ファクタリングの回収資金の使い込みはリスクが高いのでやめよう
目次
ファクタリングでは売掛金の譲渡後、売掛先から受け取った資金はすぐに業者へ渡さなければなりません。
利用者によっては、ほかの必要経費に充ててしまうことがあります。
しかしこのような使い込みで、業者への支払いができなくなり、トラブルのおそれが生じるのです。
業者から損害賠償を請求されたり、横領罪に問われたりするケースも見られます。
民事または刑事訴訟を受けると、会社の社会的信用にも悪影響をおよぼすのです。
そのためファクタリングで売掛先から得た資金は、いかなる状況でもすぐに業者へ支払ってください。
今回は売掛先から得た資金の使い込みについて、リスクや対処法を解説します。
ファクタリングには回収委託契約がある
ファクタリングは回収委託契約をともなうことがあります。
業者から利用者への回収委託は、2社間契約で生じるしくみです。
3社間契約の場合は、売掛先が業者へ売掛金を直接支払うため、利用者への回収委託はありません。
2社間契約の利用者は売掛金の売却後、売掛先から資金を受け取ります。
受け取った資金は、すぐに業者へ渡さなければなりません。
以上から利用者はファクタリングの際、業者から委託された資金回収を担います。
利用者が期日までに回収資金を支払わなければ、回収委託契約違反です。
売掛先から資金を受け取りながら、使い込みで支払えない場合、業者からの提訴や横領罪のおそれがあります。
一方で期日までに売掛先から支払いがなければ、すぐに業者へ相談すれば柔軟な対応が期待できます。
2社間契約の利用者は、回収委託契約の関係上、資金回収に協力しなければなりません。
売掛先から受け取った資金の使い込みのリスク4つ
売掛先から受け取った資金の使い込みは、トラブルにつながります。
契約違反や犯罪に問われ、経営会社の社会的信用をなくすからです。
主なリスクとして、以下の4つを確かめてください。
1.回収委託契約違反に問われる
2.売掛先にファクタリングの利用を知られる
3.損害賠償請求や契約解除のおそれ
4.横領罪に問われる
1.回収委託契約違反に問われる
売掛先から支払われた資金の使い込みは、回収委託契約違反に問われます。
ファクタリングの利用者は2社間契約を結ぶと、業者から資金回収を委託されるしくみです。
売掛先はファクタリングを知らないため、通常どおりに利用者へ資金を支払います。
利用者は受け取った資金を、すぐに業者へ渡さなければなりません。
売掛先からの資金の使い込みで、業者へ資金を渡せなくなり、回収委託契約違反に問われる利用者もいます。
売掛先の責任で回収不可能になった場合は、利用者が責任を問われません。
しかし利用者による資金の使い込みは契約違反です。
利用後に売掛先から資金を得たら、いかなる状況でも業者への支払いを優先しましょう。
2.売掛先にファクタリングの利用を知られる
回収委託契約違反により、売掛先にファクタリングを知られることもあります。
業者は買い取った売掛金の期日までに、資金を回収しなければなりません。
回収が果たされない場合、売掛先に確認の連絡を行います。
そこで売掛先に、利用者のファクタリングが知られるかもしれません。
売掛先からの資金の使い込みで、業者に渡せなかった場合も、同様の連絡が行われるでしょう。
そこで売掛先が、利用者へ支払い済みだと業者に伝えれば、使い込みが判明するのです。
利用者の使い込みを知った業者は、法的措置を取ることがあります。
売掛先にファクタリングを知られたくなければ、回収資金の使い込みは推奨されません。
3.損害賠償請求や契約解除のおそれ
回収委託契約に違反した場合、業者からの損害賠償請求や契約解除のおそれがあります。
売掛先からの資金の使い込みで、業者に損失を負わせているからです。
業者は売掛金の買い取り後、期日まで支払いを待っています。
期日が守られないと原因の調査に乗り出すため、そこで利用者の使い込みがわかるかもしれません。
利用者の回収資金の使い込みは不法行為とされ、業者が損害賠償を請求することもあります。
また上記のようなトラブルを理由に契約解除を行い、以後の利用を禁止する業者もいるのです。
回収資金の使い込みは、業者との関係性の悪化につながります。
4.横領罪に問われる
売掛先からの回収資金の使い込みで、横領罪に問われる場合もあります。
ファクタリングの取引で、売掛金の所有者は利用者から業者へ移るしくみです。
業者が資金を受け取るには、売掛先から受け取った資金を利用者が支払わなければなりません。
使い込みで支払えなくなると、横領罪による刑事告訴が想定されます。
ファクタリングでの使い込みは、刑法で業務上横領罪に該当します。
起訴されると懲役10年以下が課され、罰金刑は適用されません。
売掛先からの資金の使い込みは、利用者が有罪判決を受けるおそれがあります。
使い込みで資金を支払えないときの対処法4つ
万が一の使い込みにより、業者へ資金を渡せなくなった場合は、適切な対処を講じてください。
専門家への相談や、ファクタリング業者への謝罪の連絡など、さまざまな対応を考えましょう。
使い込みの対処法として、以下の3つを紹介します。
1.弁護士や税理士へ相談する
2.ファクタリング業者にもすぐ連絡を
3.資金調達方法を検討する
1.弁護士や税理士へ相談する
ファクタリングの回収資金を使い込んだ場合、弁護士や税理士への相談がおすすめです。
利用者は出費が立てこんでいる場合、回収資金をうっかり使い込むかもしれません。
仮に使い込みをした場合、法律の専門家にサポートを依頼しましょう。
資金繰りに困っていなければ、税理士への相談がおすすめです。
資金管理のアドバイスや、ファクタリング業者への対応法などを教えてもらえます。
一方で債務が立てこんでいれば、民事再生や自己破産のため弁護士への相談がおすすめです。
財務状況に応じて、適切な相談先を選んでください。
2.ファクタリング業者にもすぐ連絡を
回収資金の使い込みが生じれば、ファクタリング業者へすぐに謝罪の連絡を入れましょう。
事情を話し、謝罪をすることで一定の誠意を伝えられるからです。
使い込みをした場合、回収資金を業者に支払えない可能性があります。
そのため支払い予定や、期日の調整などを話し合ってください。
しかし謝罪をしても、業者が法的措置に出る可能性は否めません。
それでも使い込みで支払いが難しくなったら、期日前に業者へ知らせてください。
早めの連絡をすれば、業者が最善の解決策を示す可能性があります。
3.資金調達方法を検討する
売掛先からの資金を使い込んだ場合、新しい調達方法を検討してください。
たとえばノンバンクなら、即日で資金調達できる場合があります。
またビジネスローンでも一定額を借り入れ、ファクタリング業者への支払いに充てられます。
ただしこのような融資は、審査に通過できない可能性に要注意です。
とくに資金を使い込む企業は、不健全な財務状況や金融事故のリスクを警戒されがちといえます。
以上から借り入れができず、調達手段を失う方もいるのです。
普段から財務状況を健全にしたうえで、ファクタリング以外の資金調達方法を活用しましょう。
ファクタリングの使い込みの対処における注意点3つ
ファクタリングの使い込みへの対処は困難を極めます。
売掛金は全額の支払いが原則で、期日の延期に対応する業者も限られています。
使い込み後の対処に関して、以下の3つの注意点を見てください。
1.売掛金の分割払いは不可能
2.支払い期日の延期も難しい
3.踏み倒しはやめよう
1.売掛金の分割払いは不可能
ファクタリングではいかなる状況でも、売掛金の分割払いはできません。
分割払いは返済行為に該当するのですが、ファクタリングは貸金業ではないため対応が不可能です。
回収資金の一部を使い込んだ場合、支払えるぶんだけ業者に渡そうとする利用者もいるでしょう。
しかし実際は、一括払いでないと業者が受け入れません。
回収資金の使い込みをした場合、あらためて必要資金をすべて揃える必要があります。
分割払いを認める業者が存在しないからです。
仮に分割払いを受け入れる業者は、違法の可能性があります。
2.支払い期日の延期も難しい
ファクタリングでは支払い期日の延期も難しいといえます。
しかし業者によっては、利用者の特段の事情を認め、期日の延期を認めるケースがあります。
支払い期日前に利用者が連絡し、回収資金の支払いが難しいことを伝えてください。
特段の理由が認められれば、業者が柔軟に対応するかもしれません。
しかし支払い期日の先延ばしでは、遅延損害金が発生することもあります。
この場合は、回収資金以外の支払い金が生じるため要注意です。
3.踏み倒しはやめよう
回収資金の使い込みに困っても、ファクタリング業者に対する踏み倒しはやめてください。
期日までの支払いがない場合、業者は法的手段に出ることがあります。
利用者の使い込みがわかれば、業者からの刑事告訴も覚悟しなければなりません。
支払い期日を過ぎると、ファクタリング業者による支払い催促があります。
利用者が催促を無視しても、刑事告訴にいたることもあるのです。
最悪の事態を避けるため、いかなる状況でも資金の踏み倒しはやめましょう。
ファクタリングにおける資金使い込みのリスクのまとめ
2社間ファクタリングの利用者は資金調達後、売掛金を回収しなければいけません。
その資金を業者へ渡せば、手続きが完了します。
しかし資金の使い込みがあると、業者へ必要分を支払えません。
支払い期日を守れないと、業者からの提訴や刑事告訴が想定されます。
トラブルを避けるため、売掛先からの回収資金はすぐに業者へ渡してください。
財務状況にかかわらず、回収資金の使い込みはやめましょう。