合のみにはなりますが、10万円の加算額を受給できます。
また、全コースを対象とした加算措置として「情報公開加算」があります。
休業等に関する情報をあるサイト上で公表した場合に、2万円の加算額を受給できます。
支給申請期間
本コースの支給申請期間は、育休・制度の利用期間、助成金の種類などによって変わります。
実施する取組みによって支給申請期間が異なるので、注意が必要です。
1.手当支給等(育児休業)
手当支給等(育児休業)の支給申請期間は、育休期間の長さによって異なります。
期間が1ヵ月を超えない場合は、終了日の翌日から起算して2ヵ月以内です。
一方、期間が1ヵ月を超える場合は、終了日の翌時から3ヵ月を経過する日の翌日から起算して2ヵ月以内です。
1ヵ月を超える場合の終了日から3ヵ月間は継続雇用期間として設けられています。
2.手当支給等(短時間勤務)
手当支給等(短時間勤務)の支給申請期間は、制度の利用期間に応じて異なります。
本取組みに関しては、制度利用期間が複数年に渡るケースも認められることから、1年ごとに支給申請を行うものとされています。
本取組みの支給申請期間は以下の通りです。
1.短時間勤務制度の利用期間が1年を超える場合
制度利用開始日から起算して1年を経過する日の翌日から2ヵ月以内です。
2.短時間勤務制度の利用期間が2年を超える場合
制度利用開始日から起算して2年を経過する日の翌日から2ヵ月以内です。
3.制度利用期間中に子が3歳になった場合
子が3歳になった月の最終日の翌日から起算して2ヵ月以内です。
4.上記3つのいずれにも該当しない場合
制度利用期間の最終日の翌日から2ヵ月以内です。
育休中等業務代替支援コースを活用するメリット
本コースを活用するメリットは以下の通りです。
育休取得率の向上
本コースを活用して会社が育休の取得に関して前向きな方針であることを従業員に周知できれば、育休取得率の向上が見込めます。
子供に関する休業が一般的になりつつある昨今ですが、まだまだ周囲の従業員の冷ややかな目を気にして思ったような休業を取得できていない従業員も多い状況です。
これから結婚・出産を検討している従業員を安心させるためにも、本コースを活用して育休取得率の向上を目指していきましょう。
従業員の満足度向上
本コースを活用して、育休取得者の業務を代わりに行う従業員に対して手当などの措置を講じれば、従業員の満足度向上につながるでしょう。
というのも、これまで業務を代わりに行う従業員に対する手当などはないことが一般的でした。
「育休=業務が増える」という悪いイメージが浸透しており、快く育休取得者を受け入れられる従業員が少ない状況にあったのです。
しかし、本コースを活用して業務を変わりに行う従業員に対して手当等を支給すれば、負担向上に対する不満を軽減できます。
育休中等業務代替支援コースを活用する際の注意点
本コースは、業務代替を行う従業員への手当や新規雇用を検討している事業主にとって非常にメリットがある制度です。
ただ、実際に活用する際は以下の点に注意する必要があります。
支給回数には上限がある
本コースの支給回数は「対象となる取組み」の1~3全て合わせて1年度10人までとなっています。
育休取得者や制度利用者が増えれば増えるだけ受給できる助成金額が多くなるといった制度ではありません。
同一育休に関する支給は1回のみ
本コースの助成金支給は、同一育休に対して1回のみです。
また「対象となる取組み」の1と3はどちらか一方のみの支給となります。
例えば、育休取得者のAが子のBが出生後1ヵ月間の育休を取得し、Bが生後6ヵ月を迎えてからさらに1ヵ月間の育休を取得した場合、前者のみの支給となります。
支給回数について認識を間違っていると、自己資金の負担が想定よりも増えてしまうことになります。
【両立支援等助成金】育休中等業務代替支援コースの内容と活用する際の注意点について解説のまとめ
今回は、「育休中等業務代替支援コース」の内容と活用する際の注意点について解説しました。
本コースには「育休取得者が気持ちよく休業できる」「育休取得者の業務を担当する従業員の不満を軽減できる」「返済不要の助成金を活用して育休中の環境整備を行える」といったメリットがあります。
上手く活用できれば、従業員の満足度を高めることができ、離職率の低下につながるでしょう。
従業員の不満を可能な限り軽減するためにも、ぜひ本コースの活用を検討してください。