助成金・補助金情報

IT導入補助金とは?内容や受給までの流れについて解説!

IT導入補助金とは

IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者等の労働生産性の向上を目的として、ITツールの導入を支援する補助金です。
この補助金は、働き方改革や軽減税率などの政策が実施され始めた2017年から始まっており、労働時間の短縮等を求められている事業者の助け舟となりました。
なぜなら、IT導入補助金を活用することで本来よりも安い金額でITツールを導入できるからです。
自社の資金だけでは導入が難しいITツールであっても、「IT導入補助金」の制度を活用して数十万~数百万の支援を受けることができれば、問題なくITツールを導入できます。
しかし、IT導入補助金を受給するためには、要件を満たすことはもちろん、倍率が高い審査に通過しなければいけません。
また、補助金を活用して導入できるITツールは事務局が認定したものに限られているため、ITツール選択の自由度は低いといえるでしょう。
ただ、ITツールを本来よりも安い金額で導入できることは、事業者にとってメリットになることが多いです。
IT導入補助金の利用を検討している方は、まず認定されているITツールを確認してみてください。

IT導入補助金の申請枠について

2024年のIT導入補助金の申請枠は5つです。
申請枠ごとに補助上限額や補助率、補助対象など、内容が異なるので、IT導入補助金の利用を検討している方は、まず申請枠の概要についてしっかりと理解を深める必要があります。
もしインターネットの情報だけで理解することが難しいという場合は、補助金・助成金の申請を手助けしてくれる業者に相談してみてください。
本章では、IT導入補助金の申請枠について詳しく解説していきます。

①:通常枠

通常枠は、事業者が自社の課題やニーズに合ったITツールを導入する経費の一部を補助する制度です。
IT導入補助金の中でも基本となる制度で、中小企業・小規模事業者の業務効率化や売上アップのサポートを目的としています。
通常枠ではあらかじめ導入できるITツールの要件が定められており、使用できる業務プロセスの数によって補助金額が変動します。
補助率は二分の一、補助金額は1プロセス以上の場合5万円以上150万円未満、4プロセス以上の場合は150万円以上450万円以下となります。
ここからはIT導入補助金「通常枠」のITツールの要件や補助対象、活用事例をご紹介します。

ITツールの要件と補助対象

通常枠では以下のプロセスに活用できるITツールが補助対象となります。
なお、最後に紹介する「汎用・自動化・分析ツール」に関しては、単体のみの場合補助対象外となりますので注意が必要です。

・顧客対応・販売支援
・決済・債権債務・資金回収管理
・供給・在庫・物流
・会計・財務・経営
・総務・人事・給与・労務・教育訓練・法務・情報システム
・その他業務に特化したツール
・汎用・自動化・分析ツール

これらの業務プロセスに活用できるITツールの中で、具体的に補助対象となる費用としては以下の3つが挙げられます。

・ソフトウェア購入費/クラウド利用費(利用料最大二年分)
・オプション費用(セキュリティ対策・データ連携ツール・拡張機能)
・役務費用(導入コンサルティング・導入設定・マニュアル作成・導入研修・保守サポート等)

IT導入補助金「通常枠」の活用事例

ここからはIT導入補助金「通常枠」を活用して、業務効率化・売上アップに成功した事例をご紹介します。

事例①:有限会社天女山(林業)
有限会社天女山は、山梨県北杜市で林業を営む会社です。
こちらの会社は、林業という業種の性質上利益の確保に課題を抱えていました。
現状の打開策を考え抜いた結果森林のデジタル化に行き着いたのですが、経営状況が悪くなかなかIT投資に踏み切ることができずにいました。
その後、ドローンを使った森林解析を検討していたところ、知り合いの会社からの紹介でIT導入支援事業者と出会います。
IT導入支援事業者からあるITツールの提案を受けたのですが、その提案されたITツールがまさに有限会社天女山が求めていたものだったのです。
林業はGIS(地理情報システム)を多用する業種ですが、提案を受けたツールはGISとして活用できることはもちろん、カメラドローンによる取得した点群データを解析できる優れものでした。
ただし、こちらの会社は経営難に陥っており、高額なITツールを導入することは難しい状況でした。
そこでIT導入補助金を活用して、費用の一部を補助してもらうことに。
無事申請が採択され、ITツールの導入により森林調査人員の削減に成功しました。

事例②:株式会社宝寿園(卸売業・飲食業)
株式会社宝寿園は、東京都新宿区で卸売業と飲食業を営む会社です。
特に自社オリジナルブランドの「野草十八茶 宝寿茶」は20年以上のロングセラー商品となっており、多くの方から支持を得ています。
テレビ通販会社や飲食店、宿泊施設、一般消費者など、約5万件の顧客に対して商品を販売しており、自社開発の管理システムを用いて受注処理や販売管理を行ってきました。
しかし、自社開発のシステムには、管理件数が増えるごとに処理速度が遅くなってしまうという問題があり、サービスの低下が懸念されていました。
また、伝票記入やエクセルへの入力は全て手作業で行っていたため、対応スピードの改善も同時に求められていたのです。
そんな時、取引先から販売管理業務や経理業務をDX化するITツールの提案があり、補助金の活用を検討し始めたのです。
自社の課題を再分析し、導入するITツールを検討した結果、販売管理システム「PCA商魂DX」と指定伝票発行システム「伝介」を導入することに。
結果、受注業務においてはシステムの処理速度が大幅に改善され顧客からのクレームが少なくなり、伝票発行に関してはこれまで2人がかりで12時間かかっていた業務をわずか2時間で完了できるようになりました。

②:インボイス枠(インボイス対応類型)

インボイス枠の「インボイス対応類型」は、今後のインボイス制度の普及に備え会計や受発注、決済に関するITツールを導入する際に、導入費用の一部を補助する制度です。
運営側は、この制度を通してインボイス制度に対応した企業間取引のデジタル化の推進を目的としています。
インボイス対応類型では、補助対象となる事業者の規模によって補助率・補助金額が変動します。
補助額が50万円以下で補助対象者が中小企業の場合の補助率は四分の三以内、小規模事業者の場合は五分の四以内となります。
50万円を超える場合は、50万円以上の部分だけ三分の二以内の補助率となります。
50万円以上の補助金を受給するためには、会計・受発注・決済のうち2機能以上を有する必要があるので、事前に理解しておきましょう。
インボイス対応類型の補助対象は以下の通りです。

・ソフトウェア購入費用(インボイス制度に対応しており会計・受発注・決済の機能を有するもの)
・オプション費用(機能拡張、データ連携、セキュリティといったオプション)
・役務費用(導入コンサルティング・導入設定・マニュアル作成・導入研修・保守サポート)
・ハードウェア導入費用(PC・タブレット・プリンター・スキャナ・POSレジ・券売機など)

なお、ハードウェアを補助対象として申請する場合は、申請したハードウェアがソフトウェアを使用するためのものであることが条件となります。

③:インボイス枠(電子取引類型)

インボイス枠の「電子取引類型」は、補助金の申請者がインボイス対応のITツールを導入し、取引関係にある受注者に対して無償でアカウントを供与して利用させる場合の費用を補助する制度です。
「発注者が導入したITツールのアカウントを受注者に無償で供与する」という限定的な制度ですが、これからインボイス制度に対応したITツールを商流単位で導入する事業者にとってはメリットの大きい制度だといえるでしょう。
電子取引類型の補助率は、実際にITツールを導入する事業者が中小企業及び小規模事業者の場合は三分の二以内、その他事業者の場合は二分の一以内となっており、補助上限額は350万円以下です。
補助対象は、インボイス制度に対応した受発注の機能を有しているものに限定されています。
具体的には、受注者に対してアカウントを無償で供与し利用させることができる機能を有するソフトウェアのクラウド利用料(最大2年分)が補助対象になります。

④:セキュリティ対策推進枠

セキュリティ対策推進枠は、サイバー攻撃による事業継続困難や生産性向上の阻害を防ぐために事業者がセキュリティ対策を行う際、その費用の一部を補助する制度です。
近年、IT業界の発展とともにサイバー攻撃が増加しており、まだ目には見えていない潜在的なリスクが多く存在しています。
このリスクに対して何も対策をしていないと、いざ自社がサイバー攻撃の標的になった際に、顧客情報の漏洩や企業秘密の漏洩など、事業継続困難な事象が発生する可能性があります。
セキュリティ対策推進枠は、このようなリスクを低減するための支援を行う制度です。
具体的には、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が公表する「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されているサービスの利用料(最大二年分)を補助してくれます。
補助率は全事業者二分の一で、補助額は5万円以上100万円以下となっています。

⑤:複数社連携IT導入枠

複数社連携IT導入枠は、サプライチェーンや商業集積地など、複数の事業者が連携して行うITツールの導入を支援する制度です。
こちらの制度では、ITツールやハードウェアの導入費のほか、ITツールの連携を効果的にするためのコーディネート費や外部専門家に助言をもらうための費用も補助対象となります。
補助率・補助額に関しては、補助対象経費の種類や導入に関わるグループ数、グループ構成員数などで細かく変動するので、公式サイトの方をご覧ください。
ここからは、補助対象者と補助対象経費をご紹介します。

補助対象者

複数社連携IT導入枠を利用できる補助対象者は以下の通りです。

・商工団体等(例)商工会議所、事業協同組合等
・地域のまちづくり、商業活性化、観光振興等の担い手として事業に取り組むことができる中小企業または団体(例)まちづくり会社、観光地域づくり法人(DMO)
・複数の中小企業・小規模事業者等により形成されるコンソーシアム

補助対象経費

複数社連携IT導入枠における補助対象経費は以下の通りです。

・基盤導入経費(会計・受発注・決済の機能を保有するソフトウェアとそのオプション、役務およびそれらの使用に資するハードウェア
・消費動向等分析経費(異業種間の連携や地域おける人流分析・商取引等の面的なデジタル化に資するソフトウェアとそのオプション、役務、ハードウェア)
・その他経費(参画事業者の取りまとめに係る事務費、専門家費)

IT導入補助金の申請から受給までの流れ

IT導入補助金には、申請から受給までにいくつかのステップを踏む必要があります。
事前に流れを把握できていれば、手続きをスムーズに進められます。
ここからは、IT導入補助金の申請から受給までの流れをご紹介します。

①:要件定義・公募要領の理解

IT導入補助金を活用する際は、まず申請を行う前に自社の課題や課題を解決するためにどのようなツールが必要かを明確にしましょう
課題や解決方法を明確にすることで、実際に役立つITツールを導入できます。
また、IT導入補助金は公募期間が定められており、一年中申請を行えるわけではありません。
IT導入補助金の活用を考えている方は、まず公募要領の内容を理解し、公募期間内に申請を行うようにしましょう。

②:申請の準備

IT導入補助金の申請を行うためには以下の準備が必要になります。
この準備で漏れ等があると、審査に影響を与える可能性も考えられるので、確実に準備していきましょう。

「gBizlDプライム」アカウントの取得

IT導入補助金を活用するには、「gBizlDプライム」アカウントを取得する必要があります。
gBizIDとは、様々な行政サービスをインターネットから手続きできる仕組みで、エントリーとプライムの2種類のアカウントが存在します。
IT導入補助金を利用する際は、「プライム」のアカウントが必要になるので、間違ってエントリーのアカウントを取得しないようにしてください。
また、「gBizIDプライム」のアカウント取得までには、申請から約2週間ほどかかるので早めに申請するようにしましょう。

「SECURITY ACTION」の宣言

SECURITY ACTIONとは、事業者が自らセキュリティ対策に取り組むことを宣言する制度で、IT導入補助金の必須要件となっています。
「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」を基に2段階の取り組みが用意されており、どちらかの取り組みを実施する必要があります。

「みらデジ経営チェック」の実施

みらデジ経営チェックとは、会社の経営課題やデジタル化の進捗状況を確認できるツールです。
IT導入補助金の「通常枠」においては必須要件、「インボイス枠とセキュリティ対策推進枠」においては加点項目となります。

③:IT導入支援事業者の選定及びITツールの選択

申請の準備が完了したら、IT導入支援事業者の選定を行っていきます。
IT導入支援事業者とは、その名の通りITツールの導入を支援する業者で、スムーズなITツールの導入には欠かせません。
導入したいITツールに詳しいか、また自社の経営課題に適したITツールを選択してくれるかなど、様々な観点からIT導入支援事業者を選定していきましょう。

④:交付申請(IT導入支援事業者と作成)

IT導入支援事業者の選定が完了したら、次はいよいよ交付申請です。
交付申請は、IT導入支援事業者と共同で行います。
まず、IT導入支援事業者から「申請マイページ」の招待を受け、代表者氏名等の基本情報を入力します。
その後、申請者は交付申請に必要となる情報入力・書類添付を行い、IT導入支援事業者は導入予定のITツールの情報、事業計画値を入力します。
最後に「申請マイページ」上で入力内容の最終確認を行い、事務局へ提出します。

⑤:交付決定

申請内容の審査が完了すると、交付決定通知がきます。
ここで交付決定の通知を受けた事業者は補助事業者となり、申請した補助事業を開始することができます。
ここで注意しておきたいのが、交付決定前に契約・支払いしたITツール等は補助対象外になってしまうことです。
ITツールの契約・支払い等は必ず交付決定後に行うようにしましょう。

⑥:ITツールの発注・契約・支払い(補助事業の実施)

正式に交付決定の通知を受けたら、申請したITツールを実際に導入します。
ITツールを導入する段階では補助金を受給できていないため、ITツールの導入にかかる費用は一旦申請者が支払う必要があります。
また、導入費用がどれだけ高額であっても、リース契約などにはできないので注意が必要です。

⑦:事業実績報告・補助金の交付

補助事業の完了後、実際に申請したITツールの発注・契約・支払い等を行ったことが分かる証憑を事務局に提出します。
具体的には以下のような証憑を提出する必要があります。

・請求書
・振込明細書
・ITツールのソフトウェア画面 など

事業実績報告後は「申請マイページ」にて確定した補助金額を確認でき、実際に交付を受けることができます。

⑧:事業実施効果報告

IT導入補助金を受給し、どれだけ労働生産性に影響があったか報告しなければいけません。
この報告はIT導入補助金の受給者全員に義務付けられており、定められた期間までに実施する必要があります。
この際、受給前に説明を受けた労働生産性の伸び率の目標と賃上げ目標を達成できなかった場合、補助金の返還を求められる可能性があるため、注意が必要です。

IT導入補助金とは?内容や受給までの流れについて解説!のまとめ

今回は、IT導入補助金の内容や申請から受給までの流れについて解説させていただきました。
IT導入補助金は、事業者をはじめとする団体がデジタル化・DX化を推進するうえで非常に役立つ制度です。
申請が採択されれば、通常よりも安い費用でITツールを導入することができます。
IT導入補助金の活用やITツールの導入を検討されている方は、一度IT導入支援事業者にご相談されてください。