なぜファクタリングは製造業向きの資金調達方法なのか？理由を解説
私たちの暮らしを支える製造業は、原材料となる素材を加工したり、組み立てしたりして製品を作り、販売することで利益を得ています。この流れが成立するためには、まず素材を仕入れなければなりません。仕入れには資金が必要です。
製造業の場合、製品を作って売り、出た利益を仕入れに充て、また製品を作って売る、の繰り返しで企業経営は存続していきます。売上高を増やし、利益を確保すれば仕入れができるため、事業を成長させられるのです。しかし製造業では売り上げた後、実際に現金として入ってくるまでに時間がかかることが多く、仕入れや設備投資に回るはずの資金が不足しやすいという傾向があります。
そこでおすすめしたいのがファクタリングです。この記事では、製造業の資金繰りが難しいのはなぜか、ファクタリングが製造業に適した資金調達方法である理由など、製造業とファクタリングについて解説します。
難しい製造業の資金繰り
さまざまな業種がある中、資金繰りの大変さにおいて1、2位を争うといっても過言ではないのが製造業です。製造業は製品のもとになる原材料を仕入れなければ成り立ちません。日本では原材料を海外から輸入することがほとんどで、その価格は常に変動します。そうした背景がある中、原材料を確保しなければならず資金管理が難しくなりがちです。
製造業の資金繰りが難しい理由
どの企業にも資金繰りの管理は大切ですが、とくに製造業では重要です。製造業は資金繰りを難しくする要因が多く、管理を怠ればすぐに制御不能となってしまいます。ここでは、製造業の資金繰りが難しい理由を解説します。
設備投資に多額の費用が必要
製造業では、良い製品を作るために新しい設備を導入したり、メンテナンスや修理をしたりといった設備投資に多額の費用がかかります。設備投資は企業が成長し利益を増やすために欠かせません。しかし中小企業ではなかなかその余裕はないというのが現実です。コストを抑えられる海外の企業へ生産の拠点を移す動きも続いており、製造業を取り巻く環境は今後も厳しいといえるでしょう。
掛取引が多い
製造業の売買は、ほとんどが製品を売って先方が受け取ったあと請求書を発送し、代金（売掛金）が支払われる、いわゆる「掛取引」で行われることがほとんどです。それにより製造業では製品を売った後、現金を手にするまで長い間待たなくてはなりません。
売掛金の回収サイトが長い
たとえば飲食店のような現金商売は、商品やサービスの引き換えで現金が入ります。つまり当日販売した分が当日入金されるため、資金の収支がわかりやすいのが特徴です。一方、製造業の多くは取引先と契約を結んで、掛取引を行っています。通常、代金は翌月、あるいは3か月後、長いときには半年先など、かなり後にならないと現金化できません。
資金繰りが把握できていないと、売掛金の支払いを待つ間に運転資金が底をついてしまい、最悪の場合倒産となるリスクもあります。
原価管理が難しい
製品を製造するためには、原材料費はもちろん、人件費や光熱費、設備にかかる費用などの原価が必要です。原価管理ができているか否かによって経営が左右されるといっても過言ではありません。
資金繰りに困っている企業では、原価管理ができていないことがよくあります。たとえば、製品別の原価管理ができておらず適切な仕入れができなくなり、過剰に発注して在庫を増えすぎてしまい、資金繰りを圧迫するといったケースが典型的です。
支払いが先行する
製造業の資金繰りが難しくなる理由には、設備投資も含めた先行費用の高さがあります。受注が増えれば、原材料などの仕入れ費や外注費が必要となり、先行費用は多額になります。
製造業は売掛金の回収までの期間が非常に長く、入金よりも先に支払う費用が大きくなりやすいのです。もし大きな仕事のチャンスがやってきたとしても、製造業では資金繰りがうまくいっていないと先行する費用の支払いができず、受注の機会を失うことがあります。
資金繰りを把握しておくことはどの業種でも大切ですが、とくに製造業の場合は資金繰りの管理を重点的にする必要があります。必要なときに資金が不足することがないように、資金調達の手段を考えておかなければなりません。
海外からの影響
製造業の企業にとって、ライバルは国内だけではなく海外企業も含まれます。海外企業は昔よりも技術力が向上しているため、何もしないと仕事を取られてしまうでしょう。また、製造業は取引先が海外企業であることも多く、国内の景気に加えて世界的な景気や為替相場、世界情勢の影響を受けます。これらにより、製造業の資金繰りはより一層難しいものとなっているのです。
製造業の資金繰りを改善するには
では、製造業において資金繰りを改善するためにできることは何があるのでしょうか。具体的なポイントをご紹介します。
原価管理の見直し
はじめに原価の管理ができているか見直しましょう。原価の管理とは、製品を作るためにいくら必要かを管理することです。しかし製造業においては製品ごとの原価を割り出すには手間がかかるため、大まかにしか原価を把握していない企業も少なくありません。資金繰りを改善するには、製品ごとの原価率を把握し、より利益率が高い製品に注力できるように変えていく必要があります。また、正確な原価の把握には変動費および固定費のチェックも不可欠です。
在庫管理の見直し
在庫管理では、必要な数だけ在庫を持つように意識することが非常に重要です。徹底した在庫管理ができていない会社では、必要な数より多めに仕入れるのが当たり前になっていることがほとんどです。多めに仕入れても受注できなければ在庫を抱えてしまうことになり、余計なコストがかかり続け、資金繰りを圧迫する原因となります。
資金調達方法の確保
必要資金が不足しそうな場合、銀行からの融資以外にも資金融資の手段を考えておくことをおすすめします。銀行の融資は条件が厳しいことがほとんどで、不動産担保などを用意できない場合審査を通過するのが簡単ではなく、時間もかかるためです。
また、銀行からの融資は基本的に長期資金となります。毎月の受注および売上高が一定ではない製造業の場合、一括で融資を受けると入金が少ない月でも返済は定期的に発生するため、資金繰りが悪化しやすいことも忘れてはいけません。
銀行融資以外の資金調達方法には「ABL」「ビジネスローン」そして「ファクタリング」があります。
ABL（動産担保融資）は、売掛債権や棚卸資産といった流動資産を担保として融資を受けるもので、一定の在庫がある企業には向いている方法です。またビジネスローンはノンバンク系の会社が提供するサービスで、銀行の融資と比較するとスピーディーに借入れができますが、金利が高いというデメリットがあります。
ファクタリングは融資ではない点が他の資金調達方法と異なり、売掛債権を売却することで実際の入金よりも早期に現金化するサービスです。回収サイトを短くし、資金繰りの改善に役立ちます。
ファクタリングが製造業の資金調達に向いている理由
ここでは、ファクタリングがなぜ製造業の資金調達方法に向いているのかについて解説します。
売掛金が発生しやすい製造業において、回収サイトを早められることは大きなメリットです。それ以外にもいくつかの理由があります。
売掛金が未回収になるリスクを避けられる
ファクタリングとは自社が保有する売掛債権をファクタリング会社に売却（譲渡）するものです。つまり、債権の権利がファクタリング会社に移るため、自社は売掛金が回収できなくなるというリスクを避けられます。
2社間ファクタリングの場合、売掛先から入金されれば、ファクタリング会社へ振り込むことで完了です（3社間ファクタリングは取引先からファクタリング会社へ振り込み）。償還請求権がない契約であれば、もし売掛先から入金されなくても、ファクタリング会社が自社へ請求することはありません。
審査を通過しやすい
ファクタリングは、銀行の融資と比較すると審査が通過しやすく、経営状況に関係なく資金調達ができる方法です。ファクタリングと融資は審査の基準が異なるため、自社の経営状態が悪化していても資金を調達できます。銀行での審査は、銀行にとっての融資先である自社の状態が審査対象です。一方ファクタリングは、売掛先（取引先）の経営状況が審査対象です。ファクタリング会社は、売掛先の経営状況を審査し未回収リスクを算出して、それに応じて債権を買い取ります。
資金調達までのスピードが速い
仕入れはもちろん、新しい機器の導入など、製造業は多額の資金が必要な業種です。仮に銀行から融資の許可が下りたとしても、現金を手にするまでには1か月程度はかかるため、明日どうしても支払わなければならないといった場合は間に合いません。その点、ファクタリングであれば審査に時間がかからず、通過すれば早いところでは数時間で入金されます。あらかじめ必要書類が揃えてあれば、素早い現金化が可能です。
保証人や担保の準備がいらない
ファクタリングは売掛債権を売却し、現金化します。融資ではないため、一般的に融資の際必要となる担保および保証人は不要です。また、ファクタリングに必要な書類は、融資の際に必要な書類と比較すると最小限で済むというメリットもあります。
返済に追われることがない
ファクタリングは売掛金を売却することで現金化するため借入れではありません。売掛金が入金される日にファクタリング会社へ支払いをすれば、返済は必要ありません。融資（借入れ）の場合、毎月元金と利息を返済し続けなければならず、資金繰りに悩む製造業者にとって大きな負担です。ファクタリングを利用すると手数料が必要ですが、手数料分が差し引かれて入金されるため、あとから手数料を支払う必要はありません。
原価高騰など一時的に支出が増えたときに役立つ
為替相場が円安になると、輸入する原材料費は高くなります。コスト増により、利益率の低下が懸念される場合にも、ファクタリングが役立つでしょう。原材料費が高騰しても製造業の場合、値上げは容易ではありません。結果、仕入れのための支出が増大し資金繰りを圧迫することになります。ファクタリングで資金をつなぎ、状況が改善するまで待ちましょう。
信用力に影響しない
ファクタリングは借入れではないため、負債は増えず決算書に影響しないというメリットがあります。また、2社間ファクタリングはファクタリング会社と自社との契約となり、自社の経営が苦しくても他社に知られることはないため、信用を落とすことなく資金調達が可能です。
ファクタリングには2社間ファクタリングという自社とファクタリング会社間の契約によるファクタリング方法があります。2社間ファクタリングの利用で、売掛先にファクタリングしたことを知られずに契約できます。
ファクタリングの事実を売掛先に知られると、資金繰りが悪化しているのではないかと取られ、取引に影響があると考える場合は2社間ファクタリングを選びましょう。
ファクタリングと製造のまとめ
製造業は資金繰りが難しい業種です。設備投資や仕入れなどに多額の資金が必要であるにもかかわらず、掛取引が多く、また売掛金の回収サイトも長いため資金不足になりやすい面があります。製造業の資金繰りを改善するには、原価および在庫管理の手を抜かず、いざというときのための資金調達方法を知っておくことが必要です。なかでもファクタリングは回収サイトを早める他さまざまなメリットが多く、製造業に適した資金調達方法であるといえます。